( ^ω^)達の中だるみな一年のようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:22:20.15 ID:hV1WVrk40
第十八話「認識の相違」

祭りの勢いは収まることもなく、二日目の朝は滞りなくやってきた。
生徒たちは十時から始まるこの戦に備え朝からいろいろと忙しいようで駆けまわっている者もちらほらと。
ブーンらもそれの流れに漏れることはあらず。バタバタとした寮内の端、モララーの部屋にひっそりと集まっていた。

(`・ω・´)「みんなヘッドホンは受け取ってるよね?」

( ^ω^)「あとでツンたちに渡しにいくからそれで全員のはずだお」

('A`)「流石兄弟はどこだ?」

('(゚∀゚∩「十時過ぎたらすぐに正門で合流だよ!」
  _
( ゚∀゚)「しぃちゃんとシューとヒートに連絡した?」

(`・ω・´)「バッチリだよ。シューはちょっと意味わかんなかったけど」

( ^ω^)「じゃあそろそろいい時間だし、ツンたちと合流してくるお」
  _
( ゚∀゚)「だな」

ガチャバタン

( ・∀・)「いや……背中踏んでくなよ……」

(`・ω・´)「お前が悪い('A`)「氏n('(゚∀゚∩「早く起きればいいんだよ! いやむしろ死ね」

(;・∀・)「うお、なおるよまで……今回アウェー……?」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:25:56.14 ID:hV1WVrk40
現在時刻九時五十五分。

( ´_ゝ`)「さっそく俺らを睨みつけてる奴らがいるな」

(´<_` )「先輩方が来るまでの肩慣らしにはなるだろうよ」

学園正門に立ち並ぶのは二年最強の二人。
彼らの一人は開けた門のど真ん中で両手の得物をぶんぶんふるっている。
監視、もとい威嚇しているのは目視できる範囲で二十程で、二人が見知った顔もちらちら見受けられた。

( ´_ゝ`)「ったく馬鹿だよなぁ……強い奴は後に回すべきだろう? ボス的な意味で」

(´<_` )「手駒が多い時に厄介な奴を潰しておくのはシミュレーションゲームの鉄則だけどな」

兄者はそれを聞くと小さく嗤う。

( ´_ゝ`)「手駒、か……確かにこいつら、見る限りじゃただの『駒』だな。誰かが手引きしてんじゃね?」

(´<_` )「もう少しやり応えのある奴がいると考えていいな。顔を出すかは微妙だが」

(*´_ゝ`)「じゃあ、さっさと片付けようか! 今日は遊びは無しだぜ!」

(´<_` )「開始の合図は出ていないが、な!!」

弟者の声と同時に五人ほどの塊を向き走り出す二人。
その中心から驚いた顔が広がりを見せつつもそのまますぐに散開、一人を残して距離を取った。

( #´_ゝ`)「すんません! 俺の時計ズレてまして!!」

彼の無意味な言い訳は、間も無く鳴った巨大な音にかき消されることになる。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:29:33.71 ID:hV1WVrk40
(*゚ー゚)「シュー、ここでおっけー?」

lw´‐ _‐ノv「だいじょぶ」

第一運動場では二人の少女が背中を覆い隠すほどのリュックサックを背負い話している。
ちなみにこの場所はグラウンドの整備が大変だったりするので指定戦闘区域には入っていない。

(*゚ー゚)「この辺?」

lw´‐ _‐ノv「いいんじゃないかな」

せり上がったこの場所は学園を見渡すには丁度いい場所で、
校内新聞の発行のために大きな写真撮影器具を運び込んでいる者達も見られる。

(*゚ー゚)「スピーカー入れて放置でいいのかな?」

lw´‐ _‐ノv「いいって書いてる。んじゃ私はここで高みの見物といこうかね」

やたらゴツイ双眼鏡を取り出すシュー。彼女の趣味は動物の観察なのだ。

(*゚ー゚)「あたしもいいかな。乱戦は危ないから好きじゃないし」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ私と米談義だな」

(;゚ー゚)「え………やっぱ行こうかな……まだ始まってないからセーフのはず……」

呟いたしぃの背後では、カラフルな腕章をつけた生徒達が大きな筒に火を灯そうというところだった。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:33:09.87 ID:hV1WVrk40
('、`*川「ほらみなさん静かにー!」

