- 4 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 19:53:28.30 ID:ikWOHIAF0
- (;´・ω・`)「これは……。」
ξ゚听)ξ「さ、着いたわよ。」
( -ω^)「おー…まだちょっと目がチカチカするお…。」
意識が飛んだ。
直前にその双眸が映したのは蒼い魔方陣。
次に目を開けてみれば…知らない山奥に居た。
どこなんだここは。
いや、それより…。
(;´・ω・`)「い、今のは空間転移魔法だろう!?
魔術師のキミがなんでそんな高度な魔法を!?」
ξ゚听)ξ「違うわよ。今のは私の魔法じゃない。
使ったのはその起動用の魔力だけよ。」
(´・ω・`)「どういう…!」
そういえば、ブーンの胸元を掴んでいたな。
ぶら下がっているのは…瑠璃のペンダント?
(;´・ω・`)「これは…凄いな。魔法を圧縮して宝石に留めさせているのか。」
- 6 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 19:55:27.28 ID:ikWOHIAF0
- ( ^ω^)「痛いおー。あんまり引っ張らないでくれお。」
(´・ω・`)「あ、ごめん。」
凝視するために強く引っ張ったせいで、鎖の部分がブーンの首に食い込んでしまったようだ。
慌てて手を離すショボン。
だが興奮は醒めない。
(;´・ω・`)「でも、こんな高度な技術に魔法…近衛魔術師でもないとできない芸当じゃないのかい?
なんでそんなものをキミが…?」
ξ゚听)ξ「…」
ツンは少しだけ悩んだ。
モララーのことを言っていいのかどうかを。
しかし、ここへ来てしまった以上は引き返すこともできない。
こんな制服姿のまま山を降りるのはとても難しい。
何より、転移魔法の発生を既にモララーは気づいているはず。
ここで引き返したら彼が心配してしまうだろう。
そう考えたあげく、ツンはため息をついて前方を指差した。
ξ゚听)ξ「ついてきなさい。説明してあげるから。」
- 7 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 19:58:23.63 ID:ikWOHIAF0
- 第三話「こどもの世界、大人の世界」
(´・ω・`)「こんな山奥に小屋…?」
居場所はわからずとも、ここがかなりの局地であることはわかる。
人の気配はしないし、夏の虫が延々と鳴き続けている音しか耳に届いてこないからだ。
気温や空気も人ごみで溢れている街中とは違う。
綺麗で、日差しは厳しいというのに澄んだ大気のおかげで暑さを感じさせない。
だからこそ、ショボンは疑問だった。
誰かがこんな場所に住んでいるということが。
( ^ω^)「すぐにわかるお。」
とブーンが率先して前を歩く。
そして大樹の下に立てられた木製の小屋のドアをノックする。
( ・∀・)「はーい。」
数瞬置いて、返事が来た。
若い男性の声だ。
軋む音を立ててドアが開かれる。
出てきたのは、白いシャツに薄手のズボンを履いている優しげな青年だった。
- 9 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:03:11.62 ID:ikWOHIAF0
- (;´・ω・`)「えっ!?」
その顔をショボンは知っていた。
何度も教科書で見たことがある。
VIP大陸を勝利へと導いた大魔術師…
(;´・ω・`)「モララー=レンデセイバー……さん!?」
( ・∀・)「いらっしゃい。一応は初めまして…かな。ショボン=ノーファル君。」
ニコリと笑うモララーはとても最強と謳われた魔術師なんかには見えなかった。
ξ゚听)ξ「驚かれないんですね。ショボン君を連れてきたこと。」
モララーは来客を小屋の中へ案内する。
と言っても数歩あるけばすぐテーブルなので、手招きする程度だったのだが。
( ・∀・)「まぁね。正直、ショボン君と話してみたいというのが僕の願望でもあったわけだし。
いつかこっちから出向くつもりだったから、むしろ好都合かな。」
モララーは紅茶を用意しながら、キッチンで会話を続ける。
ブーンはいつも通り、椅子に腰をかけてそれをじっと待っていた。
- 11 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:08:41.79 ID:ikWOHIAF0
- ショボンはガチガチに緊張しながら俯きがちに座っている。
まるで硬化魔法でもかけられたかのように、脂汗を垂らしながら固まっていた。
( ^ω^)「どうしたんだお、ショボンくん。」
(;´・ω・`)「いや…なんか、緊張しちゃって…。」
歴史に残る人間が、自分と話をしたいと言っているのだ。
いくら名家とはいえど、そういう事に慣れたことはない。
父の紹介で何度も有名な人と出会ったことはある。
でも、それはあくまで父の仕事のついで。自分自身に興味を持たれたことなんて一度もなかった。
( ・∀・)「はい、どうぞ。夏はやっぱアイスティーだよね。」
甘い柑橘系の香りがする紅茶が三つ、それぞれ子供の前に置かれる。
ブーンは途端にカップを持ちグビグビと飲み始めた。
ツンはそれを呆れた様子で見つつも、自分も喉が渇いたのか味わうのではなく流すように飲んでいった。
( ・∀・)「…さて、ショボンくん。」
(;´・ω・`)「は、はい!」
(; ・∀・)「や、そんな緊張しなくてもいいんだよ。別にとって食おうってわけじゃないんだから。」
上ずった声で返事をするショボンに少しビックリしつつモララーはリラックスさせようと柔らかい表情をつくる。
- 16 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:12:50.40 ID:ikWOHIAF0
- ( ^ω^)「大丈夫だお。モララーさん、優しい人だから。」
(;´・ω・`)「あ、うん…わかったよ。」
ポンと肩に手を置いてショボンを脱力させるブーン。
( ・∀・)「聞きたいことがあるんだ。言いたくなければ拒否してもいいよ。」
(´・ω・`)「はい」
( -∀-)「…ちょっと君とっては嫌なことかもしれないけど…僕は彼らと交流を持っている。
だから、自然と身の回りの出来事を耳に入れてしまうんだ。
今日何があったとか、明日は何があるんだ、とか。」
( ・∀・)「その中に…君のことも入っている。いじめにあっているという君の情報が。」
(;´ ω `)「!!」
ビクッと反応するショボン。
そのまま俯いてしまった。
( ・∀・)「聞かせて欲しいんだ。
なぜ、君は名門の中でもトップレベルの魔力を持ちながらも甘んじていじめを受けているのか、ということを。」
ξ゚听)ξ「私も聞きたいわ。
