- 73 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 11:48:54 ID:4r6PmTn6O
- 強きをくじき、弱きを助ける。
それなら、みんなが弱ければ神様に助けてもらえるんじゃないか?
健康は害だ。
今すぐ病め。
望んでいなくとも、ヒトはみな平等なのだ。
――第五階層「病の国」
- 74 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 11:51:35 ID:4r6PmTn6O
- 扉をくぐった先には、延々と続く赤茶けた土の道があった。
ぜえぜえと肩で息をしながら、背後を振り返る。
そこにはもう、あの忌まわしい狂乱の国への扉は消えていた。
前まではそれが少し不安だったけど、今となっては安心だと感じていた。
【+ 】ゞ゚)「……とんでもない目にあったな」
オサムさんの一言に、みんなうなずいた。
('A`)「これからもああいう国に当たるのかな…」
ζ(゚ー゚;ζ「だろうねぇ」
それぞれが独自の文化を形成しているから、私達の価値観とはだいぶ違う。
それは今まで訪れた国のことを思い返せば、当たり前のことなんだけど……。
ζ(゚ー゚;ζ「やっぱり少し怖いね」
川*゚ 々゚)「大丈夫だよー。怪我したらわたしが治すから」
ζ(゚ー゚;ζ(そういうことじゃないんだけど、)
ζ(゚ー゚*ζ「…ありがとう」
一応、お礼をする。
【+ 】ゞ゚)「……国が見えてきた」
オサムさんの言葉に、私は少し緊張した。
(;'A`)「…なんか見るからにやばそうなんだけど」
ドクオの言うとおりだった。
あちこちの家から煙突が飛び出ているのだけど、煙は真っ黒で空すらも覆っていた。
ζ(゚ー゚;ζ「……たしかに」
とはいえ、進むことしか私達には残されていなかった。
- 75 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 11:53:48 ID:4r6PmTn6O
- 恐る恐る国へ入った私達を迎えてくれたのは、ボロボロのコートと眼帯を身に着け、ガリガリに痩せた男だった。
(φд゚)「ようこそ、病の国へ」
ζ(゚、゚*ζ「病の国……」
たしかに、健康には悪そうな国だけど。
(φд゚)「僕はパミィ。糖尿病を患って片目をなくしたんだ」
ほらね、というように眼帯をずらすパミィさん。
その下にはぽっかりと開いた眼窩。
('A`)「もしかして病の国だから、みんな病気に掛かってたりするんですか?」
(φд゚)「ええ、住人は全て病気持ちです。ほら、あすこに煙突があって真っ黒い煙が出てるだろう?あれを吸った人は喘息になるんだ」
川 ゚ 々゚)「じゃあわたし達も喘息になっちゃうのー?」
(φд゚)「そんなことはありません。あれは長く空気を吸わなくちゃならんのです」
('A`)「はぁ…」
とはいえ、息苦しくて仕方がないのだけれども。
(φд゚)「まぁ特にこれといって名所があるわけでもないですし、旅人さん達は長居しない方がいいでしょう。国境まで案内します」
パミィさんはそう言って、歩き出した。
- 76 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 11:55:36 ID:4r6PmTn6O
- 歩きながら、私は質問する
ζ(゚ー゚*ζ「ところで…なんでわざと病気に掛かろうとしているんですか?」
(φд゚)「至極単純な話です。神様に助けてほしいからです」
('A`)「助けてほしい?」
(φд゚)「ほら、強きをくじき、弱きを助けるって言うじゃないですか」
さかさかと歩きながら、パミィさんは歩く。
細くて人一人しか通れないような路地で、よくここまで歩けるものである。
(φд゚)「そこで、みんなが弱ければ神様に助けてもらえると思いまして」
ζ(゚ー゚;ζ「はぁ…」
(φд゚)「だから、子供が生まれたらすぐに病気に掛からせるんです」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
ゾッとした。
子供達がかわいそうだ、とも思った。
神様なんて、いるかどうかもわかりはしないのに。
そう思っていたのは、私だけじゃなかった。
川 ゚ 々゚)「変なのー」
くるうがそう言った。
川 ゚ 々゚)「もともと健康だったのに、悪くして喜ぶんだ」
(φд゚)「……そうすれば神様に助けてもらえますから」
('A`)「そもそも神様がいる保証なんていないんだぜ?」
「助けてもらえるという保証もな」
(φд )「…………」
視界が開ける。
猫の額ほどしかない広場と、錆び付いた扉。