屋内競技場には中等部一年がすし詰め状態で縛られている。
実際のところ、すし詰めになるのは最初に全員がまとめて集まった際の注意事項やらの時だけだ。
巨大なこの競技場は大きな体育館が三つ入っており、
そのほかトレーニングルームの類も充実しているので人数の問題には到底なりえない。

( <●><●>)「参加したいですね……」

(*‘ω‘ *)「ぽ……」

先程のペ二サスの声は無視される一方で、一年生はなかなか落着きが無い。

从 ゚∀从「あ、みっけた」

(*゚∀゚)「なー、話終わったら自由だし闘技室行こうぜ! ハインが許可もらってきたって!」

( <●><●>)「先輩から許可証借りてきたのですか? まあいいですね、行きましょうか」

(*‘ω‘ *)「やるっぽやるっぽ!」

ざわめきは収まることを知らず、注意の声は届くこともない。

('、`;川  (ここの監視で生徒を止めなきゃいけないのは私とロマネスク先生なのに先生はいないし……
       っていうか一般の先生方の注意みんな無視するしどうしたらいいんだろう……
       あ、でも静かにさせる必要もないのかな? もう注意事項終わったから私達は出入り口を塞げばいい?
       ロマネスク先生は『出入り口以外も重要である』とか言ってたけど私は経験が無いから任せちゃお……)

ペ二サスが手首の時計を眺めると、時刻は九時五十八分前。予定通り、ふっ、とここの体育館の電気が消える。
彼女が暗さに慣れない目で周りを見れば、観戦用のモニターの準備に取り掛かっている人がいるようであった。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:36:34.22 ID:hV1WVrk40
ノハ*゚听)「とぉーりゃんせぇとーりゃんせー♪」

赤の髪を揺らしながら上機嫌で歩くヒート。
彼女の首には大きなヘッドホンが掛けられ、左手にはこれまた大きめの機械が携えられている。

ノハ;゚听)「なんかよくわかんないんだよな……とりあえずいじらないで置いてけばいいんだよな……」

彼女はシャキンに渡された機械の用途がよくわかっていなかった。
それ以前に彼らが何をするかをちゃんと聞かされていなかったのだ。
『妙な音が聞こえたら渡したヘッドホンをつければだいじょぶ』。これだけである。

ノハ;゚听)「私馬鹿ではないつもりなんだけど………まさか信頼されてないの?」

ヘッドホンをつけながらヒートは呟く。
そして持ってきた機械を封鎖された交差点のど真ん中に放置。

すると間も無く、突然建物の陰から複数の学園生が現れてきた。

ノパ听)「なんだろ……音ちょっと聞こえづらい……」

彼らはヒートに向けて何かを言っているのだが、ヘッドホンから流れ続けるノイズのような音に阻まれる。

ノハ*゚听)「ま、いっか。かかってきなよ!!」

ヒートは腰の刀を抜き、構えた。ちなみに刃はついていない。

ノハ#゚听)「とーりゃん、せっ!!」

最初の一歩を全力で踏み切った少女はさながら赤の閃光のよう。
交差点に居た複数の学園生達は妙な掛け声を聞きながら、予定していた作戦ごと蹴散らされることになるのだった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:39:38.30 ID:hV1WVrk40
(,,゚Д゚)「うお、人多いな」

ギコが向かっているのは先日実行委員長に指定された場所だ。
彼自身が「待っている」と言っていたので、そこに本人が居ないなんてことは無いだろう。

しかしながら彼が持っているのはボーナスリング。
大勢の前で居場所を宣言してしまっている以上、それを狙う人間が居ない筈もないのだ。

/ ゚、。 /「はーい、並んでくださーい。最初は僕が相手だよー」

そんな第二演習場の前で大きく手を振っているのは実行副委員長の女。
事前に対応する準備をしていたのか、整理券を配っているようだ。

(,,゚Д゚)「待たせてたら入り口で潰し合いになるじゃねえか……」

それも考えの内だろう、と内心で納得したギコは、例に漏れず列に並ぶことにした。

/ ゚、。 /「あ、羽二屋君は入ってもいいですよー」

(;,゚Д゚)「マジすか……」

なんというえこひいき、と思う。
しかしこのままでは視線に殺されそうだったので、ギコは後ろを振り返らずに中に入ることに。

ギコがその場から消えると、主に男の怒声が上がった。それを皮切りに、割れんばかりの文句と罵倒に溢れる。
例え相手が『みんな大好き鈴木さん』でも、成績がかかっている以上、あの待遇に文句を言わざるを得ないのだ。

