( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。

2 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:21:23.71 ID:xa5+UvbK0
( ^ω^)「こんにちはですおー。」

ξ゚听)ξ「こんにちは。」

春と夏の間。6月の第一週、アポロンの日。
今日も二人の子供がモララーの家を訪れた。

軽装にツンは小さなショルダーバックを下げている。
計4時間はかかる道のりを、彼らはたったの一時間弱で移動していた。
理由はブーンの胸に下がるラピスラズリのペンダントのおかげであった。
秘められた転移魔法を魔術師のツンが解放する。
と、3時間をたったの数秒で移動できるのだ。

( ・∀・)「やぁ、いらっしゃい。」

モララーは転移魔法の発動を肌で感じていたのでもう出迎える準備をしていた。
竃に火をおこし、汲んできた湧き水をヤカンに入れている。
傍には陶器のポッドが一つと、カップが三つ。
本来は不要なものだったから、カップは一つしかなかった。

しかし、遠い道のりをわざわざやってきた子供達になんの持成しも無いのでは申し訳ない。
というわけで、モララーはカップを人数分ちゃんと用意していてくれたのだった。

( ^ω^)「今日はなんですかお?」

( ・∀・)「アージンっていう紅茶だよ。ミルクを入れると、綺麗な赤色になるんだ。」

3 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:22:32.80 ID:xa5+UvbK0
蒸気に負け始めたヤカンの蓋が鳴り響く。
すぐさま持ち上げて、モララーは予め温めておいたポッドにお湯を注いだ。
次に、カップに一つずつ。
ポッドの口から流れる黄色の液体は、甘い香りを部屋の中へ、人の鼻腔へ届けた。

ξ゚听)ξ「リンゴみたいな香りですね。」

( ・∀・)「そうだね。果実は食べられないけど、染料なんかに使われているものなんだよ。」

( ^ω^)「へー。おいしそうだお。」

クンクン鼻を鳴らしながらブーンは待つ。
盆に載せたカップが三つ。モララーは木製の机に置いてそれぞれの正面へカップを渡した。

( ^ω^)「いただきますお!」

ξ゚听)ξ「いただきます。」

ブーンは投げやりな感じで元気一杯に。
ツンは清楚にちゃんと手を合わせてから、同時に口にした。

(* ^ω^)「おふー! おいしいお!」

ξ*゚听)ξ「ホント! 香りも凄く良いわ!」

( ・∀・)「それは良かった。それで、あれは持ってきてくれたかな?」

ξ゚听)ξ「あ、はい。」

5 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:24:25.72 ID:xa5+UvbK0
とツンはカップを机に置き、邪魔にならぬよう足元に隠したバックから何かを取り出した。
丸められたそのA5サイズの紙は、大量の文字が書かれていた。
最初のページには大きな写真、大きな文字。
新聞である。

月に一度しかモララーは街へ行かない。
それが彼の取り決めであったからなのだが…それでは得られる情報はとても微量なもの。
だから、ほぼ毎日通う彼らに新聞の調達を頼んでいたのだ。
これならリアルタイムで世界情勢を知ることできる。

ξ゚听)ξ「あ、コレも良かったらどうぞ。」

ツンはついでに鞄から小さな包みを取り出しす。
中にはクッキーやスコーンなどといった、お茶菓子が入っていた。

( ・∀・)「ありがたくいただくよ。」

( ^ω^)「お! これ、デレ小母さんが作ったクッキーだおね!?」

ξ゚听)ξ「あら、良くわかったわね。」

( ^ω^)「昔から食べてるんだもん、当然だお!」

ξ゚听)ξ「私が作ったって可能性は頭になかったの?」

( ^ω^)「ないお。」

6 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:27:23.69 ID:xa5+UvbK0
ξ゚听)ξ「なんで?」

