- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/23(月) 19:45:54.57 ID:um/f6yoU0
- ニュー速において、最も頂点に君臨する男の部屋。
知識の奔流の影響を最初に受けた世代の生き残り、荒巻スカルノチフの座す部屋。
ここに入った者はまず、そのバランスの悪さに驚く。
部屋に立ち入るためにはまず扉を通過するわけだが、その扉がまず妙だ。
どんな巨人を通す気なのだと問いたくなるような巨大さを持っているのである。
それは身長230センチのクックルでさえ両手を垂直にあげても開けた扉の縁に届かないほど。
/ ,' 3「渡辺、ちゃんねるから直接お達しが来たぞ」
その扉から確認できるのはやはり巨大な、机。
遠くから見れば七人乗りワゴンと勘違いしてしまいそうな造形のものだ。
从'ー'从「なんですかぁ〜?」
部屋にやってきた渡辺は小人的ファンタジーな気分にあてられたまま、机に寝転がる荒巻を見上げている。
この女は普段から脳内がファンタジックなので心配はいらないのだが。
/ ,' 3「DATから脱獄者が出たことと、ニュー速の都市警備隊に不穏な動きがある、ということじゃ」
DAT。それはニュー速とちゃんねるの間ほどに位置する、異能をもった者達を収容する監獄。
地下60メートルに隔離されたその場所は、そもそも脱獄など出来る作りではないはずのものだ。
从'ー'从「あちらとの内通者が?」
/ ,' 3「そうかもしれぬが、そうではないかもしれぬ。あちらも能力者なら何人も抱えておるじゃろう」
从'ー'从「んー。どうします〜?」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 19:49:05.13 ID:um/f6yoU0
- / ,' 3「警戒を怠るな、と言っておけばよいじゃろ」
从'ー'从「またいい加減ですね〜。わかりましたよ〜」
/ ,' 3「それと渡辺」
从'ー'从「はい〜」
/ ,' 3「今日は祭りじゃ」
从'ー'从「ですね〜。それでは〜」
大きな扉を渡辺は回し蹴りで勢いよく閉めながら退室していった。
それによって発生した風圧で、残り少ない荒巻の髪が揺れる。
/ ,' 3「やはり迷走しているのか、ひろゆきよ」
老人は呟く。
誰に聞かせるわけでもなく、それでもこのやたら広い部屋に響いた声は、誰の耳にも入らない。
/ ,' 3「今更あれを戻して何になるというんじゃ」
机を飛び降りた紙の山。
ぱらりと散ったそれは、ちゃんねるから届いたDATからの脱獄者の資料だ。
そしてその資料の中には、かつてある団体において最強と謳われていた男の名前があった。
第十七話「さわぐ人たち」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/23(月) 19:52:38.59 ID:um/f6yoU0
- 学園祭というものは、その学園に所属する学生にとって大多数が待ち望んだものと言えるだろう。
_
( ゚∀゚)「出店襲撃!」
ここニュー速における学園祭は都市全体で催す大規模な祭りとなっており、
待ち望むのはその学生に限った話ではなく、主に周辺に店舗を持つ一市民もノリノリで参加するものとなっている。
祭りの雰囲気に乗って、普段よりも割高な商品だろうがうまいこと引っ掛かればそこそこの売り上げが期待できるためだ。
( ^ω^)「どこから行くんだお?」
ジョルジュの言う『出店』は学園構内に無理矢理設置された簡易店舗。
所によってはちょっとしたイベントなども開かれ、くだらないこと大好きなここの学生は腕まくりして参加する。
_
( ゚∀゚)「食堂前のホットドッグ大食い大会だな」
( ^ω^)「いきなり食いに行くのかお」
_
( ゚∀゚)「今日は祭りだぜ? やるしかねえ!」
まさにこんな感じに。
( ^ω^)「じゃあ僕は適当に遊んで来るお。あとで連絡くれお」
_
( ゚∀゚)「おk」
ブーンは正門前でジョルジュに告げると学園外に向かっていく。
学園周辺でも祭りの影響を受け、なにやら楽しげな音や声が響いていた。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/23(月) 19:56:17.59 ID:um/f6yoU0
- ジョルジュは一人残され、群衆の中へ足を運ぶ。
鼻歌をふんふん言わせながら歩き、周りの楽しげな雰囲気に彼も無条件で乗せられてしまう。
_
( ゚∀゚)「おっと!」
ミセ*゚―゚)リ「おぼ」
ξ゚听)ξ「あら? 一人なんて珍しいわね」
食堂へ向かう途中、講義棟から出てくる人に見知った顔を見つけた。
ミセリはなにやら紫っぽい色のチュロスをくわえている。
さっさと食えばいいのだが、二本刺し状態なので食べづらいらしい。
_
( ゚∀゚)「あんたらどこ行くん?」
ξ゚听)ξ「私はミセリの付き添いで食堂だけど」
_
( ゚∀゚)「今食ってんのに? いい度胸じゃねえのミセミセちゃんよ」
この発言がなされた途端、口にあった二本のチュロスは一瞬で吸収される。
さらにツンの持っていたフライドポテトをつまみ、ジョルジュを睨みつけた。
ミセ*゚ー゚)リつ―「ふふふ、じょる君なんて眼中にないよ」
_
( ゚∀゚)「お前の手ぇギットギトだからこっちくんなよ?」
ミセ*゚〜゚)リ「っていうかじょる君も出るんだね?」
_
( ゚∀゚)「参加料300円だし、朝からなんも食ってねえしな!」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:00:08.11 ID:um/f6yoU0
- ミセ*-ー-)リ「甘いね、考えが甘い」
偉そうに腕を組む彼女。
先程のジョルジュの発言の通り、手はギットギトなので着ていたブレザーに汚れが付いた。
ツンはそれを見ながら自分の腕を観察する。もっともツンの方は汚れてなんぞいない。
_
( ゚∀゚)「別に勝つ気はそんなにないんd」
ミセ#゚Д゚)リ「喝ッ!!」
ξ;゚听)ξ「!!」
_
( ゚∀゚)「!!」
ミセ*゚Д゚)リ「小僧! 勝負とは―――」
≡川#゚ -゚)「やかましいわ! やっと見つけたぞこんにゃろ!」
ミセ;゚д゚)リ「やっべえ! クー来た!」
突如人混みから現れたのは鬼のような形相でお好み焼きを持った黒い髪の女だ。
彼女はなんの恨みがあるのか、親友であるはずの女に向かい走る。
標的にされてしまった奴は弱弱しい声を上げ、ツンのポテトの袋を奪い去りつつ逃げていった。
_
( ゚∀゚)「なんぞ……」
ξ゚听)ξ「私のポテト……」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:04:22.72 ID:um/f6yoU0