/ ゚、。 /「文句があるなら、全員まとめて相手になるよ」

それに対し彼女は、深い理由もなく場の者達を一人づつ見やった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:42:45.17 ID:hV1WVrk40
( ^ω^)「なんで居ないんだお……」
  _
( ゚∀゚)「始まっちまうぞ……」

間も無く開始の合図である巨大な花火がブチあげられる時刻。
しかしブーンとジョルジュはほとんど人の居ない技術局への道に佇んでいた。
この場所は祭りの指定範囲ギリギリの位置であり、技術局に用のあったミセリ達との合流地点。

( ^ω^)「ふぬぅぅぅ……」

右手にある小さな白の四角い機械を眺めるブーン。
もちろん彼らはこのような連絡手段は持っていて、それの使用をしなかったわけではない。
対象からの反応がなかった、それだけのことだ。
  _
( ゚∀゚)「作ってる途中の変な機械で電波悪くなってるとか?」

( ^ω^)「今時期はもう特に作ってないと思うけど……」

技術局はあくまで生徒のための開発を行っているのであって、そのような強力なものは作らない方針なのだ。
その例外を挙げるとすれば、ミセリの簡易パイルバンカー程度。
あの武装もすぐに学園側から制限をかけられることになったが。

と、
  _
( ゚∀゚)「!!」

( ^ω^)「始まっちゃったお……」

空に響いてきたのは連続的に続く大きな爆発音。
それが二日目の始まりであることはもう言うまでもないだろう。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:46:19.09 ID:hV1WVrk40
その場でそわそわし始める。
範囲ギリギリにいるので誰かがやってくることは無いだろうが、
時間は無限ではないわけで好戦的な二人は落ち着けない。
  _
( ゚∀゚)「どうする?」

( ^ω^)「どうするって……待つしかないお」

黙って突っ立ってるのも忍びないので端末をいじくりまわす一人。
  _
( ゚∀゚)「おいおい、今日は快晴みたいだな、降水確率ゼロだとよ」

( ^ω^)「そんな呑気な……」

その声に釣られ、なんとなく空を見上げるブーン。

快晴とは、雲一つ無い青空のことを指す。
厳密に言えば空全体の90パーセント以上が青であること。

だが彼が見た方向の空は、あまりに汚らしい灰色の雲が見えた気がした。

( ^ω^)「ジョルジュ……」
  _
( ゚∀゚)「んー」

端末をいじっている彼は気付いていない。
雲は徐々に空へと広がりを見せているのにもかかわらず。

( ^ω^)「……多分、火事だお」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:49:32.35 ID:hV1WVrk40
ブーンの声に反応し、すぐに顔をあげるジョルジュ。
煙は徐々に大きさを増して立ち昇り、その下に位置する場所がいかに燃えているのかと。
それは少なくとも、すぐに鎮火できるものではないことが容易に想像がつくものだった。
  _
( ゚∀゚)「走るぞ」

( ^ω^)「だお!」

二人は駆け出した。
煙の下に誰が居るのか忘れるはずもない。
最悪の場合など考えたくもないのだ。

端末を取り出し、走りながら最初から登録されている通信IDに合わせた。

( ^ω^)「……?」
  _
( ゚∀゚)「どうした?」

(;^ω^)「通信ができないお! なんかバグってるお!」

耳にあてたスピーカーからは雑音が溢れ出し、鼓膜を劈いた。
こんなことは在学中今まで一度もなく混乱する。
  _
( ゚∀゚)「どうなってんだよ!」

ジョルジュも端末を操作し耳に当てるが、やはり聞こえるのはノイズであった。

(;^ω^)「これじゃ消防が!」
  _
( ゚∀゚)「ちっ、とりあえず行くしかねー!」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:52:46.26 ID:hV1WVrk40