去年はブーンをいじめていたショボン君が、どうしてそんな立場に回ってしまったのか…。
ちょっと本気を出せば、そんな奴らワケもないはずじゃ…?」
( ^ω^)「…。」
- 18 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:17:01.63 ID:ikWOHIAF0
- ツンとモララーは真っ直ぐショボンを見ている。
だがブーンはそっぽを向き、その話題だけは関したくないという態度をとっていた。
(;´ ω `)
(;´・ω・`)
(´・ω・`)
俯いて固まっていたショボンは口を何度かあけては閉めてを繰り返す。
が、最後にはキッチリ顔をあげて整然とした態度を取って話すことを覚悟した。
(´・ω・`)「…理由なんて特にないさ。
ただ……」
(´・ω・`)「ただ、自分の家督に傷をつけたくなかった。それだけだよ。」
( ・∀・)「…つまり、魔法を行使して力を力で抑えると名家の誇りが失われると?」
モララーは聞いた途端に返した。
実は少しだけ予想ができていたことではあった。
いじめられているだけならば、誰にもバレることはない。
が、そこで何か反発し喧嘩に発展するとなると…その規模はどんどん大きくなる。
今日だって、二人だけだと思った不良にはたくさんの仲間がいた。
- 21 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:22:29.40 ID:ikWOHIAF0
- もしも彼らを傷つけたとなれば、その仲間も黙ってはいないだろう。
それこそ、他校までも巻き込む小さな戦争になってしまう。
その原因が、名家の…ノーファル家だと知られたら?
せっかく築いた名誉、地位がただの蛮族に成り下がる可能性もある。
力があるといえど、それをただ振り回しているだけでは高貴な者だ、なんてとても呼べたものではないから。
そういった先のこと先のことを考えたあげく、ショボンは甘んじてイジメを受けることにしたのだ。
ξ゚听)ξ「なるほどねぇ…。」
一通り話しを終えたショボンは大きくため息をついた。
(´・ω・`)「どうせ続いたって来年までだ。もう少し耐えるだけで僕はノーファル家の誇りを守ることができる。
なら、今は我慢すべきだと思ったんだ。」
( ・∀・)「学業に関しては滞りもないしね…。悪くはない選択だとは思うよ。」
( ω )「…ふざけんなお。」
- 24 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:27:13.97 ID:ikWOHIAF0
- 二人が納得して、それも決して悪い判断ではないのだな…。
そう思った横で
ブーン一人だけが声を震わせて反論した。
(´・ω・`)「…なんだよ。」
(#^ω^)「なんでそんな辛い選択肢を取るんだお!?」
(´・ω・`)「言ったじゃないか、あの長い戦争で培った地位を堕落させるわけにはいかない。
だから、ここは我慢すべきところなんだって。」
(#^ω^)「喧嘩したら名誉が剥奪されるのかお!?
ぼくは何にもなかったお!! 君と喧嘩した時は、何もお咎めなしだったお!!」
(´・ω・`)「それは校内の出来事だったからだよ。
学校ってのは閉鎖的な空間だ。校内での喧嘩なんてのは決して外界とは関係がない。
例え、そういう出来事が起こったとしても隠し通せるんだ。上からの圧力によってね。」
( ^ω^)「……でも」
( ^ω^)「でも、君がいじめられている事実を僕ら以外の誰かが知ってしまったら…」
( ω )「それこそ、家督に傷が付くお…。」
- 27 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:32:17.64 ID:ikWOHIAF0
- ノーファル家の息子がいじめにあっている。
もしもそれが世間にいきわたってしまったら…きっと抵抗すらできないひ弱な息子なんだなと吹聴するだろう。
事実がどうであれ、いじめというネガティブなイメージのせいでそういった悪評をされることは稀ではない。
(´・ω・`)「だからバレないように僕はさりげなく路地裏に行くよう指示している。
彼ら自身も、暴力を振るうところを誰かに見られたくないだろうしね。
一応は名門に通う生徒なんだ。名を守りたいのは何も僕だけじゃない。」
(#^ω^)「誰かに見られないなら、君だってやり返せばいいじゃないかお!!」
(#´-ω-`)「あーもー…話のわかんない奴だな…。
僕は別に構わないけど、あっちにはたくさんの仲間がいる。
だから安易にやり返すわけにはいかないんだって!」
( ^ω^)「…だったら」
( ^ω^)「だったら、僕が助けてやるお。」
(´・ω・`)「え?」
( ^ω^)「君が困った時は僕が助ける。
誰かにイジメられているのなら、僕は追い払ってやるお。」
( ^ω^)「だからもう、そんな辛いことは終わりにするお。」
(´・ω・`)「…。」
ξ゚听)ξ(ブーン…。)
- 30 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:36:08.74 ID:ikWOHIAF0
(´・ω・`)「…で、キミは勝てるの?」
( ^ω^)「え?」
(´-ω-`)「今日、君は集団でやってきた不良たち相手に腰がひけていた。」
(´・ω・`)「もしも、僕が反抗した場合…あれくらい…いや、あれよりもっと多くの敵を相手にしなければならない。」
(´・ω・`)「それに勝てる、ってキミは胸を張っていえるかい?」
(; ^ω^)「それ……は…。」
(´・ω・`)「僕は勝てない戦いをするのは嫌いなんだ。
軽々しく、追い払うだとか言うのはやめてくれないか。」
ξ#゚听)ξ「ちょっとショボン君!? せっかくブーンが手を差し伸べてるのになんてこと言うのよ!?」
(´・ω・`)「僕は現状を述べたまでだ。むやみに他人を巻き込むのも、僕が好まないことだよ。」
ξ#゚听)ξ「だからって!!」
( ^ω^)「ツン、もういいお。」
- 32 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:38:47.23 ID:ikWOHIAF0
- ちょいと休憩していいですか
PC触るのも久しぶりだから体力落ちまくってて・・・すみません
- 42 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:54:34.38 ID:ikWOHIAF0
- ふぅ・・・とりあえず足りない血を補給して・・・水分も取りました。
まだ半分も投下してないので、できるならば最後まで一気に投下したいです。
ご心配おかけしました。再開します!