( ^ω^)「だって、以前ツンが作ったのははクッキーじゃなくて消し炭みたいだったお。
      それが短期間で上達するわk」

ξ゚听)ξ「言い残すことは?」

(; ^ω^)「謝るからその手のポットを降ろしてお。」

( ・∀・)「こらこら、喧嘩はダメだよ。」

モララーは優しく注意をした。

あの喧嘩以降、彼らの中はすこぶる良好。
こういった小さなやり取りは見るものの、本気の喧嘩はする気配がない。
どうやら、彼らの親に託して正解だったようだ。

そう思いながら彼は紅茶を啜り、新聞の字面に目を落とした。

( ・∀・)「ん?」

( ^ω^)「どうしましたお?」

モララーは、開いた新聞のある記事が目に入った。
他の記事は、季節の花が咲いたとか戦争後の経済状況だとかが書かれているのだが
それだけは少し異質だった。

9 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:30:21.75 ID:xa5+UvbK0
( ・∀・)「最近VIP街に、盗賊団が出るんだって?」

ξ゚听)ξ「あー、それですか。」

ツンは軽く言った。
新聞記事にされるほどの事件ならば、もっと重々しいはずだ。
しかし、彼女の口ぶりからしてそうでもない印象を与える。

ξ゚听)ξ「えーと…なんだっけ? あ、そうそう。NEETS盗賊団って名前らしいですよ。
      なんでも、貴族の人には全く手を出さず平民の物品ばかりを奪っていくらしいです。」

( ・∀・)「ふむふむ。」

ξ゚听)ξ「強盗、窃盗、スリ、たかり。弱いものからは徹底的に搾取するそうです。
      でも、さっきも言ったとおりに、貴族の人へは手をかけないんですよね。
      きっと、裏に居る功績者の人たちが恐いからでしょう。強い人ばかりですもん。」

と、ツンは得意気に話す。
自分は貴族だから、襲われる心配はない。だから安心しきっているのだろう。

ξ゚听)ξ「まぁ、要するにチキンの集団ってことですよ。私達には関係ないことです。」

( ・∀・)「ツーンちゃん。」

そんな彼女をモララーはおでこをつつきながら注意する。

13 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:32:49.13 ID:xa5+UvbK0
ξ゚听)ξ「はい?」

( ・∀・)「自分達には関係なくても、苦しんでいる人が居るのは事実なんだよ?
      貴族は庶民の上に立つ者でしょ? だったら、この問題を野放しにするのは間違ってるんじゃないかな?」

ξ;゚听)ξ「ぅ……。」

( ・∀・)「まぁ、かと言ってキミたちのような子供が躍起になる問題でないことは確かだけどね。
      相手もただ盗んで逃げていくだけじゃないみたいだし、下手したら命の危険もあるかもしれない。
      こういうのはキミらの親御さんに言うべきことかな。」

( ^ω^)「わかりましたお!」

ξ;゚听)ξ「ホントにわかってんのあんた?」

モシャモシャとお茶菓子を頬張り、紅茶をグイグイ飲んでいくブーン。
その食べっぷりに、ツンは少しだけ呆れていた。



( ´∀`)「こんにちは。」

(*゚∀゚)「おぅ、タレ目のおっちゃん。久しぶり!」

15 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:35:46.15 ID:xa5+UvbK0
短パンとTシャツ姿の少女が変化魔法をかけたモナー、基モララーへ声をかけた。
荷車には、これからの季節に大活躍する野菜…夏野菜がたくさん積まれていた。
もちろん無魔法である。ツンの魔法は完全に抜け切っている。

(*゚∀゚)「今月もありがとなー。おっちゃんの野菜はホントにいい商売になるから助かるんだよ!」

( ´∀`)「そうかい。それはよかった。」

と言いながら彼は馬車から降りて、いつも通りに包装された木箱を置きにかかった。
そして、いつも通りにカウンターテーブルの下においてある小さな金庫から収入の一部を貰う
のだが

( ´∀`)「…おや?」

(*゚∀゚)「どした〜?」

いつも袋わけして、そのお金が置いてあるのだが…
今回はやけにその中身が少ない。元々、小額しか貰ってなかったのだが…今回は特に、だ。
だが、並べられた野菜はほぼ完売。在庫もなかったはずだ。

それなのに、何故?