爪'ー`)y-「ったく、やっぱつまんねえ仕事だ……」

一部が欠け、全てが炎上している削除対象。
燃える様相は見ることはしない。そんなことは瓦礫に座る男には関係がなかった。
彼の今回の仕事は放火、それだけだったのだ。

今まで何度も何度も何度も燃やし続けた彼には、物を間接的に燃やし壊すことなど何の感慨も湧かないことだ。
中の人間が死のうが、中にどんな重要な物が置かれていようが、あるいは中に何も無かろうが。
彼が「物」を燃やすということに関して言えば、全て皆等しく感じる、味気のないものなのだ。

爪'ー`)y-「どこ行くかねぇ……場所被るのは勘弁……」

タバコを咥えたまま俯く。
ミルナからは他の削除部隊の情報は聞かされておらず、場所と時間の指定のみを伝えられた。
これでは気持ちよく動けない。組織と言うものはいろいろ面倒である。

爪'ー`)y-「はぁぁぁぁぁ……」

口の横から漏れる煙。

爪'ー`)y-「あ、そうだ……ちょっと待ってみるか……」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:55:53.35 ID:hV1WVrk40
(;^ω^)「う………」

案の上目的地は燃えていた。
二人はそこで大きな炎の右側に位置する瓦礫に座る男を見つける。
紅色の、何故かスーツに身を包む男。

爪'ー`)y‐

そこにはいつか見た横顔がある。少し色が悪く、枯れ木のような肌になっていたように見えたが、確かに。
あれから十年近くの時間が流れ、もうほとんど記憶の底に埋まったものだ。
姿はほとんど変わっていないといえるが、あの時より少しだけ襟足の伸びた長髪が揺れていた。

(;^ω^)「あいつは……」
  _
( ゚∀゚)「………」

ブーンが呟くと同時にその男は俯いた。
まだこちら側には気付いていないようだ。

(;^ω^)「どうして……いつ……なんでここに……」

ブーンの疑問は尽きない。

ならばあいつが技術局を燃やしたのか、と。
あそこには人が居たのに、何人も、何十人も、ツンやミセリ、クーも居る、ハローさんだって居る、と。
どうして、どうして、どうして、二度と会いたくなかった、あいつは、あの――
  _
( ゚∀゚)「おい落ち着け、よく見てみろ」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 19:59:10.59 ID:hV1WVrk40
ブーンの肩を掴み、ジョルジュが指したのはフォックスの反対側、瓦礫が非常に飛び散った方だ。
そちらには十数人ほどが瓦礫に、数人が燃える建物に向かって動いているのが見えた。

( ^ω^)「人が居るお……」

なんとか自分を取り戻したブーン。
握っていた手に血がゆっくりと通っていくのが感じられた。
  _
( ゚∀゚)「お前はあっちに行って来い」

( ^ω^)「それは、どういう意味だお」

お前は、という言葉にどうしても引っ掛かったのだ。
ここで理由を聞かないわけにはいかない。
声は小さく、フォックスの視界の端で目立つようなことにならないよう、ゆっくり移動しながら聞く。
  _
( ゚∀゚)「瓦礫を吹っ飛ばしてこい。俺は注意を引く」

(;^ω^)「あいつはまだ気付いてないお……そんなことする必要無いお」
  _
( ゚∀゚)「まだ、だろ。いいから行け」

既にジョルジュはフォックスから目を離していない。
一方的に言い切り、ジョルジュはそこに向かおうとしているのだ。

(;^ω^)「バカ言うなお………僕の爆破だって燃えてる音でわからないお……」
 _
( ゚∀゚)「行けつってんだ。あっちは俺じゃ駄目だって、わかってるだろ?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:02:15.08 ID:hV1WVrk40
―――そういう問題じゃない。