- 46 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 20:57:42.29 ID:ikWOHIAF0
- 変わりに激昂してくれた幼馴染の言葉を制すブーン。
そしてふと立ち上がりドアの方へ歩いていった。
( ω )「ちょっと頭を冷やしてくるお…。」
そう言い残し、ふらりと外へ出て行った。
ξ゚听)ξ「ブーン…。」
(´・ω・`)「…。」
( ・∀・)(…。)
モララーはあえて何も言わないでそのやり取りをみていた。
これは彼らが彼らだけで考えて解決してもらわなければならない問題。
世界からしてみれば、ほんのちっぽけな小さな出来事だろうが…
その世界がすべての、こどもの世界で一生懸命何かをしようと努力しているのだ。
全てを把握して、先の解決策を持っている大人がそれに干渉することは…許されない。
- 50 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:03:20.86 ID:ikWOHIAF0
( ^ω^)「はぁ…」
外へ出てため息をつく。
まだ日は出ているが傾きかけている。
もうすぐこの青空も橙色に染まり、鳥や虫の鳴き声がガラリと変わるだろう。
(゚、゚;トソン「あ…」
( ^ω^)「お? トソンさん、こんな所で何を?」
ぶらりと歩きたくなって、家を覆っている巨大な樹木の外周を歩いたところで、体操座りをしているトソンを発見した。
洗濯物を取り込んでいたようで、横に中身のつまった籠を置いている。
(゚、゚トソン「いえ…洗濯物を持って帰ろうとしたら何やら大声が聞こえたもので…
ちょっと家に戻るのをためらっちゃって…」
( ^ω^)「あー…ごめんなさい。それ、僕ですお。
とりあえず、一旦は落ち着いたから安心してくださいお」
(゚、゚トソン「そうですか…。」
声の主がブーンだったことはトソンは知っている。
だが、普段の彼からは想像もつかない怒声だったので、これは下手に場を壊してはならないと判断したから彼女は戻らなかったのだ。
一旦、と言ったということはまだ決着はついていないのだろう。
フラッと出てきたブーンの表情も晴れ晴れとはしていない。
- 53 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:07:26.75 ID:ikWOHIAF0
- (゚、゚トソン「……」
( ^ω^)「……」
ブーンはトソンの隣である樹木の下まで来ると、腰が抜けたかのように座り込む。
そして同じように体操座りをした。
が、トソンとは違い膝を抱えて頭をうずめるような格好をしていた。
トソンはそんな少年の姿を見て何も言えずにいた。
声をかけてしまうと、口下手な自分は無意識に彼を傷つけてしまいそうで
けど、ここで弱っている彼を放って小屋に戻るほど非情でもない。
結果、何も言わないことが一番だと思い黙って空を仰いでいた。
( ω )「……トソンさん」
(゚、゚トソン「はい」
雲の数を20まで数えて暇を潰していたところに、ブーンが力なく呼びかけた。
( ω )「僕は…無力ですお」
(゚、゚トソン「…何故です?」
( ω )「友達が困っているのに…何も出来ない。
出来うる最善策も…そんなものは出来もしない空想だといわれた」
(゚、゚トソン「…」
- 55 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:10:51.94 ID:ikWOHIAF0
- ( ω )「よくよく考えてみれば…イジメられていた側の僕が…何かを変えようなんて無理だったんですおね。
元々何もできない弱い人間なんだお。」
( ω )「そんな僕が……」
(゚、゚トソン「私は、ブーン君が無力で何もできない弱虫だなんて思いませんよ」
( ^ω^)「え?」
予想していない返事に戸惑い、つい顔を上げてみてしまうブーン。
黙って聞いて、適当に慰めるてくれるだろうと思っていた。
それで十分だと考えていたのに…
(゚、゚トソン「ツンちゃんが言ってました。
去年、あなたはイジメられていたこと。そして、それを自らの勇気によって払いのけたことを。」
( ^ω^)「…。」
(-、-トソン「今回はその問題が大きいのでしょう。だから前回より難しいだけであって、あなたは立派に力を持っている。
『今まで』を壊し『これから』を作り上げるだけの勇気があるんです。」
(゚、゚トソン「だから、そんな卑屈にならないで。もっと自信を持ってください。」
( ^ω^)「トソンさん…」
励ましてくれた。
自分を認めてもらった。
無力じゃない。きっと何かを変えられる、ということを。
- 59 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:13:20.68 ID:ikWOHIAF0
…でも、ショボン君はそれを認めてくれるだろうか…?
