川 ゚ -゚)想い出のようです(^ω^ )(・∀・ )('A`;)

94 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:38:00.26 ID:acHl5leu0
―あるとても暑い日―
蝉を見ていた。
頭が溶けそうな暑さだったけど、僕は蝉を見ていた。
蝉が鳴くと空気が張り詰めるのが好きだった。
暑いとお水がキラキラする。
葉っぱも虫もキラキラする。
向こうの木にも蝉がいたけど根元のほうがゆらゆらしてて近づけないよ。
ちがうひとたちだって僕を見てる。
蝉が鳴いた。
僕も鳴いた。
鬼さんは笑ってくれた。
暑くって頭が溶けそうだけど、風が袖口をくるくる回ってるから平気だ。
ミンミン鳴くと気持ちがよくって、耳がジンジンってなって
ちがうひとたちが倒れているのにも気付かなくって
僕はお腹が空くまで蝉と一緒に鳴いていた。


第三話「異常」

95 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:39:15.74 ID:acHl5leu0
そして夕方
( ・∀・)「さあ諸君!ついにライブハウスへ乗り込もうではないか!」
(;^ω^)「正直忘れてたお。」
川 ゚ -゚)「君は何しに来たんだ。」
(;^ω^)(もっとお姉さんたちの生足を見てたいお・・・)
(;^ω^)「ドックンも街の散策だけで十分たのしいおね?」
('A`)「いや・・・ライブも・・・たのしみかも・・・」
(;^ω^)「でもライブは疲れるお?」
('A`)「でも僕・・音楽好きだから・・・」
川 ゚ -゚)「いくぞ」
(;^ω^)「はい」

96 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:40:02.12 ID:acHl5leu0
チケットを受付に見せ入り口に向かう。
彼らが向かったライブハウスはモララーがずっと行ってみたかった所で、かなりコアというかマニアックというか、とにかくそういうところであった。
そんなところにいきなり連れてこられたブーンはたまったもんじゃない。
頭に謎の赤い角を生やした人や唇に穴があいている人たちがうろうろいるではないか!
入り口に近づくにつれ、人ごみのそれとはまた違うこもった空気が濃くなっていく。
やばい。死ぬ。入ったら最後、二度と出られない。
茶髪のモララーはまだいい。他の三人は真人間。シラフだ。
こんなの、入った瞬間お陀仏だ。
そんな予感がブーンの頭を占めていた。

(;^ω^)(まずいお。このままじゃお終いだお。殺されるお。)

ブーンに共感する人も多いのではないのだろうか。
ライブハウスに初めて出入りする時の緊張感は特筆すべきものがあると作者は思う。
行ったことのない人は自分が行ったところを想像してもらえればわかるだろう。
ましてやブーンの場合、いきなり都会のマニアックなところに連れていかれたのだ。

97 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:40:50.91 ID:acHl5leu0
(;^ω^)(なんでクーもドックンもそんな余裕なんだお?)
(;^ω^)(ブーンがおかしいのかお?)

確かに多くのライブハウスはガラのいいところではない。
酒とロック。麻薬とロック。異性とロック。暴力とロック。
とにかくマッドネスとロックは相性がいいらしい。
したがってライブハウスはしばしばそういうものの温床にもなる。
ブーンのカンは決して的外れではない。

(;^ω^)(何とかしなくちゃ。何とかしなくちゃ。)

そんなブーンの思いも虚しくハウスの扉は開かれた。
瞬間、ベースの音がブーンの鳩尾を殴った。

99 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:41:43.48 ID:acHl5leu0
(; ω )「うわああああ!!!」

思わず悲鳴を上げるブーン。
追い打ちをかけるようにブーンの呼吸を奪うツインのバスドラム。

(; ω )(これは・・・なんなんだお・・・)
(; ω )(こんなの・・・こんなの・・・)
( ・∀・)「いいねえ。やってるねえ。」

音楽・・・もとい衝撃波はギターのコード進行とともにその破壊力を上げていく。
わざとコードにぶつけるベース。
顔を伏せ沈黙を守るボーカル。
ステージを中心とした狂人たちが腕を振り首を振る。
誰かの靴が宙を舞う。
汗にまみれ上半身をさらしている咲きっぱなしの女が何者かに髪を引かれて地に伏せる。
女の悲鳴をきっかけに、ボーカルが顔を上げ口を開いた。