( ^ω^)「……殺されるお」
  _
( ゚∀゚)「親父は殺されなかった。いや、死ななくて済んだ、かな」

あれは、本当にたまたまじゃないか。
僕が、たまたま、事故を、起こしただけじゃないか。
今回は違うだろう、通信もできないし、助けがすぐに来るなんて思えない。

( ^ω^)「ダメだお……」

止めなくちゃいけない。
僕の手の届く筈の距離で、もう人は死んでほしくない。
瓦礫の、下に、なってる人、も、たすけなくちゃ、いけない、

(;^ω^)「ぅ、たすけなくちゃ……」
  _
( ゚∀゚)「大丈夫だ、俺の火傷はすぐに治る。前に見ただろ」

待ってくれ、話を、
  _
( ゚∀゚)「できるだけそっちは向かせねーように逃げるから」

待ってくれよ、どうして、行っちゃうんだ。

(;^ω^)「ジョルジュ……!!」

ああ、あいつの顔を見てしまった。もう僕がその足を止めることなんて、できるわけがない、じゃないか。
だったら僕は、できる限りのことを。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:05:42.37 ID:hV1WVrk40
川;゚ -゚)「ブーン!」

髪と制服が煤で汚れている。よかった、クーは大丈夫そうだ。

(;^ω^)「よかった、無事かお!」

川;゚ -゚)「私達は大丈夫だ。下ですごい炎があがったらしくて、咄嗟にハローさんが壁ごと壊してな」

ハハ;ロ -ロ)ハ「人為的なものだとはわかったのにね……焦ってちょっと事故っちゃった」

顔に張り付いた髪は彼女の汗によって濡れているのがよくわかる。

(;^ω^)「ハローさん腕が血だらけで……」

それもそのはずだ、彼女の白衣の右腕部分は真っ赤に染まっている。これは、裂傷だろうか。

ハハ;ロ -ロ)ハ「いいから……私にも準備がある……あっちに行ってて」

(;^ω^)「わかりましたお!」

目に入った人に覆い被さる瓦礫をいくつか吹き飛ばした。
中には明らかに重症の人もいて、爆破の衝撃に苦痛の声をあげた。

(;^ω^)「全然人が居ないお……」

200人ほどの技術者を抱えている筈なのだが、今確認できた人たちは30人ほど、見ていないのも数人程度だろう。
それほどの人たちが焼かれていったのだと考えると……やはり、黙ってはいられない。

(#^ω^)「く……!」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:08:59.30 ID:hV1WVrk40

ミセ;゚ー゚)リ「ブーン!」


振り返った。ミセリの声だった。
そこはさっき僕が居たところじゃないか。


( ^ω^)「なんだお!」


大声にならない程度で。


ミセ;゚ー゚)リ「はやく! ツンよ!」


( ^ω^)「え……」


ツンが居たのか、気付けなかった。
あっちはすぐそこまでの距離。
でも走った。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:12:21.17 ID:hV1WVrk40
ξ;゚听)ξ「私は後回しでだいじょぶだったのに……」


張り出した建物の壁で見えていなかったようだ。
二房に髪を結った少女は苦しそうな顔で、両足を、瓦礫、に、挟まれていたのに。


(;^ω^)「――!」


一瞬、よぎった。


(; ω )「う………」


時間がないのに。
その場で自分に負けてしまった。

耐えなければ。
それは今じゃなくていいだろう。

僕はここに何をしに来たんだ。
吐くな、耐えろ。
僕はもう何もできない豚じゃないだろう。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:15:38.22 ID:hV1WVrk40
ξ;゚听)ξ「どうしたの!?」

心配そうな声だ。
まず、自分の心配をしてくれ、その足、無事じゃないだろう。
重なるから、やめてくれ。

(  ω )「ぇ…………」

喉が痛い、でも気にしてる余裕なんてない。
口に残った吐瀉物も吐き出し、彼女に駆け寄った。

( ^ω^)「ちょっと、我慢してくれお!」

しゃがんで瓦礫を下から斜めに爆発させた。
小さく持ち上がったところにすぐ腕を差し込み踏ん張って、支点を地面に。
そこから瓦礫の横を数個の火薬で吹き飛ばした。

ξ;--)ξ「っ!」

痛そうな足、痛そうな声。もう、見ていられない。

(;^ω^)「右足は折れてるお。応急処置は……」

ミセ;゚ー゚)リ「見えた分集めておいたから! ブーンもクーと他の人の処置をして!」

ミセリは僕に箱を突き出した。何度も使ってきた応急箱だ。
ありがたい、少し気を他に回せる。

( ^ω^)「わかったお!」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:18:56.75 ID:hV1WVrk40