- 77 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 11:58:44 ID:4r6PmTn6O
- (φд )「うるさい、」
パミィさんが振り向く。
その手には、いつ取り出したのかは分からないけど、ナイフが握られていた。
(φд;)「俺だって好きで関わったわけじゃないんだよ!それが決まりだったからだ!」
ζ(゚ー゚;ζ(やばっ)
鞄には折り畳み式のフレイルがあった。
だけど、こんな狭いところで振り回したらみんなにも当たってしまう。
ドクオの持っている斧も同じだ。
ζ(゚ー゚;ζ(どうしよう、)
そう思った時だった。
【+ 】ゞ゚)「動くな」
オサムさんの低い声。
それから、風切り音。
(φд;)「あ゛っ……」
額を貫かれて、崩れ落ちるパミィさんの体。
- 78 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 12:02:12 ID:4r6PmTn6O
- 振り返れば、クロスボウを鞄にしまうオサムさんの姿が目に入った。
(;'A`)「お、オサムさん……」
【+ 】ゞ゚)「仕方ない。それに死んだ方が本人もよかったはずだ」
(φー )
ζ( ― *ζ「…………」
人が死ぬところを見たのは、初めてだった。
だらだらと路地に流れる血を見て、段々気分が悪くなってきた。
ζ(;―;*ζ「ぅ…ぇっ…」
涙が出て来て、唾液が溢れてきた。
口の中がまずい。
胸がむかむかする。
川*゚ 々゚)「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
くるうが、私の背中を撫でながらそう言った。
川 ゚ 々゚)「ドクオ、扉開けて」
(;'A`)「あ、ああ…」
川*゚ 々゚)「デレ、だいじょーぶだからね」
視界がふさがれる。
まっしろ。
包帯かなにか?
それから、ふわりと体を抱き抱えられた。
川*゚ 々゚)「今日は特別だからねっ」
その言葉を最後に、私の意識は途切れた。
第五階層「病の国」 了
- 83 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 15:36:52 ID:4r6PmTn6O
- ……もしも彼らが生きていたら。
娘の晴れ姿を見たら、なんと言うんだろうか。
――余談「出入口の国」
- 84 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 15:39:34 ID:4r6PmTn6O
- |゚ノ ^∀^)「兄者さん」
( ´_ゝ`)「…………」
|゚ノ ^∀^)「兄者さん!」
( ´_ゝ`)そ「あ、すまん。ぼーっとしてた」
|゚ノ ^∀^)「もう、しっかりしてください。せっかく娘さんのお着替えが終わったのに」
( ´_ゝ`)「はは…。ちょっと、今までのことを回想していてね」
|゚ノ ^∀^)「感傷にひたるのもいいですけど、ツンさんの花嫁姿も見てやってくださいな」
ξ゚听)ξ「…………」
( ´_ゝ`)「……似合うな」
ξ////)ξ「…………」
|゚ノ*^∀^)「あらやだ、この子ったら固まっているのね。そんなんじゃブーンくんにキスされたら倒れちゃうんじゃないかしら」
ξ////)ξ「…………」
( ´_ゝ`)「レモナさん、あんまりからかうのはよしてくれ。ツンの顔がトマトみたいになってる」
|゚ノ ^∀^)「うふふ、ごめんなさいねぇ」
( ´_ゝ`)(……あいつが見たらどう思うんだろうか。)
(*´_ゝ`)(お前の娘も随分立派になったな、かわいいぞ)
( ´_ゝ`)「…とか言うのかなぁ」
|゚ノ ^∀^)「誰が言うんですって?」
- 85 名前: ◆R6iwzrfs6k 投稿日:2012/10/04(木) 15:42:36 ID:4r6PmTn6O
- ( ´_ゝ`)「いやなんでもない」
ξ゚听)ξ「……ほんとに、これで、いいと思う…?」
( ´_ゝ`)「ああ、十分綺麗だよ。ブーンさんもきっと喜んでくれる」
ξ////)ξ「べ、別にあいつのことはいいのっ!」
|゚ノ*^∀^)「あらあらうふふ」
( ´_ゝ`)「…ヒートにも見せたかったな」
|゚ノ ^∀^)「…そうねぇ、こうして見るとそっくりね」
ξ゚听)ξ(……お母さんに、そっくりなんだ)
( ´_ゝ`)「…それじゃあレモナさん、当日もこれでお願いします」
|゚ノ ^∀^)「はい、承知いたしました。式の日にはかわいい花冠もつけましょうね。ベールと一緒になっているやつを」
ξ*゚听)ξ「……はい」
ξ--)ξ(……デレにも、見せたかったなぁ。)
( ´_ゝ`)「ツン?」
ξ゚听)ξ「なんでもないわ」
ξ゚听)ξ(……デレ)
余談「出入口の国」 了
戻る 次へ