100 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:42:39.71 ID:acHl5leu0
(‘_L’)「あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!!!!!!!!」

狂人たちが叫ぶ。踊る。頭を振る。
ボーカルが狂人の群に突っ込む。
ドラムが加速する。
強く張ったスチールが悲鳴を上げる。
狂気と熱気が混ざり合ってどろりとブーンの耳から流れ込み脳髄を満たす。

(‘_L’)「I wanna try to kill my heart in the red!」
(‘_L’)「Rape my will of my own choice. Right now!」
(‘_L’)「You will never know my name, my pain, and what I am. 」
(‘_L’)「If your intention is to run away from my pain, rape me right now!」


(; ω )「あ・・・あ・・・」
(; ω )「あ・・・・・・・あ・・ああああ・・・」
( ゚ω゚ )「・・・・あああああああ!!!!行くお!!!!」

突然、ブーンが叫びながら客の中に突っ込んだ。モララーはそれを止めなかった。
この場合、おかしくなれるならその方がいいのだ。音楽を知らない人間にとって、シラフでいる方がつらい。
ブーンにはその素質があるようだ。喜ばしいことじゃないか。

102 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:43:46.06 ID:acHl5leu0
( ・∀・)「俺たちも突入しようか。」
川 ゚ -゚)「わかった。ドクオはここにいるんだぞ。いいな。」
('A`)「・・・」

この喧噪のなかにいて、ドクオは音を聞き洩らさなかった。全ての音を拾っていた。
巨大なアンプが唸る音。ハイハットの切れる音。誰かの悲鳴。ボーカルの口が開く音。服の擦れる音。隣の男の呼吸音。
全ての音を吸収しながら、ドクオは己の中に水が流れているのを感じていた。
時に激しく時にゆっくりと水は流れていた。ドクオの体の中を流れていた。
ドクオはその水に流されていると感じた。水に流され漂いながらドクオは泣いていた。
その声は、歌をうたっているようだと思った。

(‘_L’)「Did you kiss me? Bloody skin! I was hated! The End!」
(‘_L’)「Everything makes me lunatic no matter how you kiss me now.」
(‘_L’)「You don't have to cry. Please rape me.」
(‘_L’)「I believe in your malicious smile. Please rape me right now!」
(‘_L’)「And go to your fate!」

103 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 13:44:37.42 ID:acHl5leu0
ブーンは人をかき分け進んだ。まるで何かに取りつかれたようにひたすらステージへ突き進んだ。
ぶつかり、蹴られても一向に気にならなかった。とにかく前へ。とにかく前へ。

( ゚ω゚ )(これだお・・・これなんだお・・・)

何がブーンを駆り立てるのか?初めてでこれはちょっと異常じゃないだろうか?
そう、異常なのだ。ブーンは異常そのものである。
ブーンだけではない。ここにいる人は全員何かしらの異常を抱えている。
あらゆる破壊衝動はそのはけ口にすぎない。

( ゚ω゚ )(キテるお・・・いまブーンはキテるお・・・)

107 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:03:22.89 ID:acHl5leu0
自虐的なナルシズム。漠然とした理想と現実とのギャップ。性欲とコンプレックス。
初めはそれらの小さかった歪みが段々と大きくなっていき、やがてロックという触媒を得て爆発する。
ここは、そういう所だった。
ブーンはそんな小さな歪みをいくつも持っていた。
それは常人の何倍ものスピードで膨らみ、ブーンの意識下を圧迫していた。
そりゃそうだろう。本来ブーンはそんな強い人物ではない。それがモララーと肩を並べて兄弟を引っ張っていたのだ。
いままでガタが来なかった事の方が奇跡と言うものだ。

( ゚ω゚ )(イクお・・・!)