19 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:38:31.84 ID:xa5+UvbK0
( ´∀`)「…どういうことだい? 今回はやけに少ないと思うんだが…。」

あまり干渉しないと決めている彼だが、一応彼女の家はお得意先。
何か問題があるなら、聞いておくべきだと考えたのだ。

(*゚∀゚)「え? ヤダなぁ、そんなわけねーじゃん! いつも通りだよいつも通り!」

( ´∀`)「…そうかい。」

(*゚∀゚)「ほら、用が済んだならとっとと行ってくれよ。商売の邪魔になるからさ。」

( ´∀`)「あぁ、ごめんよ。」

今日も少女は元気一杯だ。
心の方は何かを隠しているように見えるが…表だって不調と見られる部分は無い。
ならば彼女の父に何かあったのだろうか?
少しだけ、魔法を使って気を探る。何か問題があれば力になるのも必要だ。
人助けのためならば戒めを破るのも厭わない。

……少女の家の二階。
小さいが、生命反応を感じた。
心配するほどのものではない。これなら安静にしておけば死ぬ心配はないだろう。

21 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:41:13.59 ID:xa5+UvbK0
ならば何が?

そう思って生命探索をやめようとした時

モララーはある反応に気づいた。

(;゚∀゚)「あ!」

( ´∀`)「!」

少女も気づいた。
だが時既に遅し。その反応はもう遠くまで行ってしまっていた。

(;゚∀゚)「……や、なんでもないさ。気にしないでくれ!」

( ´∀`)「……そうかい。じゃあ私はここらで。」

と荷車に乗ろうとした瞬間。

遠くへ行った反応物体が、盛大に転んだ。
たまたま無人だった近くの防具屋に頭ごと突っ込み、大き目の兜がその物体の頭部にすっぽり収まっていた。

(*゚∀゚)「おぉ!?」

( ´∀`)「おやおや、一体どうしたんだか…。」

23 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:44:02.76 ID:xa5+UvbK0
とモナーは反応物体の方へ歩き出す。

ミ;-Д゚彡「いたた…。なんなんだ一体…。」

兜を外し、壊れた木のカウンターテーブルから出てくる青年。
上下布の服で、靴は麻のブーツ。いかにも動きやすそうな格好だった。

( ´∀`)「大丈夫ですか?」

モナーはその青年のすぐ傍に立って手を差し伸べていた。
だがその細い目は同情の目ではない。
殺意と憎しみの目だった。

ミ;゚Д゚彡「! う、うるせぇ!」

と手を弾き、再び青年は走り出した。

さて、何ゆえ彼は手助けを拒み一心不乱に逃げようとしたのかというと

青年は、少女の八百屋から無断無銭で野菜を持っていったからだ。
いわゆる万引きである。

25 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:47:42.08 ID:xa5+UvbK0
モララーは少女の父親の気を探り終わったと同時に、野菜を奪っていく青年の反応を捉えていたのだ。
そして逃げ去っていく途中に小さく指を立てて魔法を放ち、足を引っ掛けた。
だから青年は何もない所で盛大にすっ転んだのだ。

( ´∀`)「おやおや。手荒いね。」

ミ;゚Д゚彡「!!??」

走っていく青年の頭に何者かの声が響く。


『二度とやるなよ。次は殺すぞ。』


咄嗟に両手で耳を塞いだが、もう声は聞こえない。
だがそれでも青年は無我夢中で走って逃げる。

低くてくぐもった声は、まるで悪魔の囁きに聞こえたからであった。

( ´∀`)「はい。ほとんど潰れてしまったが、少しだけ無事なのがあったよ。」

(*゚∀゚)「あ、ありがとおっちゃん。」

26 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:49:15.64 ID:xa5+UvbK0
少女は無傷の野菜を男性から受け取った。
そしてそのまま再び仕事に戻ろうとする少女を、彼は引き止めて聞いた。

( ´∀`)「お金が少ない原因はアレかい?」

(;゚∀゚)「!」

小さい背中が反射的に動いた。
図星だったようだ。

( ´∀`)「NEETSって盗賊団が最近この街に出現するようだね。
      一人では大変だろう…何かあれば力になるよ。」

(*゚∀゚)「…ありがとよおっちゃん。
    でもやっぱり、おっちゃんに迷惑かけるわけにはいかねーよ!
    ただでさえ、お金の面で迷惑かけてるんだからさ!!」