( ^ω^)「……!」
ブーンはふと上を見上げた。
そして何かを決意したかのように、少し考えてから一人で頷く。
( ^ω^)「トソンさん」
(゚、゚トソン「はい?」
( ^ω^)「この大樹、普通に考えたら天辺まで登るなんて無理ですおね?」
(゚、゚トソン「ん〜…そうですね。それなりに訓練を受けた人か、風魔法でも使わないと…。
私ではとても無理ですね。中腹で諦めたくなります。」
( ^ω^)「よし!」
(゚、゚トソン「よし…?」
- 61 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:15:55.43 ID:ikWOHIAF0
ξ゚听)ξ「…」
( -∀-)「…」
(´・ω・`)「…」
小屋に居る三人は黙って座っていた。
何も言い出せず、何かを言う雰囲気でもない。
ただ、何かが動くのをじっと待っている。
そこへ、大きな変化がやってきた
(゚、゚;トソン「も、モララーさん!! いや、ここはツンちゃん!?
えっと!! そ、そんなんじゃなくて!!」
勢いよく扉を開けて入ってきたのはトソンだった。
いつも落ち着いている彼女がここまで慌てているのは珍しい。
( ・∀・)「おやトソンさん、洗濯物取り込むの随分と時間がかかりましたね」
(゚、゚;トソン「い、今はそんなこと言ってる場合じゃないです!! 外! 外来てください!!」
- 65 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:18:53.04 ID:ikWOHIAF0
- ( -∀-)「はいはい。今行きますよ。」
ξ゚听)ξ"
(´・ω・`)"
残された二人も、一度顔を見合わせてから頷き外へ出た。
ξ;゚听)ξ「ちょっと…ブーン!? あんた何やってんの!?」
外へ出てトソンが指をさした方を見てみると、そこにはブーンが居た。
が、それは地上ではなく…家の側に立っている大樹の枝の隙間に、である。
(; ^ω^)「おー、ツンかお! どうだお、結構な高さにいると思わないかお!?」
ξ;゚听)ξ「何悠長なこと言ってんのよ!! そんな高さから落ちたら死ぬわよ!?」
会話からわかるように、叫ばないときっと声が届かないほどの高さにブーンは居る。
たとえ肉体的に鍛えられた騎士であれど、この高さから落下した場合ただでは済まないだろう。
(´・ω・`)「…どうして木登り?」
至極当然の質問をショボンはする。
彼自身の声は小さいが、拡声魔法を使用しているのでブーンまでちゃんと届いている。
- 69 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:22:12.28 ID:ikWOHIAF0
- (; ^ω^)「ショボン君のためだお!!」
(;´・ω・`)「え?」
意味不明な回答に戸惑う。
(´・ω・`)「僕がいつ、キミに木登りしてくれと頼んだ?」
(; ^ω^)「違うお! ショボンくん、この木を見てどう思う!?」
(´・ω・`)「凄く…大きいです……じゃなくて、立派な大樹だと思うけど?」
(; ^ω^)「だお!? 普通に考えてみれくれお!! こんな大樹、騎士程度の僕が登れると思うかお!?」
(´・ω・`)「……思わないね。途中で体力切れを起こしてモララーさんに救出されるのがオチだろう。」
(; ^ω^)「そう思うおね!? でも、そんなことは絶対にさせないお!!
この木を僕は絶対に登りきってみせるお!」
(´・ω・`)「……何を根拠にそんなことが言えるんだい?」
(; ^ω^)「何かを決意するのに!! 何かを変えるようとする意志に根拠なんかいるかお!?」
(´・ω・`)「…!」
(; ^ω^)「出来ない出来ない、って最初から諦めてたら、何かを変えることなんて絶対無理なんだお!!」
(; ^ω^)「だから僕は証明してみせる!! みんなが無理って言おうと!! 登りきってみせるお!!」
(; ^ω^)「そしたら…認めてくれお! 僕はキミを守るに値する騎士なんだって!!」
- 73 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:25:36.22 ID:ikWOHIAF0
- (´・ω・`)「……。」
ξ゚听)ξ「ブーン…」
(゚、゚;トソン「あ、あの助けなくていいんですか?」
( ・∀・)「大丈夫だよ。僕も彼と同じだ。」
( ・∀・)「信じてるから、僕は手助けなんてしない。」
(゚、゚;トソン「でも!」
心配してオロオロするトソンの頭に手を置きながらモララーは優しく微笑む。
( -∀・)「大丈夫だって。『僕は』助けない。そう言ったでしょ?」
(; ^ω^)「ぜぇ…ぜぇ…うー…ちょっと寒いお…。」
いくら夏といえど高度が上がれば温度は下がる。
何より運動に適さない制服のせいで、汗が止まらない。
動いているうちは暑くて仕方ないが、休憩のために止まると一気に寒さが押し寄せてくる。
風も強くなって、危険度は更にアップだ。
- 76 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:28:30.97 ID:ikWOHIAF0
- 下をチラリと見る。
もうショボンもツンも小さな豆粒にしか見えない。
(; ^ω^)「……ゴクリ」
ブーンは今素直に思った感想を飲み込んだ。
自分で言った言葉だ。自分で取り消してどうする。
諦めるな。出来ると思ったから、今こうやって登っているんだ!