- 残ってしまった二人は食堂への道をふらりふらりと歩くことに。
丁度噴水のあたりまで来てみると、かふぇ・すい〜つ(笑)の車上パフェ&クレープ店が入っているようだ。
車用の道が無い中わざわざここまで入ってきたことには感服する次第である。
ξ*゚听)ξ「ジョルジュ! あれ食べたい!」
_
( ゚∀゚)「俺に言われてもなぁ……」
ほどほどに列が作られ、売り上げもなかなか好調そう。
つまりは悪くない味を誇っているわけで、ツンはその雰囲気に釣られてしまったのだ。
ξ゚听)ξ「えー? デートのノリってこんなんじゃないの?」
_
( ゚∀゚)「俺に聞かれてもなぁ……」
ツンはジョルジュの腕を引っ張り、列に並ぶように促した。
周りも男女二人組が多く、この二人も例に漏れずそんな感じに見える。
_
( ゚∀゚)「俺これから大食いだぞ? 正気か!」
ξ゚听)ξ「じゃあ何も頼まなければいいんじゃない? だって一人で並ぶの嫌なんだもん」
わがままである。
それでもジョルジュは嫌な顔は見せなかった。
というか嫌な顔をする理由が彼には存在し得なかったのだ。
_
( ゚∀゚)「並んだのに食わないなんてマジでアホだと思ってますが!」
ξ^ー^)ξ「言うと思った。じゃあ何食べるか決めましょ?」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:08:18.33 ID:um/f6yoU0
- (;^ω^)「ギコがえらいことになってるお……」
ブーンは第二運動場で催しがなされてると聞きこちらへやってきた。
太い声の多い歓声に釣られ、背の低い芝生の広場に足を踏み入れる。
そこで起こっていた出来事は、
(*゚ー゚)「この人を倒したら私達とデートができますよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「挑戦料はジュース一本分! 振るってご参加ください!」
(*゚∀゚)「アタシも戦いたいー!」
妙な商売だった。
(,,゚Д゚)「ったく、しんどいぜ!」
ギコの伸ばした掌には360度幾重にも広がった凶器が重ねられている。
どういう経緯でこうなっているかはさておき、それなりにギコも楽しんでいるような清々しい表情だ。
(*゚ー゚)「おっと、お次は四年生の二人!」
ζ(゚ー゚*ζ「毎度ー! それでは行っちゃってください!」
(,;゚Д゚)「くっそ、でも負けたらしぃが……!」
ブーンは広場の端に流石兄弟が座りこんでいるのを見つける。
二人がちょこっとくらい事情を知ってそうだ、と思ったのでそちらに向かっていった。
歩く彼の視界の端では、人と武器と妙な紐が飛び交っている。危なっかしい連中である。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:12:31.54 ID:um/f6yoU0
- ( ^ω^)「おいすー」
(´<_` )「お、ブーンさん」
( ´_ゝ`)「おお、久しぶりだな内藤」
二人はだらりと芝生に座りこみ、買って来たのであろう焼き鳥などの乗った大きなプラスチックの皿を広げていた。
ちなみに、弟者に対して兄者がブーンのことを呼び捨てにするのに理由は無い。兄者は生意気なのだ。
( ^ω^)「あれなーにやってんだお」
ブーンの指の先には、二人の生徒に対しギラギラした笑みで凶器の山を投げつけるギコが居る。
どうやら早くも一試合終わりそうで、それは彼が全力でやり合っていることを示していた。
(´<_` )「なんかあの金髪の子が( ´_ゝ`)「デレたんな」提案した商売ですよ」
( ´ω`)「うわぁ……予想通りだったお……」
(´<_` )「俺らも負けちまったんで、ブーンさんも行ってみたらどうすか?」
( ^ω^)「絶対勝てないからやめておくお。あの条件じゃ」
( ´_ゝ`)「だよなぁ。卑怯ってもんだわありゃ」
挑戦者が勝った場合の報酬がギコを燃えさせているのだ。
彼に『自分の心の一部と言ってもいい女性が他の男と遊ぶ』などと言う条件に納得できる器量などあるはずがない。
しかし無情にも催しは始まってしまっているため、彼がそれを防ぐ条件は負けないこと只一つ。
それを確実に達成するには、全力で挑戦者を捻り潰す他ない。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:16:14.67 ID:um/f6yoU0
- ( ^ω^)「単なるアホだお」
( ´_ゝ`)「言えてるな」
(´<_` )「あ、焼き鳥食います?」
差し出される焼き鳥、無言で受け取るブーン。
それと同時に座りこむ。
( ^ω^)「はぁ、どこ行こうか迷うお」
一息つきながらパンフレットを開いた。
しかし目の前で行われているようなゲリライベントも多いので、実際これはあまり参考にはならない。
( ´_ゝ`)「俺はゲーセンの格ゲー大会に行くぞ。来るか?」
( ^ω^)「どうせドクオが勝つからどうでもいいお」
(´<_`# )「やってみなければわからないだろうが!」
(;^ω^)「えぇ……?なんでお前がキレたんだお……」
( ´_ゝ`)「こいつは極度のゲーオタだからな」
(´<_`# )「うるせえなパソオタが!」
( #´_ゝ`)「なんだと? おいやんのか? あ?」
( ´ω`)「コイツらめんどくせ……」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:19:33.14 ID:um/f6yoU0
- ( ^ω^)「まあ、適当にぶらつくお」
ブーンはなにも刺さっていない串を各所に設置してある段ボールの簡易ゴミ箱に投げつける。
兄弟はその場で足相撲をし始めてしまったので、特に声も掛けずその場を後にした。
(,,゚Д゚)「っし! 勝ったぜ!」
⊂ζ(゚∀゚*ζ「次! ほらほらどんどん来るっ!」
群がる悲しい男たちはデレの手に触れる口実に次々と小銭を押し付ける。
その中に一人、おっさんの手も紛れ込んでいたのだが。
( ФωФ)「吾輩の出番だな」
ζ(゚ー゚;ζ「うえ……」
( ФωФ)「勝てば吾輩もデートができる。そうであろう?」
(;゚ー゚)「まあ、ルール的にはそうですけど……」
( *ФωФ)「ふはははは!! 来いっ!! 小童ァッ!!」
(,,゚Д゚)「マジキチ……」
その直後。
ギコが凄まじい初速をもって垂直に吹き飛んでいったのはその場に居た全員の目に焼き付いた。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:23:27.93 ID:um/f6yoU0
- (-@∀@)「さあ! 今まさに始まろうとしている第六回ホットドッグバカ食い選手権!