( ^ω^)「クー!」

クーは白衣の男を支えていた。それは先程、僕が救出した人で唯一の重傷者。
動ける傷で済んでいる人は彼に目もくれず、建物から機械やらゴテゴテしたものを引っ張りだしていた。
おそらく、『そういう』方針なのだ。彼らの頭に血が上っているはずもない。

川;゚ -゚)「それは?」

彼女の横に滑り込むようにし、白い箱を開いた。

( ^ω^)「応急箱だお、止血を頼むお」

卅 ゚ -゚)川 ゚ -゚)「「わかった」」

分裂したクーは手際良く応急処置を始めた。
もともと一人だ。だったら呼吸が合い過ぎるほどの二人のはず、これでは僕が手伝う方が邪魔だろう。
そうなればもうここでできることは少ない。

だけど、すぐに離れるわけにはいかない。
この人は腹からの大出血で意識が飛びそうになっている。
僕は手を握って、せめてもの励ましをしなければ。

(;^ω^)「頑張ってくださいお!」

たのむから、がんばって。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:22:08.19 ID:hV1WVrk40
こちらは少し前、ブーンの声を無視したジョルジュ。
  _
( ゚∀゚)「おい狐」

爪'ー`)y‐「あ?」

フォックスはジョルジュの声を受けると、いかにも重そうに頭を持ち上げた。
二人は目を合わせ、数秒の間沈黙する。

爪'ー`)y‐「……ん? 学生、だよな?」

不思議そうに交差した視線を逸らし、タバコを吸いこんだ。
先端が赤く燃え、ちりちりと灰になる部分が増えていく。
  _
( ゚∀゚)「お前、俺を覚えてるか?」

爪'ー`)y‐「はぁ? 知らねえよ、こっちゃずっと水槽の中だ」

発言の通り、DATに居る間彼は拘束のため水の中に縛られていた。
考えることもせず、しかし意識は保たれたまま。
  _
( ゚∀゚)「長岡だ、てめえの最後の仕事に立ちあってやった」

爪'ー`)y‐「んー……? …………あれか? クソガk――」

爪#'ー`)「……あのガキはどこだ、殺してやるから出せよ」

タバコは彼の背後の火の山の捨てられた。
それは怒りを露わにするフォックスに対応するように瞬時に燃えていく。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:25:15.53 ID:hV1WVrk40
先程から、フォックスを見掛けても、技術局の人間が負傷していても、そしていまこの状況でも、
感情の色をほとんど見せないジョルジュはゆっくりと、小さく口を開いた。
  _
( ゚∀゚)「ガキはもう、その時に死んだんだよ。お前に礼をしてやる」

彼は機械的に、浮かんできた言葉を文章的に羅列した。
感情に流されて言ったものかはわからない。普段通り、記憶からサルベージしてきたものをベースとしてのものなのだ。

爪'ー`)「んだよ、死んだのか。で、お前は何しに来たよ?」

『ジョルジュ長岡』として何を言うべきか、何をするべきか、どう振る舞えばいいのか。
半分は無意識的ではあるが、もう半分は自分で意識的に作り出してきた結果の今。
既に握られていた拳の意味は、一拍遅れた間をもって理解した。
  _
( ゚∀゚)「お前に復讐するって伝わらなかったか? 頭つかってねえから脳も狐並みだな」

爪'ー`)「たまたま出くわしただけだろ。そんなに早く察知できる筈がねえ、俺を特定して復讐しようなんざ不可能だ」
  _
( ゚∀゚)「偶然てめえに会ったからって復讐したいのは変わらねえだろ」

爪'ー`)「ま、それはあるな。面白いじゃねえの」
  _
( ゚∀゚)「覚悟しやがれ」

爪'ー`)「ガキ一人殺すのに、そんなもんは必要ねえよ」

ようやく立ち上がるフォックス。
同時に彼から立ち昇るのは、やはり炎だった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:28:29.49 ID:hV1WVrk40
  _
( ゚∀゚)「一発、殴らせろ!」