再び士気を高め、乳酸のたまった全身を揺り動かし枝に手をかけて再登樹を始めた。
ξ゚听)ξ「…もうほとんど見えないわね…」
(´・ω・`)「…」
下の二人はずっと登っていくブーンを見届けていた。
ツンは風魔法が得意だ。
もしも連れ戻そうものならいつでも出来た。
でもあえてそれをしなかった。
彼の意思を聞いて、それを無理やり引き止めるのは幼馴染として、人として間違ってると思ったからだ。
ξ゚听)ξ「…ねぇ」
(´・ω・`)「なんだい」
- 79 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:31:30.88 ID:ikWOHIAF0
- それは隣で同じことをしている彼も思っていることなのではないか、とツンは思った。
彼も得意ではないにせよ、風魔法程度は簡単にできる。
それをしなかったと言うことは…
ξ゚听)ξ「あんた、顔に似合わずツンデレなのね」
(´・ω・`)「何が言いたいんだい?」
ξ--)ξ=3 「あんたも、ブーンがこの大樹を登りきってくれるって信じてるんじゃないの?」
(´・ω・`)「僕がいつそんなことを言った?」
ξ;゚听)ξ「あれ?」
(´・ω・`)「最初から、僕は彼がこんな大樹を一人で登りきるだなんて思ってないよ」
ξ#゚听)ξ「ちょっと…! あいつはあんたのためにこんな無茶なことやってるのよ!?
たとえ嘘でも、そこは信じてるって言いなさいよ!!」
(´-ω-`)「そうか。じゃあこういえばいいのかい?『ぼくはさいしょからぶーんをしんじてます。』
ま、嘘だけどね」
ξ#゚听)ξ「あんた…前々から思ってたけど性格悪いわね」
(´・ω・`)「なんとでも言うがいいさ。僕は僕。そう簡単には変わらない。」
ξ゚听)ξ「…………そうね。人なんてコロコロと変わっていいものじゃないものね。」
(´・ω・`)「…なんだ、キミもわかってるんじゃないか」
- 83 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:35:23.26 ID:ikWOHIAF0
- ξ゚听)ξ「…でもね、それを変えて見せようとあいつは頑張ってるの。
あいつ自身が言ってたでしょ。出来ない出来ないって最初から諦めてちゃダメなんだって。」
(´・ω・`)「……わかってるよ。それはもう彼に教えられた。」
ξ#゚听)ξ「じゃあなんで!?」
(´・ω・`)「僕は言ったろう。彼が一人で登りきるだなんて無理だ、ってね。」
ξ゚听)ξ「…!」
(; ^ω^)「はー…はー…まだ…かお…休憩ポイント…。」
先ほどから腰をかけて落ち着けるようないい枝が何処にも見当たらない。
今この体力で適当な枝に腰をかけると…たぶん落ちる。
身体を支えるために力を使うだけじゃ休憩なんて出来っこないからだ。
中盤まではそのポイントがたくさんあった。
が…登るにつれて太い枝がどこにも見当たらなくなってきた。
下はもう木々と葉っぱで何も見えない。
もうすぐ頂上なのだろうか。
それともまだまだなのだろうか。
それすらもわからない。
- 87 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:39:00.84 ID:ikWOHIAF0
- ゴールが見えているのと見えないのでは精神的にも負担は違ってくる。
見えているとペース配分や達成への希望が明確なのでに楽だ。
逆に見えないとどう考えて動けばいいのかわからないので、余計な考えがあれこれ出てくる。
故に体力の減りも激しくなり、早々にリタイアすることもないことではない。
(; ^ω^)「ゴール…ゴール…まだ…か…」
バキッ!
( ^ω^)「おっ?」
(; ゚ω゚)「おぉおおおおおおお!!!???」
掴んだ枝が大きな音を立てて折れた。
完全に体重を預けていたブーンは考える間もなく落下していく。
(; ゚ω゚)「いたっ! うあ…! ちょ!! やば…!!!」
落下中に枝々を折りながら体中が傷ついていく。
このままじゃ…まずい!
けど、今の自分にはこの落下速度を停止できるほど…力は残ってない…。
- 91 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:43:32.69 ID:ikWOHIAF0
- (; >ω<)「…!!」
こうなれば後は運に任せるだけ。
そう思い、現実逃避と反射運動によりブーンは目を瞑ってしまった。
ふと、枝を握った手に今までにない冷気を感じた。
(; >ω<)
(; ^ω<)
(; ^ω^)
( ^ω^)「お…?」
止まっている。
空中で。
何故?