前回の優勝者は当時三年のフサギコさん! 今年はどんなバカ食いを見せてくれるのでしょう!
尚、フサギコさんは今年学園祭実行委員長も務める次第であります!
ではディフェンディングチャンピオンの、あってる!? フサギコさんから一言!」
ハイテンションにマイクを振り回す眼鏡の生徒は、食堂前に設置された壇上で捲し立てている。
彼が見下ろすその群集もその勢いに乗せられ、競うように腕を突き出していた。
ミ,#゚Д゚彡「オラァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!! フサギコだぞゴラァァァァァ!!!!!!」
「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」」」
現れたのは全ての方向に茶髪を逆立てたいかつい男。
その雄たけびはまさに百獣の王を彷彿とさせ、滾る雄共のボルテージを底上げする。
ミ,#゚Д゚彡「お前ら聞けェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!」
「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!」」」」」」」」
ミ,#゚Д゚彡「俺こそが!!!!!!!!!! 最強だァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」
「「「「「「「ウゼェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!!!」」」」」」」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:27:16.86 ID:um/f6yoU0
- ξ;゚听)ξ「ついてけないわ……」
反響する雄たけびは心の臓を揺るがす激震となって襲いかかる。
これによって引きだされるのは生物としての本能の一つ、闘争心だ。
_
( ゚∀゚)「ここからは男の戦場だ……! ツン! 下がってろ!」
例に漏れずジョルジュもノリノリである。
(-@∀@)「さて! フサギコさんの宣誓は終わりです! もうわかるでしょう!?
参加料は300円! ここに居る男共!! どうするよ!!!!!!」
そして司会者は瓶底眼鏡をぶん投げる。
(#@∀@)つミ「オラァ!! さっさと挑戦者ぁ、出てこいってこったァ!!!!!!!」
「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」」」」」」」」」」
ξ;゚听)ξ「うわぁ……モララーだったんだ……ていうか、どういう経緯で?」
_
( ゚∀゚)「いっくぜえええええええええええ!!!!!」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:31:05.96 ID:um/f6yoU0
- ミセ;゚д゚)リ「ああー!! 間に合わなかったぁ!!」
ツンが声の方を向くと、汗を額に輝かせ肩を上下させるミセリがいる。
ξ;゚听)ξ「ちょ、ミセ――」
ミセ",○:)リ グッチャ 「まべっ」
川 ゚ー゚)「ふははははははっ!! リベンジ成功っ!!」
次いでやってきたのは素早くお好み焼きをぶっ込み、バカ笑いするクー。
ソースの匂いを撒き散らしつつ、そのお好み焼きは潰れたまま少女に食らわれた。
=≡ミセ*゚〜゚)リムシャムシャ 「顔洗ってくるー!!」
ξ゚听)ξ「なんでミセリに怒ってたの?」
川 ゚ -゚)「だってミセリがケーキぶつけてきたんだもん………」
ξ;゚听)ξ「え? あれまだ残ってたんだ……そりゃぶつけられるよ……臭いし」
(#@∀@)「参加者締切り!! ……よし!! 席つけやぁ!!」
壇上には十二人の有志達。
彼らの眼前には山盛りのホットドッグ。
結局男たちだけの戦いは、今まさに始まろうとしていた。
/ ゚、。 /「……ちょっと通りますよ」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:35:07.79 ID:um/f6yoU0
- ( @∀@)「あーっと! ここで壇上に乱入者だァ!」
/ ゚、。 /「いえ、フサを捕まえに来ただけです」
隅っこに突如現れたのは長身の女。
その女性は腰にも届きそうなほどの黒髪を揺らしながら、壇上に飛びあがってきたのだ。
( @∀@)「みなさん、彼女は学園祭実行委員、副委員長の鈴木さんです! 拍手ゥ!!」
パチバチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチ「「「「「「「「「「「「「スッズキィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」」」」」」」」」」」」パチパチパチパチ
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/ ゚、。;/「あまり僕を鈴木と呼んで欲しくはないなぁ……」
ミп゚Д゚п「のぁ! ダイオードじゃねえか! お前以外と食える人だったの!? かかって来いよ!」
両手にケチャップとマスタードをぬったくっていたフサギコはようやく彼女の存在に気付く。
現在の彼の奇行は前年度で成果をあげた方法で、決してトチ狂ったわけではない。
/ ゚、。 /「行かないよ。今日も僕らは仕事がある。忘れたのか?」
ミ,,゚Д゚彡「なにも聞こえねえぜ! なぁホットドッグよ!」
/ ゚、。 /「なら、実力行使かな」
(;@∀@)「ちょ待って!!!」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:38:50.35 ID:um/f6yoU0
- ダイオードが前傾姿勢になる。
だが次の瞬間の彼女の姿を、ここにいる誰が確認できただろうか。
ミ,,゚Д゚彡「おい! 待てって!」
/ ゚、。 /「聞く耳は持てないな。面倒だから」
フサギコの首に腕を絡めているダイオードは既に壇の下。
その壇の幅は20メートル程はあったにも関わらず、二人はそこに居た。
ミ,,゚Д゚彡「バカ違うっての! 俺の両手が!」
/ ゚、。;/「うあ! やだぁ………」
それでも首を横に捻っていた彼女に生える長い髪は、慣性には逆らえないようであった。
( ・∀・)「あれで普通に喋ってるのがもうね……」
咳払い。
さらに「瞬間移動するバケモノはさておき」と頭に付け、
( @∀@)「さあ始めようぜっ! 第六回ホッドドッグバカ食い選手権!!