少女は精一杯の笑顔で答える。
無理に作ったその笑みは、口元が引きつり眉が力なく垂れ下がっていた。

( ´∀`)「…わかったよ。じゃあ、また来月ね。
      お金、ありがとう。」

29 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:52:34.83 ID:xa5+UvbK0
(*゚∀゚)「あぁ、またな! 野菜ありがと!!」

元気一杯に手を振る少女を背に、モナーは馬車を歩かせた。


( ・∀・)「……。」

山中にて。
魔法を解いたモララーは考えていた。

きっと、あの青年はNEETS盗賊団の一味だ。
思念波魔法でわざと声を低くして忠告しただけだが…効果はきっとあるはず。


突然だが、少女の八百屋はとても良心的である。
手間隙かかる無魔法野菜をしっかりと売ってくれているからだ。

普通の八百屋だと、自分の作った作物にとても誇りを持っているので
大抵は『他人の野菜など売れるか!』と一喝されることが多い。

八百屋の人は、野菜を仕入れるだけではなく自分で作った誇り…つまりは作品を売っているからプライドの高い人がほとんどなのだ。
けれども、彼女は二つ返事で受け入れてくれた。

33 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:55:59.76 ID:xa5+UvbK0
自分の野菜は売れないから、少しでも売れる物が欲しい。
その願望とモララーの願望が上手く一致したから、彼らは上手にやり取りできているのだ。

そんな数少ない八百屋が、自分の欲だけで動く人間によって被害を受けている。
だからモララーは魔法の使用を許した。
町の人の迷惑も緩和されるので、一石二鳥でもある。

( ・∀・)(願わくば、二度と盗みなどしないように…と。)

馬車に揺られるモララーは心からそう願っていた。



(*゚∀゚)「じゃあ行ってくるぞ、父ちゃん!」
  _
( ゚∀゚)「あぁ…行っておいで。悪いね、ツーにはいつも迷惑かけてばかりで…。」

ルドラの日の午後。
ツーと言う名の八百屋の看板娘は元気よく父親に挨拶をした。

(*゚∀゚)「気にすんなって! 父ちゃんと母ちゃんが居なかったら、オレも居ないんだからさ!
     産んでくれただけで、オレは感謝してるんだぜ!」
  _
( ゚∀゚)「ありがとうな…。気をつけるんだよ。母さんは一緒かい?」

36 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 19:58:34.20 ID:xa5+UvbK0
(*゚∀゚)「おう! ここに居るから大丈夫さ!! じゃ、行ってくる!!」

少女はズボンにかけたチェーン付きの懐中時計を見せた。
貧乏な部類の暮らしだが、その時計だけは黄金色に輝き高価な物の香りを漂わせていた。

そして少女は身支度を整えて家を出て行く。
包帯だらけの父親をベッドに残して…。

(*゚∀゚)「行きますか!」

少女は家の裏に居る借馬へ語りかける。

月に一度、彼女は隣のν速町へ野菜の売り出しにいく。
VIP街ほど賑ってないが、それでも買ってくれる人はたくさん居る。
閉鎖的に同じ場所で商売するよりもずっと儲かるのだ。
垢抜けていない少し田舎寄りの町なので、少女のような境遇に同情してくれる人も少なくはないのも理由の一つである。

小さな荷車に野菜をつめて、一時間ほどの旅へ出かけるツー。

ちなみに、今日は平日。普段なら学校で授業だが…
彼女は家の事情によりこうやって偶に休みを貰っているのだ。

お金がなければ学校に通うことすら出来ない。
彼女の通う学校の校長は簡単に受諾してくれた。
一人でも多く生徒を入れて、金を搾取したい。そういう欲もあって、である。

39 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:03:21.71 ID:xa5+UvbK0
(*゚∀゚)(今日はどんだけ売れるかな〜。)

などと思いつつ馬に揺られる。
ν速町にもお得様は出来てきた。
一月ぶりに会えるその人たちとの会話を考えながら少女は移動する。



……だが、その行く手は虚しくもはばかられることになるのだった。

(;゚∀゚)「!?」

後30分も歩けばν速町に着く。
そんなν速街道の始点で

彼女はNEETS盗賊団に捕まってしまった。

ミ,,゚Д゚彡「やぁお嬢ちゃん、この前はどうもだから。」

スリスリと頭を撫でる青年は、以前万引きしようとしてモララーに捕まった人物であった。
どうやら相当恨んでいるようだ。頭部に包帯を巻いた青年はニヤニヤと卑しい笑みを浮かべている。