ふと視線を上にあげた。
- 93 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:46:00.97 ID:ikWOHIAF0
- 持ったままだった折れた枝の先が…凍っている。
いや、枝先だけではない。
その先も先も凍って…まるで氷の柱のようになって樹木に張り付いている。
自分の手は枝を離さないようにガッチリと凍結され固定されていた。
( ^ω^)「これは…?」
(´・ω・`)「僕の魔法だよ。」
下から風魔法を使い、すいーっとあがってきたのはショボンだった。
自分の地道な登木を全否定するかのようなスムーズさだ。
( ^ω^)「……つまりなんだお。僕を止めにきたのかお?」
(´・ω・`)「……」
ショボンは固定された氷を解除し、風魔法でブーンを近くの枝に乗せた。
( ^ω^)「あれ?」
(´・ω・`)「まだキミは登りきってない。」
(´・ω・`)「リタイアなんかする気はないんだろう?」
(´・ω・`)「だったら…見せてくれよ。キミの意志を!」
( ^ω^)「…!! おうともさ!!」
- 97 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:49:49.13 ID:ikWOHIAF0
- ξ゚听)ξ「つまり、モララーさんはショボンくんが助けてくれるだろうって最初から…?」
木の下から様子を見ていたツンがモララーへと問いかけた。
( ・∀・)「最初からってわけでもないさ。
ただ、ブーン君の言葉がちゃんと届いていたのなら、きっとそうしてくれるだろうってね。」
(-、-トソン「人が悪いですね。そうならちゃんと言ってくださいよ。私、心配損です。」
( ・∀・)「ま、100%じゃなかったから一応黙っておいたんだ。」
ξ゚听)ξ「…一人じゃ登れはしない。」
(゚、゚トソン「でも、二人なら登りきれる。」
( ・∀・)「それにショボン君が気づいてくれたのなら…もう問題は解決したようなもんさ。」
ξ゚听)ξ「しかし、あの仲の悪いホライゾネル家とノーファル家が手を組むなんて…不思議なもんですね。」
( ・∀・)「そんなことはないさ。彼らは何もただ単純に忌み嫌っていたわけではないんだよ。
ただ考え方がかみ合わないだけで、それぞれの持つ力は多分誰よりも認めてはいたんだ。」
ξ゚听)ξ「へぇ…。」
(゚、゚トソン「でも、今度は違いますね。力だけじゃない。ちゃんと考え方を、意志を認め合おうとしている。」
( ・∀・)「そうだね。…こういう結託が、国を更に強くしていく。
騎士と魔術師が背中合わせで戦えば…きっと向かうところ敵なんてないさ。」
- 99 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:53:01.14 ID:ikWOHIAF0
(; ^ω^)「うぉっしゃあああ!! のぼりきったおおおおおお!!!」
最後の最後にあった葉っぱを押しのけてブーンは叫んだ。
パッと最初に見えたのは、赤焼け色の光を放つ太陽だった。
山の上、更に高い木の上から見える太陽は本当に全てを照らす母なるものだと再認識できるほどだ。
次に街。
VIP街も一望できるし、街道も隣のν速町もしっかりと見える。
(´・ω・`)「綺麗だね」
ブーンの側をショボンはふわふわと浮いている。
その表情は穏やかで、何かを抱え込んでいるような気難しさは微塵も感じられなかった。
( ^ω^)「…ショボンくん。」
(´・ω・`)「なんだい。」
( ^ω^)「一人では無理だったけど…僕はちゃんとこの大樹を登りきったお」
(´・ω・`)「そうだね」
- 101 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:55:58.29 ID:ikWOHIAF0
- ( ^ω^)「…認めてくれとは言わないお。でも、わかって欲しい」
( ^ω^)「僕はキミを助けたい。力になりたいんだお!」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「キミはどう思う?」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「名家であるノーファル家の御曹司が、街裏で大喧嘩をしていたら…どう思うかな?」
( ^ω^)「何言ってるんだお! 父ちゃんは言ってたお! 小さい頃はそんなヤンチャ、日常茶飯事だったって!」
(´・ω・`)「ロマネスクさんが…!? そうは見えないけど…」
( ^ω^)「大丈夫だお。大人しすぎて、逆に衰弱を疑われるよりも…いっそ、その力が衰えてないことを鼓舞してやればいいんだお!」
(´・ω・`)「……そっか。そうだね。」
(´・ω・`)「たまには、大暴れしてやるのも…いいのかもね。」
( ^ω^)「そうだお!」
ブーンはそう言うと拳を突き出した。
ショボンはそれに、少しだけ恥ずかしそうな笑みを浮かべてから拳をぶつけ返した。
- 104 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 21:58:29.93 ID:ikWOHIAF0
(,,゚Д゚)「おうおう、昨日は勝手にバックれやがって…覚悟は出来てるんだろうなぁ!?」
(´・ω・`)「…」
次の日、案の定ショボンは不良につかまった。
そしていつものように人気のない路地裏に連れ込まれ、胸倉を掴まれたまま尋問されてしまう。
<ヽ`∀´>「どうせ何も出来ない癖に無駄な抵抗しやがって…ムカつくニダ!」
(,,゚Д゚)「今回は金払うだけじゃ俺たちの腹の虫も収まらねぇ…ボコボコにされても文句はいうなよ?」
<ヽ`∀´>「お前が悪いんだからな!」
そう言って拳をポキポキと鳴らしながら近づく一人の不良…
<ヽ`∀´>「えっ?」
すると次の瞬間には彼は宙を舞っていた。
真っ直ぐ歩いていたはずだったのに、気がつけば自分が見ているのは青空。