レディィィ―――ゴォォォォォォォォゥ!!!!!!!!!!!!」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:42:38.00 ID:um/f6yoU0
- ウイーン
( ^ω^)「結局来てしまったお……」
爆発音や打撃音が鳴り、時折サイレンのような音が響いているのかと思えば人の声であったりと、
大会開催中のゲーセンは普段よりもさらにカオスっぷりが増していた。
从*゚∀从「先輩!」
普通なら辟易してもおかしくはないのだが、普段からいい感じにやかましい彼女にそれは関係ないようだ。
この女ハインリッヒはブーンを発見すると、今の台詞を嬌声といっても差し支えないような声色で叫んだのだ。
( ^ω^)「ああ、やっぱりここにいたのかお」
从 ゚∀从「おっと! 俺を探してたんですか?」
( ^ω^)「別にハイン一人だけじゃないお」
首にまとわりついてきたハインの相手をそれなりにしつつ、ブーンは観客ブースを探して座りこむ。
学園内の人混みとは違い少々”濃い”人間が多いここでは、そんなブーン達を冷たい目で見つめる者も少なくはない。
( ^ω^)「あ、ドクオやってるお」
Σ('A`)「この呟きはふぐりだな!」
ノパ听)「ふぐり? あ、ハイン! どこ行ってたんだよ!」
かき分けかき分け、ようやく見つけた仲良し二人組は格ゲーの匣体の前。
彼らは対戦中でありながら、5メートル程の距離を無視してブーンらに話しかけてきた。
なんとも緊張感の欠片も無い。所詮遊びの一環であるのでどうということもないが。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:46:56.66 ID:um/f6yoU0
- 从 ゚∀从「ちょっとトイレに――」
(´<_`# )「余裕じゃねえかコラァ!」ガチャン
( ^ω^)「あいつうっせ」
('A`)「だからそのワンパつまんねっつの」ガチャチャ
(´<_`# )「だったらこうだ!」ガチャガチャ
('A`)「その厨技対策できてるって」タタタ
(´<_`# )「兄者!」ガチャ
( ´_ゝ`)「やだよ」パチパチ
('A`)「俺はお前らの二人の戦法知ってるからね? いきなり代わっても意味ないからね?」パチチチ
(*´_ゝ`)「あ! ハインたん!」ガタッ
从 ゚∀从「すいませんこっちみんな」
('A`)「おまえ席立つなよ……」
ノハ#゚听)「兄者動かせって!! うわつっまんねええええええええええええええ!!!!!」
観客の話から大会決勝だということはわかったのだが、彼らのこのいい加減さはどうにもならなかった。
周りはといえば結構ブーイングが飛んでいたりしてやっぱりやかましい。
巨大モニターでのドクオ対弟者戦は内容はなかなかのものであったので、ギリギリ暴動にならなかったのが唯一の救いだろう。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:50:53.31 ID:um/f6yoU0
- ('A`)「はいはい優勝優勝」
(゚<_゚ )「俺は……俺はぁ……っ! 何の為にっ! 戦ってきたんだあああああああああああああ!!!!」
四つん這いで吠える弟者は決勝戦のドクオを讃える群衆に呑みこまれる。
その一方で三位を争っていたヒートはといえば、観客ブースでハインをいじりながらずっと不満そうな顔をしていた。
ススス ((((*´_ゝ`)「ハインたんとヒーにゃんの絡み! ハアハア」
从 ゚∀从「しね」
ノハ#゚听)σ「るっせー! こっちきたらぶっころすぞ!」
物騒な二人である。
('A`)「ちんたら戻ったらいい時間だな。行こうぜ」
( ^ω^)「だおー」
ノハ#゚听)ノシ「こんにゃろ! くんな!」ベシベシ
(*´_ゝメ)「いたい! いたいよっ!」ハァハァ
从*゚∀从「しね!」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:54:54.63 ID:um/f6yoU0
- (´・ω・`)「やぁ、いい試合だったね」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
('A`)「ショボンか、お前がゲーセンとは珍しいな」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤカイヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
( ^ω^)「ビロード達に捕まってたんじゃなかったのかお?」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(´・ω・`)「僕が捕まる? 三人まとめてコインロッカーに封印したよ」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(;'A`)「お前ついに人をッ!」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(´・ω・`)「冗談だよ……人は殺さない主義だから、ね、ドクオ」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
('A`)「なにその含みのあるような言い方………」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤヤ゙ヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(´・ω・`)「僕にだって嫌なものがあるってことさ」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
( ^ω^)「え……ってことはショボンもかお?」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
('A`)「その話はいいっつの………」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
( ^ω^)「んー、ときにショボン、明日は本当に出ないのかお?」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(´・ω・`)「僕は無敵だから居たらつまらないじゃないか」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