ブーンは走るのが好きだった。激しい運動は細胞を活性化させることになり、それゆえ先天性黒斑病の患者にとって寿命を縮めることになる。
それでもブーンは走るのをやめなかった。
スタート直前、体中の熱量が足に溜まっていくのが好きだった。
合図とともに血が体中を駆け巡るのが好きだった。
世界が自分とゴールテープだけになるのが好きだった。
その瞬間だけは全てを忘れることができた。
そうやってブーンはそのギリギリの精神状態を保っていた。


109 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:05:52.79 ID:acHl5leu0
(‘_L’)「Kill the baby! Kill the baby!」
(‘_L’)「I was suffered a fate worse than death!」
(‘_L’)「Did you kill me? Bloody river! I am hated! The End!」
(‘_L’)「The End!」

演奏が終わっても熱は冷めなかった。こもった熱気で気管が詰まっても体は不思議と軽かった。

( ・∀・)「さすがにレベルがちがうね。ドラムなんか神がかってた。」
川 ゚ -゚)「ツインとはいえ、あの速さまで突っ込めるドラムなんて初めて聞いた。」
( ・∀・)「まとまりは荒いけど個々の技をここまで押し出せるバンドはなかなかないよ。」
( ・∀・)「そしてなにより・・・」
川 ゚ -゚)「ああ。ボーカルは完全に次元が違った。」
川 ゚ -゚)「あの歌はこんなライブハウスじゃとても収まらないよ。」
( ・∀・)「ブーンも突っ込むわけだ。」
川 ゚ -゚)「そうだな。」

ライブ中でも淡々と感想を述べる二人。作者に嫌われるタイプである。

('A`)(・・・)

111 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:07:10.68 ID:acHl5leu0
その後もいくつもの個性的なバンドが代わる代わる出てきた。
宗教がかったボーカルの高音旋律をバックにギターが唸るバンド
打ち込みを使い自分はギター一本抱えているだけの個人バンド。
派手なメイクでコロセコロセと叫ぶ悪魔バンド。
あまりに下品な歌詞を超絶技巧とともに叫ぶバンド。
むしろMCに力を入れているコミックバンド。
客と乱闘しただけで演奏はしなかったバンド。
すでにはじまってから3時間も経過していたが勢いは衰えるどころか激しさを増し、ブーンもとっくに半裸になっていた。
その間に、もう一つの異常が少しずつ進行していた。
残すところあと1バンドというところで初めてクーが異変に気付いた。

川 ゚ -゚)「あれ?ドクオがいない。」
( ・∀・)「え?なんか言った?」
川 ゚ -゚)「ドクオがいないんだ。さっきまでここにいたはずなのに。」

しかしクーの声はモララーには届かなかった。
舞台に現れた一人の男によって本日最大の歓声が上がったからだ。

112 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:08:26.91 ID:acHl5leu0




              ( ´_ゝ`)




( ・∀・)「うおおお!!??兄者!?本物か?」
( ・∀・)「本物の兄者なのか?」

vipQの変態児、兄者。
『その天才的な音楽センスと不審な言動は最早テロリズムである。』
と某雑誌で評された折り紙つきの変態である。
そんな人が何故ここにいるのか。一度は盛り上がった人たちも次第に疑問を抱き始めた。
本物か?暗くてよく見えない。
しかしその心配は無用。杞憂であった。

113 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:10:02.88 ID:acHl5leu0
(#´_ゝ`)「うるさい!!ビックリしちゃうだろ!!」

兄者の意志とは反対に本日最大の歓声は塗り替えられた。
本物だ。自分で突然ステージに飛び出しておいて意味が解らない。
間違いなく本物だ。

(´<_` )「先走りすぎだ兄者。まだ準備ができてない。」
l从・∀・ノ!リ人「のじゃー!」

残りの二人も現れ、もはや歓声は奇声と化し手がつけられなかった。
世間では全くの無名であるvipQも、ここにいる人にとってはまさに雲の上の存在。
それがライブの最後に現れたのだから無理もない。

( ・∀・)「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

モララーですらこの有様なのだから。

114 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:11:15.29 ID:acHl5leu0
(´<_` )「・・・っとよし。こんなもんでいいだろ。」
(´<_` )「というわけでおまたせしました。ヴィップクオリティーでーす。」

川 ゚ -゚)(ドクオはどこに行ったんだ?)
川 ゚ -゚)(探してこよう。)

(´<_` )「俺たち最近アルバム出してね。こうやって宣伝に回ってるわけなんですよ。」
l从・∀・ノ!リ人「買うのじゃー!」

川 ゚ -゚)(外に行ったのかな。)

(´<_` )「ってのが理由の半分。」
(´<_` )「それと‘ミッドガルド’のラストライブがあると聞いて駆けつけたってのが半分。」
(´<_` )「ミッドガルドの皆には、俺たち散々面倒見てもらったからね。」
(´<_` )「今一度ミッドガルドに拍手を!」

パラパラとおこる拍手。正直もうそんなバンドの事なんかどうだっていい。
vipQが目の前にいる。早く演奏を!早く!