ほぼ距離を置かずに立ち会った二人。
先に攻めの意志を見せたのはジョルジュだった。

爪'ー`)「いやだね」

振り込んできた体に対して左手をかざす。
炎が掌から立ち上り、迫ってきたものを逆に殴りつけるように襲いかかった。
  _
(  ∀ )「き、くかよ!!」

腕からブレザーは瞬時に燃え去ってゆき、残ったのは鉛色の上半身。
溶けた繊維が貼りつこうが、硬化しきれていない髪が焦げ付こうが、その体は止まらなかった。

爪'ー`)「根性だけは認めてやる」

炎の壁を突き破ってきた体はやはり怯んでいたのか安定していない。
フォックスは視界を奪った隙をつき、すれ違うように立ち並んだ。
  _
(#゚∀゚)「ああ!!」

ジョルジュは突っ込んだ勢いを逃がさないよう、そのまま腕を振り切る。
そこには当然、誰も居ない。

爪'ー`)「親父にそっくりだな。これでお前は死ぬぜ」

声を聞きながら、ジョルジュは自分の視界が空を向いていることに気付く。やはり、空は青かった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:31:42.83 ID:hV1WVrk40
力を込めて踏ん張っていた片足の裏を蹴り払われ、顎にはしゃくりあげるように腕が叩きつけられていたのだ。
硬化中の一瞬の打撃など取るに足らないものだと考える彼には、対応しろという方が厳しい。

爪'ー`)「おらっ!」

倒れた際、小さく空いた口に拳を突き入れるフォックス。
ジョルジュは顎が外れる音を感じ取ってしまい、さらに激痛が走るのを耐えた。
相手の全体重が喉に届きそうになり、吐き出す余裕も見つからない。

爪'ー`)「焼死と窒息、選びやがれ!」

全身のすべてを硬化しなくてはならない。
体内に火を放たれたらそれこそ即死。
だが、これも時間稼ぎにすらなるかどうか。
  _
(  ∀ )「――!」

考える瞬間はほぼ与えられない。
ジョルジュの体内にどろりとしたガスのようなものが吹きこまれた。

爪'ー`)「ガキ! 窒息のほうが辛いぞ! お勧めは焼死だぜ!」

―――いっぱつ、なぐらせろっての。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:35:11.82 ID:hV1WVrk40
  _
(  ∀ )「…………」

拳の硬化だけ解いて、フォックスの手首、動脈のあたりならいい。掴んだ。

爪'ー`)「その体制からじゃ崩れねえぞー」

つまらなそうに言いやがって。
  _
(  ∀ )「……」

爪を指し込む。
少しでいい。

爪'ー`)「くくく、子供の喧嘩かよ」

笑ってろ。
手の硬化操作なら死ぬほどやってきたんだ。
  _
(  ∀ )「――!!」

伸びろ、少しでいいから伸びてくれ。
俺の、爪。

爪'ー`)「……いてえな」

よし。
殴ってやる、必ず。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:38:25.65 ID:hV1WVrk40
一旦転がるしかねえ。
離れるのは正解じゃねえだろうが。

手首から血を噴き出しながらフォックスは手首を舐めた。
俺の力もまだ捨てたもんじゃねえかもな。

爪'ー`)「伸ばせるのかよ、めんどくせえなぁ」

まだ笑ってやがる。
こいつ、やっぱり遊んでんのか。
  _
( ゚∀゚)「………」

顎はめ、て、っと。
口、いってえな畜生。
  _
( ゚∀゚)「ああ、使いどころは少ねえけどな」

ハッタリだ。伸ばせる、とは言っても他と比べてほんの少し。
はっきり伸びきるのを確認する前にあいつが手を離したのが助かった。
傷に無関心な奴なら、死んでた。

爪'ー`)「くははははっ! なかなか死なねえ奴は好きだぜ! 神種でも死ぬ奴はすぐ死ぬからな!」

俺とは遊んでただけの癖に、よく言いやがる。
  _
( ゚∀゚)「うるせえんだよクソ野郎が!」

遊びの内に、殴らせろ。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:41:45.39 ID:hV1WVrk40
爪'ー`)「瞬発力でも測ってやろうか!」