('A`)「自分で言うなよ……」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤタカヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(;^ω^)「ああもう! 周りうるせえお!」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
(´・ω・`)「まあ、明日は頑張ってよ」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガイガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 20:58:50.85 ID:um/f6yoU0
- しょぼくれも一レス分で退場してしまう。
それほどに人でごった返しているゲーセンなのだ。
ブーンとドクオは後ろには目もくれずただ前に歩き、ようやく肉沸き汗踊る地獄から解放された。
(;'A`)「あいつらついてこいよ……」
(;^ω^)「僕らの抜けるスペースも一瞬しか作れてないからしょうがないお……」
秋の風は冷たい。
汗は冷える。
冷たい。 ウイーン
(;´_ゝ`)「暑い……」
('A`)「お、生きてたか」
(;´_ゝ`)「これからリアル脱衣麻雀だったのに……」
( ^ω^)「アレは見る価値無いお……いくら二十代の女性とはいえ……」
('A`)「ああ……観客は専門の方々だしな……」
遠い目をする二人。
(;´_ゝ`)「去年見れなかったから今年は、って思ってたんだが……」
(-A-)「兄者よ……そいつを形容するならなぁ……肉布団だぁ。ありゃあ、心的外傷ってレベルじゃねえ……」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:02:58.98 ID:um/f6yoU0
- ノハ;゚听)「絶対胸触られた!」
从;゚∀从「怖かった……」
また二人出てくる。
(-A-)「ヒート、それは事故だから気にすんな……」
ノパ听)「おお、その発言は私に喧嘩を売っているのか?」
( −ω−)「違うんだおヒート。それは、違うんだお……」
ノハ;゚听)「うおお、なにを悟ったんだ二人とも……」
从;゚∀从「なんか異様に落ち着いてる……」
( ´_ゝ`)「逆にどんなものか見たくなってきたな」
( ゚ω゚)つ「ダメだお!!」
( ゚A゚)っ「行くな!!」
=Ξ(*´_ゝ`)「制止を振り切り精子の旅へ!!」
(#゚A゚)「バッカヤロォォォォォォォォォォォォォォ―――ッ!!!!!!!!」
(; ω )「僕は……あいつを止められなかった……!!」
('A`)「ま、後悔するのはあいつだしな。行こうぜ」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:06:47.97 ID:um/f6yoU0
- ( @∀@)「おっと3番さん34本目に手を掛ける! 他の追随を許さない食いっぷりだぁ!
もう二位と十八本差なんで食わなくてもいいと思いますけどねェ!!」
(・(口)・)「自分の限界とは!! 如何ほどのものか!!」ガバガバ
( ・∀・)「マジ引くからやめろってことだよ……鼻どこ行ったんだよ……」ブツブツ
_
( ゚∀゚)「飽きてきたし食えねえし吐いていいのかこれ」
( @∀@)「吐いてしまった場合全員分のホッドドッグ代と清掃のおばちゃんからの鉄拳制裁ですよ!!
ちなみに! 今年からはビリの人はウインナーの代金と清掃費を払ってもらいます!!」
_
(;゚∀゚)「馬鹿なっ! 参加前の説明はどうした!!」
ブーブー言うのは参加者のみで、観客はそれはもう盛り上がる。
死ぬのは11人のうちの誰かであるのは確定しているので、やっぱ人っていうのはそんなものだ。
( @∀@)「くく、おいしいホッドドッグももう血の味しかしないんじゃないでしょうか!?
口から噴き出ているのはケチャップ!? 吐血!? それとも、あ、放送コードに引っ掛かるんでやめます」
「誰かクマーを止めろ!!」
突然誰かが誰かに叫ぶ。
会場の注目は当然、トップを突っ走るクマーの席に注がれた。
(゚(δ)゚)「限界を超える……越える……!」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:10:18.11 ID:um/f6yoU0
- ( ・∀・)「おまえ誰だよ……」
クマーは替え玉をしたと判断され、優勝者は二年生になった。
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりー」
_
( ゚∀゚)「おう。クマー先輩は後で請求されんのかねぇ……?」
川*゚ワ゚)「ジョールジュっ、口にケチャップついてるぞぉ☆」
_
( ゚∀゚)「だれおま」
川 ゚ -゚)「私だ」
_
( ゚∀゚)「お前だったのか」
川 ゚ -゚)「まtξ゚听)ξ「そういうのいいから」
( ・∀・)「チョリーッス」
_
( ゚∀゚)「お前後始末とかないのか?」
( ・∀・)「俺もゲスト的な?」
_
( ゚∀゚)「ふーん。じゃあ行こうぜ?」
ミセ*゚ー゚)リ「だねー」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:14:10.82 ID:um/f6yoU0
- ≡⊂(#^ω^)⊃「ジョルジョォォォォォォォォォォォォ!!」
で、連絡も適当に取り、彼らは合流することに。
_
(#゚∀゚)「てめえ大声で人の名前間違えてんじゃねえよ!!
例えばだ、俺がお前に呼ばれたことで視線が集まるだろ!?
そのとき下級生がξ*゚听)ξ『あの人ジョルジョ先輩って言うんだぁ……どきどきっ☆』
ってなって後夜祭のキャンプファイヤーでξ*><)ξ『ジョルジョ先輩! 好きです!』
とかなったらどうすればいいの!? 俺は『いやジョルジュだけど』とか言っちゃったら
ξ;>Д<)ξ『人違いでした! ごめんなさい!』ってなるだろうが! でも間違ってないのその子!
ちゃんと俺のこと好きなの! でもそんな小さなすれ違いで結ばれるはずの俺らが結ばれないの!