115 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:12:15.88 ID:acHl5leu0
(#´_ゝ`)「しゃべりすぎだぞ弟者!俺にも回せ!」
(´<_`;)「おおう。把握した兄者。」

マイクを受け取った兄者は突然クネクネと腰を振りだした。

( ´_ゝ`)「お前ら、よく聞け!」
( ´_ゝ`)「ミッドなんとかなんて格下バンド。正直どうでもいい!!!」
(´<_`;)「ちょっ!」

いきなり弟者のメンツを潰しにかかる兄者。げらげら笑う妹者。
最後のライブで格下呼ばわりされたミッドなんとかのメンバーは堪ったもんじゃない。
だが兄者はまったく気にする様子もなくつづけた。

116 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:13:22.80 ID:acHl5leu0
( ´_ゝ`)「アルバムがどうとかもどうでもいい!」
( ´_ゝ`)「録音の売上なんか興味ない。」
( ´_ゝ`)「大切なのはイマだ!そうだろ!?」
( ´_ゝ`)「今日はまともにおうちへ帰れると思うな!」
( ´_ゝ`)「狂え!怒れ!泣け!笑え!殴れ!犯せ!」
( ´_ゝ`)「その耳かっぽじってよく聞け!」

全力で叫ぶ兄者。それに応える狂人の群。より前に、より前にと押し合う。
すでに最前列にいたブーンは兄者の気迫をまともに食らい、震えが止まらなかった。

(´<_` )(流石だな兄者。)
(´<_` )(・・・行くか!)

弟者がギターを構えた。それを合図に妹者がマイクの前に、
兄者が4つのキーボードと2つの音響機材に囲まれたスペースに入った。
全ての音が一瞬にして消える。それだけ、ものを言わせない気迫が弟者から発せられたのだ。
呼吸困難に陥るブーン。
比較的遠くにいたモララーすら同様であった。
そして、兄者が機械に触れた。


117 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:14:42.38 ID:acHl5leu0


川 ゚ -゚)(ここにもいない。)
川 ゚ -゚)(ということはまだ中か?)

一方クーは一通り外を探し終えて途方に暮れていた。
気にしすぎだろうか。ライブではぐれるなんてよくあることだ。
そんな事を考えながら、外部に設置された舞台の様子を映すモニターにふと目をやった。

川 ゚ -゚)(あれ?)
川 ゚ -゚)(今のは・・・ドクオ?)

一瞬最前列の一番端にドクオがいた気がした。
たしかにそこなら壁伝いに進めば短時間でいけなくもない。
しかしもう一度見ようとしても暗くてよくわからない。

川 ゚ -゚)(気のせいだろうか。)

そう思いつつもクーは進行方向を変更した。

119 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 14:16:13.30 ID:acHl5leu0


( ・∀・)(なんだこのサウンドは・・・)

かれこれ5分以上、不自然な音がその場にいる全員を拘束していた。
不安定に響くバイオリンの音。
高音域をスタッカートする機械音。
低音域でうごめくノイズ。
他の音とは周期をずらした心臓音。
水が流れる音。
街で聞くような雑音。
バラバラなようでいて、絶大な安心感を覚える音だった。

( ・∀・)(音楽は・・・こんなこともできるのかよ・・・)

133 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 15:16:10.82 ID:acHl5leu0
例えるなら、生後間もない乳幼児が母親との間に感じる絶対的な一体感。
そのような経験がないモララーもこの安らぎの意味を感じ取っていた。
しかし外界はその一体感を引きはがす。母親は次第に他者となっていく。
ゆっくりと崩れていく音。心臓音が消え、不協和音が響く
世界に自分が独りぼっちだと知ったとき、我々は何をしただろう?
弟者がゆっくり右腕をあげる。
その手にはピック・・・ではなくギザギザに加工された鉄辺が握られていた。
それをそっと弦にあてがい、一気に引く。
ギターが泣き叫んだ。

136 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 15:17:36.14 ID:acHl5leu0
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!!