そして数瞬遅れてやってきた、強烈な痛み。
- 107 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:01:57.48 ID:ikWOHIAF0
- <;ヽ゚Д゚>「ごはっ!!」
そこへ更なる追撃がやってくる。
水月部分への正確な貫手がめり込まれ、急激な呼吸困難に陥ってしまった。
( ^ω^)「一応、騎士コースなんだから咄嗟に受身くらい取れるようにしとけお」
不良の一人を一瞬にして片付けてしまったのはブーンだった。
背後から忍び寄り、合気に近い柔術を使い転倒。すぐさま倒れた所に急所突き、というお手本通りの武術だった。
(;゚Д゚)「てめぇ!?」
(´・ω・`)「君の相手は僕じゃないのかい」
胸倉をパッと離してブーンと向き合ったもう一人。
すかさずショボンはその背中へ、氷のつぶてを叩き込んだ。
(;-Д゚)「ぐっ…お前…裏切ったな!!」
(´・ω・`)「裏切る? 裏切るってのは仲間内で使う言葉だろう。
僕は君なんかの仲間になった覚えは…」
(´・ω・`)「ない!」
次に行った詠唱は土魔法。
地面に敷き詰められたレンガの一つが浮かび上がり、ショボンの操作により不良の脳天にぶつけられた。
- 110 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:04:28.34 ID:ikWOHIAF0
- ( ^ω^)「やれば出来るじゃないかお」
(´・ω・`)「君こそ、まさかあんなに早く倒せるとは思ってなかったよ」
( `ハ´)「へー…なんだ、ただの雑魚じゃなかったわけアルね」
(; ^ω^)(;´・ω・`)「!!」
二人を片付けた後、勝利の余韻に浸っているところへそいつらはやってきた。
昨日も見かけた不良グループだ。
(=゚ω゚)「ま、ボクらもその二人は仲間なんて思ってないんだけどよぅ。
弱っちいくせに態度デカくて嫌いなんだよぅ」
( `ハ´)「それでも建前上は仲間アル。そのカタキはうっても間違いなんてないアルよね?」
ニヤリとリーダー格の不良は笑う。
後ろに跋扈しているたくさんの不良たちもニヤニヤ笑い、手に武器を持っている奴は素振りをする仕草を始めた。
要は彼らは暴れたいだけなのだ。
日ごろの鬱憤を晴らす目的ただそれだけで、何かを傷つける対象を常に探している。
(´・ω・`)「思ったとおり、低俗な奴ってことか」
( ^ω^)「貴族にはなれない器だおね」
( `ハ´)「なんか言ったアルか?」
- 114 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:08:20.77 ID:ikWOHIAF0
- (´・ω・`)「あぁ、言ったよ。お前らは屑だって言ってんだ。」
(; ^ω^)「相変わらず口は悪いおね、ショボンくん」
(´・ω・`)「それが地だもの」
( `ハ´)「あーそうかいそうかい。お前らがどこのどいつかは知らないアルが…
つまりは喧嘩を売ってるアルね?」
(´・ω・`)「言わなきゃわからないのかい? やはり屑だね」
(#`ハ´)「…おうお前ら、手加減はしなくていいアル。思う存分やるアルよ!!!」
低い怒号が飛び交い、逃げ場のない路地裏の袋小路へ不良の束が襲い掛かってきた。
( ^ω^)「…流石にこの数は怪我しない自信ないお」
(´・ω・`)「ふぅん…負ける自信はないんだ?」
( ^ω^)「当たり前だお。キミが背中を守ってくれるんだもの。」
(´・ω・`)「そうか…じゃ、僕の背中もキミに預けるよ」
( ^ω^)「了解だお!」
まず一番最初に飛び掛ってきた一人の攻撃をかわし、ブーンは蹴りを入れた。
よろめいている所へ再び柔術をかけ、後続の妨害をする。
だがそれでも相手の勢いは止まらない。
一人の不良が手に持った金棒をブーンへと振りかぶった。
- 117 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:11:23.14 ID:ikWOHIAF0
- ( ^ω^)「!」
回避が出来る距離ではなかったので、腰のナイフを咄嗟に取り出して防御の体制をとる。
…が、金棒はいつまで経っても飛んでこない。
よく見ると金棒の先が壁とくっ付いていた。
直接ではなく、氷によって動きを制止させられていたのだ。
( ^ω^)「サンキューだおショボン!」
(´・ω・`)「お礼は終わってからね!」
アッパーをかまして動きの止まった一人を静める。
と同時に魔法が解除されたので金棒が自由になった。
ブーンはそれを急いでキャッチし、何人かの頭や腕を殴った後
ショボンへと投げつけた。
ショボンはそれを動くことなく見届ける。
すると、何もないはずの真横の空間で金属音が聞こえた。
いつの間にかショボンの背後に回っていた不良が、投げられた金棒の直撃を受けたのだ。
( ^ω^)「おらおらぁ! まだまだこっちはいけるおぉお!!??」
(; `ハ´)「くそ…こいつら……!!!」
- 120 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:14:37.68 ID:ikWOHIAF0
- 不良たちは怯む。
相手はたった二人のはずなのに、どんどんと仲間がやられていくからだ。
だが、いくらなんでも二人にやられたとあってはグループとしての評価に関わってしまう。
逃げるわけにもいかない。
完全に引き際を失ってしまった彼らは、ただとにかく嵐のように暴れ散らす二人に向かっていくしかなかった……。
――――――――
――――
―
(##)ω・`) コソコソ…
(`・ω・´)「こんな時間までどこをほっつき歩いていたんだ?」
(##)ω・`;)「うえっ!?」
日も暮れ、蝋燭や電球が街を照らす頃
自分の部屋へ足音も立てずに戻ろうとしたショボンは、父親に見つかってしまった。