ロミオとジュリエットなの! 儚い運命の歯車は逆回転を刻みだすのぉぉぉぉぉぉっ!!!」
('A`)「後夜祭にキャンプファイヤー無いよな?」
ノパ听)「うん。ていうかうるさいよジョルジョ」
"从* ∀从,,←滑ったことにツボった
ξ゚听)ξ「先読みアフレコ褒めてよ……んーっと、どうする?」
( ・∀・)「まあ適当に、」
川 ゚ -゚)「ぶらぶらしよう」
ミセ*゚ー゚)リ「お祭りって楽しいねぇ」
( ^ω^)「落ち着いて見るといかに空回りしてるかわかるお」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:18:06.81 ID:um/f6yoU0
- それから卵投げイベントとかしてみんなの目的地グラウンドへ。
ミ,#゚Д゚彡「オラァァァァァァァァァ!! 集まったかゴラァァァァァァァ!!!!」
(#^ω^)「「「「「ウオォォォォォォォ!!!!!!!」」」」」('A`#)
ξ゚听)ξ「またこのノリかぁ……」
ミ,#゚Д゚彡「明日は何の日か分かってるかぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
ミ,,゚Д゚彡「そうだ! 明日は毎年恒例の『腕章ぶんどり合戦』の日だ!!!!!」
「「「「「ウヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!!!!!!!!」」」」」
ミ,,゚Д゚彡「うるせえな。つーことでこれから実行副委員長の、お前ら大好き鈴木さんから説明があるぞー」
(*`・ω・)「「「「「「「「スッズキィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」('(゚∀゚*∩
( ・∀・)「今知ってる奴の声が聞こえたような……」
/ ゚、。 /「どうも僕です」
「「「「「「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」
/ ゚、。;/「悪いけど、説明ができないから静かにして欲しいな……男の歓声は気持ちわるいし……」
ピタッ
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:22:15.78 ID:um/f6yoU0
- 千人規模で集まっているこの群衆を収めてしまう鈴木。
彼女は彼らが収まる理由をあまり好ましく思ってはいないが、
この際利用できるものは利用してしまおう、という考えも持ち合わせている。
/ ゚、。 /「基本は去年とあまり変わらないし、細かいことを書いた資料も配布済みだけど、概要を説明するよ――」
腕章ぶんどり合戦とは
参加資格は中等部の二年〜四年。無論参加は強制ではない。
これは参加生徒がそれぞれ支給された赤の腕章をつけ、都市内の指定範囲で争う戦いである。
目標は他生徒の腕章を奪うこと。方法は問わず、チーム形式でも個人でも咎められることは無い。
制限時間は五時間で、時間内に回収した腕章の数だけ次年度の実戦成績査定に加味される。
合戦中に奪った腕章は自分の腕につけなければならず、隠すことは厳禁。
成績に加味される上限は二十で、そこまで稼いだ生徒はそれ以上稼いでも意味は無い。
途中退場は許されず、指定範囲外に出てしまった場合は奪った腕章ごと退場し、成績はノーカウント。
ミ,,゚Д゚彡「基本は以上! そして今回、俺ら実行委員は!!!」
/*゚、。/「すうっ――ボ、ボーナスリングを設定しますっ!!!!!」
勢い余ったのか彼女の声は裏返る。
大声で話すフサギコのテンションに合わせてみたのだ。
彼女は悪くない。
悪いものがあるとすれば、彼女の裏返りによって呼吸も感じないほどに静まった会場だろう。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:26:17.35 ID:um/f6yoU0
/ 、 /「――――」
一瞬棒立ちになる鈴木。
それでもフサギコだけはなにも気にせず続ける。
ミ,,゚Д゚彡つο「一見何の変哲もないこの黄色の腕章!!」
/ ゚、。 /「はぁ……ええと、私達がつけるこの腕章はー、奪うと十の赤腕章とー、同じ意味を持ちますー」
ミ,,゚Д゚彡「つけるのは俺ら二人だけだがな!!」
/ ゚、。 /「他の実行委員にはー、それぞれ青と緑の腕章がつきますー。それぞれ三つと五つの赤腕章分ですー」
ミ,,゚Д゚彡「説明はこれでいいな!? あと!! 俺には個人的に言いたいことがある!!」
/ ゚、。;/「え、なんですかそれ、きいてませんよ」
小声でフサギコに耳打ちする。
このとき、これから彼が言うことは予定外のものであることは全員容易に想像がついた。
うっかりさんな彼女の持つマイクはきっちり入っていたのだ。
当然、場はざわめき立つ。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:30:31.53 ID:um/f6yoU0
- ミ,,゚Д゚彡「お前もここに居るんだろう……」
ミ,#゚Д゚彡「三年の羽二屋ギコ!!!! 俺はてめえを叩き潰す!!!!」
「「「「「「ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!??」」」」」」
(;^ω^)「えぇぇ……?」
('A`)「マジで個人的じゃねえか……」
(`・ω・´)「本人はどこ行ったんだろう……」
_
( ゚∀゚)「あいつなんかしたのか?」
ブーンらのように騒ぎ出す群衆の一部と、今日のいつかのようにノリで反応するフサギコのサポーター達。
騒いでいるのがなぜ群衆というかたちで表現しているのかと言えば、名指しというのもでかいが、
学園の中でもさらに特殊な人間の一人であるギコは流石兄弟と頻繁に手合わせをしているのをよく見られており、
校風の影響からギコに試合を申し込む人間が多くなっていた。
なので知ってる人は知っている、といった感じに彼の名前はそこそこ知れ渡っているのだ。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:34:50.79 ID:um/f6yoU0
(,#゚Д゚)「聞こえたぞゴラァァァァァァァァ!!!!!!!!」
対する叫び声が聞こえたのは一般生徒達の右、フサギコの左側面。
何故か遠くでゆっくり上昇している彼は、冷や汗だらだらのまま吠えていた。
ミ,#゚Д゚彡「ギコォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」