第一波がブーンの鼓膜を突き破り大脳をえぐり取った。
弟者はそのまま鉄辺をギターに叩きつける。
吐き気を催す不安がブーンを襲う。

(  ω )(ああああああああああ!!!!!!!!)

嫌だ。助けて。つらい。つらい。ツライツライツライ!!
弟者が一つ音を発するたびにブーンは悲鳴を上げた。
もういっそう気絶してしまおう。楽になろう。
ブーンがそう決めたとき、彼はそれを聞いた。

138 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 15:18:27.53 ID:acHl5leu0
l从‐∀‐ノ!リ人「♪$%“!‘‘:。@(=’&?¥X♪」

初めは小さい声だった。朝、まどろみの中で小鳥の声を聞くような。
だがその声は確かにブーンの意識を繋ぎ止めた。
なんとも形容しがたい、直接脳に染み込むような妹者の声。
やがてその声は音量を増し、不安定なサウンドとギターの悲鳴の中でブーンに幸福と肯定を与えた。

(  ω )(あ・・・・・・あ・・・・)

139 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 15:19:19.99 ID:acHl5leu0


川 ゚ -゚)「ここにいたのか。探したぞ。」
('A`)「・・・」

やはり見間違いではなかった。ドクオは最前列の一番端にいた。

川 ゚ -゚)(しかしわざわざこんな見にくいところに来なくったって・・・)

教室の一番前の端っこを思い出してほしい。
下手に目が悪いことを主張して最前列に行ったものの、逆に黒板が見づらくなった経験がある人もいるだろう。
場違いな例えだが、つまりはそういうことだ。
ステージを飛び出させる事でそれを回避しているところもあるが、残念ながらここは違った。

川 ゚ -゚)「ドクオ、もうちょっと見やすいところに移動しn

クーは言葉を詰まらせた。
暗くて気付きにくかったのだが、ドクオは血にまみれていた。
首から下が。そう、べっとりと。

141 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 15:20:53.34 ID:acHl5leu0
川;゚ -゚)「どうしたんだその血は!誰にやられたんだ。」
('A`)「・・・」

ドクオは答えない。ドクオに目立った外傷はない。痣も着衣の乱れもない。
血は、ドクオの口の端からコポコポと溢れていた。
弟者のギターと共鳴していた。

川;゚ -゚)「まさかドクオ・・・自分で・・・」
('A`)「・・・」
川;゚ -゚)「そうなのか・・・ドクオ?」
('A`)「・・・」
川;゚ -゚)「とっ・・とりあえず、病院で診てもらおう。お姉ちゃんについてきてくれ。」
('A`)「・・・」

144 名前: ◆Fq93F1zmDWDK 投稿日:2009/07/13(月) 15:21:52.19 ID:acHl5leu0
クーはドクオの手を取り引っ張った。しかしドクオは動かない。
妹者の歌は激しさを増していった。

川;゚ -゚)「頼む、来てくれドクオ。もうこれ以上の血は・・・」
('A`)「・・・」

叫び声をあげてでも誰かの助けを呼ぼう。
そう思いクーは息を吸い込んだ。
同時にドクオは口をあけ、声を上げた。

('A`)「################################」

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 15:30:36.33 ID:acHl5leu0
川;゚ -゚)「な・・・」

クーは自分の足場が崩れるのを感じた。
落ちる。落ちる。落ちる。落ちる。
決して抗えない絶望感がそこにはあった。
罪悪感。後悔。自己嫌悪。
そんな感情がさらされ、自分を指差し罵っていた。

('A`)「################################」
('A`)「################################」

周りの人も異変に気付いた。でも気付いた時にはもう遅かった。
次々とうめき声を上げ倒れる人々。とりつかれたドクオ。
クーはドクオの肩を掴み揺さぶった。

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 15:33:39.23 ID:acHl5leu0
川;゚ -゚)「ドクオ!やめてくれ!お願いだ!」
川 - )「もう・・・」
川 ; -;)「もう、助けてくれ・・・お願い・・・やめて・・・」

ドクオは最後に大きく血を吐き倒れた。
その10秒後に、妹者に抱きつこうと舞台に上がったブーンの後頭部を兄者のスタンドと弟者のギターが打ち抜いた。

第三話「異常」 終わり


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