42 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:06:01.80 ID:xa5+UvbK0
ミ,,゚Д゚彡「お前のせいで、怪我はするわボスに怒られるわで散々だったんだから!
      絶対許さないから!!」

(;゚∀゚)「お、オレは何もしてねぇぞ! しらねぇよ!!」

青年は仲間に指示をしながら、手に持ったナイフをチラつかせ少女を脅しかける。
気がつけば、少女の馬車は完全に包囲されていた。

ミ,,゚Д゚彡「しらばっくれても無駄だから!
      そうだな、おとなしくその積荷を渡すなら許してやらないこともないから!!」

(;゚∀゚)「ば、バカ言うなよ! これは売り物だからタダであげれるもんじゃねえ!!」

ミ,,゚Д゚彡「…まぁ、予想通りの返事だから。
      じゃあ予定通り行かせてもらうから!!」

(;゚∀゚)「!!!」

同時に盗賊団が飛び出した。
まず馬を驚かせ、馬車を倒す。そのまま首筋にナイフを突き立てて、馬は絶命した。

荷車倒れた拍子に、ゴロゴロとザルと木箱につめられた野菜達が地面を転がっていく。
その中に、ツーの姿もあった。

45 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:09:13.31 ID:xa5+UvbK0
そして彼らはまず、地面に横たわるツーを殴り倒した。
抵抗しても無駄だと言わんばかりに顔面を殴打し、腹部を蹴り飛ばす。
少女が気絶してしまったのを確認すると、盗賊団は荷物だけをかっぱらい、逃げ去っていった。

ミ,,゚Д゚彡「お、コレ凄い高そうだから!」

と少女のポケットにあった懐中時計もまた…彼らの手によって奪われてしまった……。






( ^ω^)「ブるンブるンブるン。はるちるがるとるぶるん。」

ξ゚听)ξ「ブるンブるンブるン。はるちるがろるとるぶん?」

( ^ω^)「違うお違うお。はるちるがるとるぶるん、だお。」

ξ゚听)ξ「はるちるがるとるるぶん?」

( ^ω^)「はるちるがるとるぶるん!」

ξ゚听)ξ「はるちるがとるぶるん!」

( ^ω^)「そうだおそうだお!」

48 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:12:32.05 ID:xa5+UvbK0
学校終了後、彼らは着の身着の儘で街道を歩いていた。
小さい頃に習った童謡に「る」を混ぜて歌うという遊びをしながら彼らは足を進める。

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「あら?」

途中、二人は街道の真ん中へ転がる物体に気づいた。
遠くなので、パッと見では何がなんだかわからない。
近くの動物の死骸だろうか?
この街道はたまに、馬車が高速で走り去るので轢かれてしまう動物も少なくは無い。

( ^ω^)「馬が見えるお。」

ξ゚听)ξ「近くにも何か一匹いるわね。」

じーっと目を凝らしながら彼らは歩く。
そして驚愕した。

大量に血を流して死んだ馬の傍で、同じ年頃と思われるの女の子が傷だらけで横たわっていたからだ。

(; ゚ω゚)「ちょ、ツン!!」

ξ;゚听)ξ「わかってるわよ!!」

50 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:16:05.00 ID:xa5+UvbK0
(メ::∀::)「……。」

二人は一斉に駆け出して、少女を抱きかかえる。
かすかに息はあるが、意識は失っていた。

(; ゚ω゚)「びょ、病院に連れていかなきゃ!!」

ξ;゚听)ξ「バカ言わないで! こっから走ってもν速町には30分かかるわよ!?
       そんなことしてたら、この子死んじゃうかもしれないじゃない!!」

(; ゚ω゚)「じゃ、じゃあどうすんだお!?
      マシーナリーパワー全開にすれば破損箇所が一時的に修復するのかお!?」

ξ;゚听)ξ「この子どうみても人間でしょ!? あぁ、もうわかんない奴ね!」

とツンはツーを抱えて慌てふためくブーンの胸で揺れるペンダントを掴んだ。

ξ;゚听)ξ「こうするしかないじゃない!」

3人の周囲に、蒼色の魔方陣が発生する。
すると彼女らは瞬時に光る球体へ変化し、山の方へ超高速で飛んでいった。

53 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:20:21.66 ID:xa5+UvbK0
( ・∀・)「…!」