マイクを捨て、フサギコも地声で吠える。
(,;゚Д゚)「うおぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
しかしそれ以上言葉を返すこともなくギコはそこから落ちていった。
ミ,#゚Д゚彡「第二演習場で待ってるぞゴラァァァァァァァ!!!!!!!」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:39:01.15 ID:um/f6yoU0
- ザワザワ
从 ゚∀从「んー、ていうか俺達は出られないんですね」
ザワザワ
( ^ω^)「一年は屋内競技場でモニター観戦だお。つまんないから覚悟した方がいいお」
ザワザワ
ススス((( <●><●>)「それでも出る私です」
ザワザワ
ミセ;゚ー゚)リ「うわ、いたんだ」
ザワザワ
(*‘ω‘ *)「勝手にでるっぽ!」
_ ザワザワ
( ゚∀゚)「やめとけ。俺らぶっとばされたぞ」
ザワザワ
('A`)「いやな思い出だ……」
ザワザワ
ξ゚听)ξ「あなた達が悪いのよ。トイレの壁吹っ飛ばして逃げたからじゃない」
ザワザワ
( ´ω`)「だって出入り口はロマネスクが監視してたんだお……」
_ ザワザワ
( ゚∀゚)「んまー、そういうことだからやめとけ」
ザワザワ
(;<●><●>)「嫌なんです!!」
ザワザワ
(`・ω・´)「ワカッテマスだっけ? 君、キャラ間違えてない?」
ザワザワ
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:42:59.20 ID:um/f6yoU0
- ミ,,゚Д゚彡「気を取り直して! 腕章配るぞゴラァ!! 並べ!!」
―――ここから二千人強のザワザワ―――
ノハ*゚听)「血が滾るゥゥゥゥゥ……!」
川 ゚ -゚)「ヒートはシャキン達の作戦には乗らないのか?」
ノハ*゚听)「私もなんかやるぞ!! 街をぶっこわす機械を置きに行くんだ!」
川 ゚ -゚)「ぶっこわすって………」
ノハ*゚听)「なになになに?」
川 ゚ -゚)「なんでもないぞ」
≡ノハ*゚听)「またまたぁ!」
川 ゚ -゚)「いやホントになんでも……おい抱きついてくんなこのやろ」
( ・∀・)「おっと珍しい光景だ」
ドシュウッ =≡三 lw´*‐ _‐ノv「しゃなー!」
ノハ*゚听)「シュー! なんだそのきもいお面は!」
川;゚ -゚)「だからおまえら抱きついてくるなって言ってるだろ!」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:46:48.68 ID:um/f6yoU0
- ('(゚∀゚*∩「鈴木先輩ハアハア」
(<_ )⊂( ´_ゝ`)「目の保養、目の保養、目の保養………」
('(゚∀゚∩「兄者! あっちに鈴木先輩だよ!」
(<_ )⊂( ´_ゝ`)「なぜだろう。美人を見ると落ち着く……」
('(゚∀゚∩「何かあったのかな?」
(<_ )⊂( ´_ゝ`)「わからん。俺の脳には高性能なウイルスバスターが入っていてな……」
('(゚∀゚∩「すごいよ!」
(<_ )⊂( ´_ゝ`)「でも同時に何かを失ったみたいなんだ……」
('(゚∀゚∩「いつか思い出すよ! 削除しても磁器は残ってるのと一緒だよ!」
(<_ >⊂(;>_ゝ<)「ぬうぅああぁっ!!」
('(゚∀゚;∩「どうしたんだよ!」
(<_ )⊂(;´_ゝ`)「なんでもない……これはきっと……俺の記憶のエラーだから………」
('(゚∀゚∩「………脱衣」ボソッ
(<_ ;'; ブチッ >⊂(;゚_ゝ゚)「うああああっ!!!!」
('(゚∀゚;∩「やっぱりあれ見たんだ……過去の犠牲者と症状が同じだよ……」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:50:39.76 ID:um/f6yoU0
- しばらくして、
(,;゚Д゚)「ハァ、あっぶねえ! 腕章受け取んねえと話にならねえじゃねえかロマネスクめ!」
(*゚ー゚)「気付くの遅いよねー」
(*゚∀゚)「ハインみっけた!」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、先輩達といたのね。てっきりぼっちになってるのかと思ってた」
从 ゚∀从「うっせーな、でもお前より友達居るもん。な! ちんぽ!」
(;*‘ω‘*)「ちんぽ言うなっぽ! お前が言うとアウトだっぽ!」
从 ゚∀从「固いこというなちんぽ!」
(*‘ω‘ *)「……固いちんぽ、っぽ!?」
( <●><●>)「あなた達が最低なのはわかってます……」
(*><)「ハァ、ハァ、ハァ……一年みんなでお店周りに行くんです! まだいろいろやってるんです!」
( <●><●>)「お前どこから……? いやそれより、一年だけとなると私だけ浮くんですが……」
(*゚∀゚)「ワカッテマスは見えないからだいじょぶ!!」
(;<●><●>)「な、なにいってんだコイツ……ひどくないかソレ……」
合流した一年組はどっかいった。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:54:39.08 ID:um/f6yoU0
- ( ^ω^)「お、ギコ!」
(,,゚Д゚)「おう」
(`・ω・´)「なんで名指しで喧嘩売られてるんだよ」
(,,゚Д゚)「さあな………イカれてんじゃねえか……?」
腕章配りもそこそこ人数が減ってきたのでブーンらも並ぶことになった。
実行委員はこれだけの人数に対して40人ほどしかおらず、配る時間が掛かるのは仕方のないことだ。
複数受け取る生徒を防ぐために学生証の提示も義務付けられているので、それはもう大変な作業である。
ミ,,゚Д゚彡「オラオラさっさと来いや!」
その中で、口調は乱暴だがなんだかんだで作業を素早く行うフサギコ。
ミ,,゚Д゚彡「おまえら鈴木の前に並びすぎだぞゴラァ!! 俺の前微妙に少ねえだろ!」
このように周りを見渡す余裕もあり、作業の効率化を図ることもできる。
こういった点では人の上に立てるだけのものは確かに持っており、
先のさわぐサポーター達の例もあるように、そこそこの人望もある。
さらに言えば器用な彼はこのようなことに限らず、ある程度の水準を保ったままなんでもそつなくこなせる人間なのだ。
(,,゚Д゚)「学生証です」
ミ,,゚Д゚彡「明日、必ず来いよ」