- 124 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:17:38.59 ID:ikWOHIAF0
- (`・ω・´)「…怪我をしているな」
(##)ω・`;)「これは…その…」
たとえブーンが守ってくれたとはいえ、何撃かショボンは貰ってしまった。
特に一番目立つ顔はクレスト草を使って応急処置をしたのだが…それでも一目瞭然だった。
(`・ω・´)「また喧嘩したのか。」
(##)ω・`)「……うん」
(`・ω・´)「まさかとは思うが…ホライゾネル家とではないだろうな」
(##)ω・`;)「ち、違うよ! そんなわけない!!」
(##)ω・`)「…むしろ…彼と一緒に喧嘩をしてきたんだ」
(`・ω・´)「……」
(##)ω・`)「実戦訓練なんて3年生になってからしかやらないから…知らなかったけど」
(##)ω・`)「騎士と魔術師がかみ合うと、あんなに綺麗に戦えるなんて僕知らなかったよ」
(`・ω・´)「…そうか」
(##)ω・`)「……怒らないの?」
(`・ω・´)「何をだ?」
(##)ω・`)「喧嘩をしてきたこと」
- 128 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:20:30.07 ID:ikWOHIAF0
- (`・ω・´)「バカを言え。相手を見ずに売った喧嘩ならば許せんが、お前はちゃんとわかって喧嘩をしたのだろう」
(`・ω・´)「ならば何も言うことはない。」
(##)ω・`)「父さん……」
(`・ω・´)「ただ、一つ聞かせてもらおう」
(##)ω・`;)「な、なに?」
(`・ω・´)「……勝ったのか?」
(##)ω・`)「!」
(##)ω・`*)「もちろんだよ。誰と誰の息子が手を組んで挑んだと思ってるの?」
(`・ω・´)「フッ…そうだな」
(`・ω・´)「来い。傷の手当をしなければな。」
(##)ω・`*)「……うん!」
部屋に戻る最中、シャキンはロマネスクとの共闘についても語ってやろうと誓ったのであった……。
- 131 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:25:05.32 ID:ikWOHIAF0
( ・∀・)「…ん?」
(゚、゚トソン「なんでしょうかね」
何だか騒がしいな。
休日の午後、モララーはツンから貰った新聞を読んでいるとその異変に気づいた。
ちょうど来る時間だろうと思い、トソンにお茶とお菓子の準備をしてもらっていた。
案の定、転移魔法の発動を感じたのだが…
なんだろう、来るスピードが遅いし何やら言い争いのようなものも聞こえる。
またあの二人が喧嘩でもしたのかな?
そう思い、聞こえてきたノックに答えようと立ち上がった時だった。
( ^ω^)「おいすー!」
(゚、゚トソン「おいすー。どうしたの今日は?」
とトソンが尋ねるまでもなかった。
喧騒の正体は、ツンと…ショボンだったのだ。
ξ#゚听)ξ「あ、モララーさん! すみません、ショボン君が勝手についてきちゃって…」
(#´・ω・`)「別にいいじゃないか減るもんじゃあるまいし!!」
- 135 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:27:55.99 ID:ikWOHIAF0
- ξ#゚听)ξ「だから何度も言ってるでしょ? モララーさんは隠居して外界とできるだけ接触を断ってるの!
それの邪魔をむやみにしちゃいけないのよ!」
(#´・ω・`)「とか言いつつ、キミ達だっていつもお邪魔してるんだろう?
なら一人増えようが関係ないじゃないか!」
( ^ω^)「というわけですお。
尾行に気づかなかった僕たちが転移魔法を発動したと同時に、ショボンくんが付いてきちゃったんだお
あ、ちなみにツーちゃんは今日はお仕事ですお」
(゚、゚トソン「あらあら…」
( ・∀・)「まぁまぁ。ショボン君が言ってたように、別にもうバレてるんだし…ここに来る人が増えたって構わないよ」
ξ#゚听)ξ「うー…」
(´・ω・`)「ほらみたことか。」
ξ#゚听)ξ「なんですって?」
( ・∀・)「こらこら、喧嘩はよしなさい。
…ところでショボン君」
(´・ω・`)「はい」
( ・∀・)「何の理由もなしにここへ来たわけじゃないんだろう? どうしてわざわざまた…?」
(´・ω・`)「そんなの、決まってるじゃないですか!」
と言うとショボンは床に正座をし両手をついた。
- 140 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:31:45.10 ID:ikWOHIAF0
- (´・ω・`)「父さんが唯一認める魔術師モララー=レンデセイバーさん!
出来たら僕に修行をつけてください!」
(; -∀-)「…」(予想通りといえば予想通りだけど…)
ξ#゚听)ξ「はぁ〜? 何言ってんのよあんた!」
(´・ω・`)「別にいいじゃないか。世界最強の魔術師と言われる人なんだよ?
その人の下で修行したら、きっと父さんだって超えられるはずだ!」
ξ#゚听)ξ「私だって修行なんてつけてもらったことないのに!」
(´・ω・`)「ふぅん…。素質がないのかもね」
ξ#゚听)ξ「なんか言った!?」
(´・ω・`)「別に…」
( ^ω^)「元気ですおね」
(゚、゚トソン「えぇ、まったく」
いつもは騒ぎの中心であるブーンは、呑気に出された紅茶をすすってトソンと日和見主義にまわっている。
- 142 名前: ◆hCHNY2GnWQ 投稿日:2009/10/19(月) 22:35:24.65 ID:ikWOHIAF0
- ( -∀・) =3
そして未だに喧嘩をしつづけるツンとショボンを見て、モララーは軽く笑みを浮かべながらもため息をついた。
また、にぎやかになりそうだな
そう思って。
つづく
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