山の上の小屋で独特の波動をモララーは感じた。
どうやら、ツンが転移魔法を発動したらしい。
ゆっくり立ち上がり、今日は何の紅茶を用意しようかと悩んでいると

(; ^ω^)「モララーさん!」

ξ;゚听)ξ「大変です!!」

と、いつもならノックをする彼らは何もせずにそのまま小屋へ入ってきた。

( ・∀・)「どうしたんだい? そんな慌てt…」

台所でお茶葉を選定していたモララーは振り返った。
そして気づく。ブーンの腕に抱えられた傷だらけの少女に。

( ・∀・)「…ブーン君。すぐさまベッドにその子を寝かせて。
      ツンちゃん。外の井戸で水を汲んできて欲しい。」

(; ^ω^)「は、はい!」

ξ;゚听)ξ「わかりました!」

56 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:22:57.83 ID:xa5+UvbK0
瞬時に治療が必要だと判断したモララーは二人に指示を出した。
ブーンが階上へ、ツンが外へ出て行くのと同時にモララーは棚からクレスト草を取り出してペースト状にし始めた。

(; ^ω^)「モララーさん、つぎh」

と二階の屋根裏から身を乗り出して指示を仰ごうとしたブーンへ、青色の液体で濡らされた布が飛んでいった。
反射的にキャッチをしたブーンは、飛沫を浴びながらもそれがクレスト草の液を染み込ませたタオルだと判断する。

( ・∀・)「それで優しく怪我している所を優しく拭ってあげて。」

( ^ω^)ゞ「了解ですお!」

握ったタオルで敬礼をしながらブーンは、ツーの傷だらけの顔を拭い始めた。
時々、ピクンと反応するが意識は戻る気配がしない。
ブーンはこれで大丈夫なのだろうか、と心配になりながらも懸命に優しく傷口を拭った。

( ・∀・)「そのままヤカンに水を移して。
      後はそっちの棚にコップがあるから出してくれるかな。」

ξ゚听)ξ「はい!」

戻ってきたツンは、そのまま桶に入った水をキッチンのヤカンへ流しこむ。
水で満たされたヤカンへ、モララーはそちらを見ることなく指だけピッと向けた。
すると、小さくヤカンが跳ねた。それでお湯の完成である。

59 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:26:15.69 ID:xa5+UvbK0
そしてツンが棚からコップを出した頃には、既にクレスト草の薬茶は完成していた。

モララーはそのまま気流魔法を使って飛び上がり、ベッドで寝ている瀕死の少女の元へ向かう。

( ・∀・)「後はこれを飲ませて安静にさせておけばいいよ。」

( ^ω^)「はい!」

ツーの身体がほんのり青色に輝いている。
全身にクレストを塗った証拠だった。
ブーンが一歩下がり、ツーの傍へモララーが寄る。

そして適度な温度の薬茶をモララーはゆっくりと飲ませる。
嚥下力すら弱まってたので、彼は魔法を使い少しだけ手助けをしてあげていた。

(* ∀ )「……。」

少しだけ顔色がよくなった。
峠は越えたのだろう。
それを確認すると、モララーはほっと胸を撫で下ろし助手達に礼を言った。

( ・∀・)「ありがとう。とりあえず、一安心だよ。」

(; ^ω^)「ほんとですかお!?」

ξ;--)ξ=3「よかったぁ…。」

二人もその場で肩同士を合わせたまま腰を下ろし、安堵の息をついた。

62 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/03/10(火) 20:30:20.35 ID:xa5+UvbK0
( ・∀・)(………わかるよ。)

モララーは振り返り少女を見る。
顔は腫れ、擦り傷だらけになっていても…見間違えるはずもない。
この子は、自分のお得意先の野菜屋さんの子だ。

なんでこんなことに?

いや、聞くまでも無い。

心当たりなら……あるからだ。





つづく


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