(,,゚Д゚)「……次が詰めてきてますよ」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 21:59:00.51 ID:um/f6yoU0
- ミ,#゚Д゚彡「……」
―――苛立った。
ミ,,゚Д゚彡「……」
しかし今は私情を挟むべきではない状況だとわかっている。
優先順位は決まっている、余計なことに時間を割かれるわけにはいかない。
ミ,,゚Д゚彡「次、どんどん来いやゴラァ!」
今は冷静に物事に当たるのだ。
爆発させるのは明日。
昔と変わらない苛立ちをぶつけるのは、明日でいい。
/ ゚、。 /「……」
そんな彼を見つめていたのは、過去から今までの四年ほど、側で並び立っていた女性。
ミ,,゚Д゚彡「ん? おいダイオード! 手ぇ止まってるぞゴラァ!」
/ ゚、。 /「あ………すまない」
最近やたらと苛立つ彼に対し彼女も思うところはあったのだが、
同時に、これは死ぬまで言うこともない言葉であると感じていた。
彼の憤慨の理由は、自身が口を出せない領域のものであると理解していたから。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 22:02:56.32 ID:um/f6yoU0
- ブーンらの配布も終わり、ようやく人の山から抜け出した一同。
( ^ω^)「ふ〜、やっと終わったお」
( ・∀・)「これからどうする?」
_
( ゚∀゚)「もうちょい回ってくか」
( ^ω^)「だおー。適当に回るおー!」
ξ゚听)ξ「私ブーン達についてくね。目的あるわけじゃないし」
ミセ*゚ー゚)リ「わたしと食べ歩く人はー?」
lw´‐ _‐ノv「おいらは米八合までなら入る胃だぞ」
ノハ*゚听)「私もいくぞ! 食での前哨戦だ!!」
(`・ω・´)「僕らは最終確認だな」
川 ゚ -゚)「シャキン達は大変だな……手伝えることはないか?」
('(゚∀゚∩「だいじょぶだよ! 気持ちだけでうれしいよ!」
(*゚ー゚)「ギコ君行こー!」
(,,゚Д゚)「ああ……」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 22:06:28.80 ID:um/f6yoU0
- ざわざわと流れていく人の波に乗り、ブーン達もそれぞれで固まって流されていく。
そして人の掃けてきたグラウンドに残ったのは大した用もない男だった。
('A`)「あっ、流れに乗れなかった……」
( ´_ゝ`)「……はっ!」
(´<_` )「……おっ!」
('A`)「いたのかおまえら……」
( ´_ゝ`)「意識がとびとびになる!」
(´<_` )「ふしぎ!」
('A`)「……脱衣麻雀はどうだった?」
( _ゝ)(<_ ) ・・・
('A`)「把握」
グラウンドに崩れ落ちた二人を背に、ドクオは一人寮へと足を運んだ。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 22:10:45.78 ID:um/f6yoU0
- ニュー速南東にある物資倉庫。
この街唯一の駅に面したこの巨大な倉庫に置かれているのは、大きなコンテナなどが主だ。
ニュー速は内陸部におかれた街なので、ここから都市内部へ向けての輸送が生活の要になっている。
五万に届く数の市民の生活を繋ぐため、倉庫はとてつもなく広く、警備の疎かになる場所も少なくは無い。
上手くすれば数日ほどならコンテナの一角を生活スペースにすることも不可能ではない。
爪'ー`)y‐「俺が降格……?」
( ゚д゚ )「ああ、流石にブランクがありすぎるだろう。それに――」
暗闇で煙をあげる男がいるのは倉庫の隅で、黒の中にに小さな橙が覗ける。
爪'ー`)y‐「なら今の『削除人』は誰だ? 渋沢か?」
( ゚д゚ )「今は区分方法が変わったから厳密には『削除部隊』だが、俺だ」
爪#'ー`)y‐「なんだと……?」
籠ったような声をあげた男はタバコを一瞬で灰にした。
思いきり吸ったのではなく、それを持った指が発火したのだ。
灯った明かりは消え、二人の間はさらに暗くなる。
( ゚д゚ )「そう怒るな。お前はもうそれほどの力は無いだろう」
爪#'ー`)「ふざけろよ!! てめえごときが!」
( ゚д゚ )「やかましい。あまりさわぐと一日の潜伏もままならん」
爪'ー`)「なら明日、改めて証明してやるよ……」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 22:14:52.66 ID:um/f6yoU0
- ( ゚д゚ )「お前の仕事は決まっている。決められた施設を燃やすだけだ」
爪'ー`)「軽すぎるぜ。教師の一人でも殺らせろよ」
( ゚д゚ )「今のお前ではここの教師陣には勝てん」
爪'ー`)「ならてめえにも、てめえの下の奴でも無理だな」
片方はそこで溜め息をついた。
わざとらしく、「仕方のない奴だ」とも言いたげに。
( ゚д゚ )「……今回の俺達の目標は一つだ」
爪'ー`)「なんだ」
( ゚д゚ )「市長荒巻の殺害、方法は自由だそうだ」
爪#'ー`)「……」
突然黙った男から、ぱちりぱちりといった音がする。
( ゚д゚ )「どうした?」
爪#'ー`)「そりゃあこの俺を、てめえの陽動に使うってことか!?」
男の叫び声と同時に彼らの周囲に巻きつくように炎が発生した。
全てを燃やし尽くさんと、それは意志を持ったように詰まれたコンテナにもまとわりつく。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 22:19:26.42 ID:um/f6yoU0
- ( ゚д゚ )「お前では……それすら荷が重い……」
ほんの小さく呟く男はそれには動じず、ほとんど延焼していない安全地帯を的確に見定めながらその場を抜けていった。
爪'ー`)「はははははっ!!!」
笑う声は這いずり回る音に呑まれる。
それでも彼は止めようとしない。
爪'ー`)「俺は削除人だ!! 言われた仕事はきっちりこなしてやるよ!!」
爪#'ー`)「仕事の『ついで』がどこまでいくかは知らねえけどなぁ!!!」
焼け落ちてゆく倉庫をふらりと抜け、出た先には大きな駐車場。
爪#'ー`)「楽しくなりそうだぜ!!」
夜空に向け体を開き、体の奥底からぶちまけるように声をあげる。
炎を背負ったアスファルトの影は、右腕にあたる部分が肘から不自然に消失していた。
『祭り』は未だ、始まったばかり。
第十七話「さわぐ人たち」・終わり
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