やはり距離を取ったのは間違いだったか?
フォックスは地面に左手の五指を突っ込んだ。
いや、何かを仕掛けるとしても、ラグがあるはず。
  _
(#゚∀゚)「ああああ!!」

ぶん殴ってやる。
一発でいい。俺が納得できる一発で。

爪'ー`)「はははは!! 遅ぇよ!」

後二歩で足りた。
でも、
  _
( ゚∀゚)「くそ!!」

俺の足元は陥没し、下から炎が飛び出してきた。
深い穴だ、膝までめり込んだ。こいつは炎で掘ったのか。

爪'ー`)「逃げるか? 避けるか? とりあえず、諦めんなよ?」

土から指を抜いて手を俺に向ける。
直撃だろうが関係ねえ、突っ込む。
  _
(#゚∀゚)「効かねえっつってんだろうが!!」

土が緩くなってるが関係ねえ。
足を抜く、ここは陥没しない、踏み込める。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:44:57.04 ID:hV1WVrk40
  _
(;゚∀゚)「っ!!」

頭に何かにぶつかった。勢いはある。
炎を出すだけじゃねえのか、厳密には炎じゃねえのか。

爪'ー`)「はははは! アホみたいに当たりやがったぜ! 狙ってんのか?」

土かよ、撃ち出したのか。
くだらねえ。
  _
( ゚∀゚)「そんなもんかよ!」

さらに踏み込む。
意図はわからねえが、まだ殴るチャンスはある。

爪'ー`)「こんなもんで十分ってこともわかんねえのか!?」

フォックスはしゃがみ、左手をまた土に指し込んだ。
右手はどうしたんだ、使わねえ気かこいつ。
  _
( ゚∀゚)「うおおおおおっ!」

ちっせえ土なんざ効かねえ。
俺がコイツに負けるとしたら、さっきみたいな窒息しかねえはずだ。

爪'ー`)「瞬発力は不合格だなあ!!」

何故かは知らん、あいつは体勢を変えてねえのに。
いきなり足元から盛り上がった土の塊が何個も飛んできて、俺の体を持ち上げた。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:48:10.14 ID:hV1WVrk40
  _
( ゚∀゚)「……」

衝撃は重いが、深刻なもんじゃねえ。
だが近づけない。これじゃ全く。

爪'ー`)「次はどうするよ!?」

あいつが救助するための時間稼ぎは十分に出来てる。
もう本気で走れば逃げ切れるだろうが、俺がダメだ。
せめて一発、こいつから、一発を。
  _
( ゚∀゚)「おい!」

爪'ー`)「どうしたー?」

チャンスはねえのか。
  _
( ゚∀゚)「俺を殺してみろよ!!」

爪'ー`)「はぁ? めんどくせえよ」
  _
( ゚∀゚)「その調子じゃ俺に負けちまうぞ!」

爪'ー`)「言ってろ言ってろ。挑発に乗るとでも思ってんのか?」

乗ってくれたら、としか思ってねえよ。
でも、これしかねえ。
この調子じゃキリがねえんだ。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:51:30.41 ID:hV1WVrk40
  _
( ゚∀゚)「てめえ削除人なんだろ!? なんでこんなしょっぱいことやってんだ!?」

爪'ー`)「………ん?」

これは、
  _
( ゚∀゚)「こんなもん、お前じゃなくてもできるだろ!」

爪'ー`)「………お……」

当たりか?
  _
( ゚∀゚)「狐火が聞いて呆れるぜ!!」

爪'ー`)「ったく、やっと来たかねぇ」

無表情のフォックスがこちらに歩いてきた。
それは一体、どういう意味だ。

ほぼ考える間もなく、幾つもの黒の柱のような槍が技術局の炎を壁ごと突き破った。
  _
( ゚∀゚)「!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「軌道確認できましたね?」

(-_-)「それでは行きましょう。弔いとは言いません」

突きぬけた壁の向こうにはボロボロの白衣の連中だ。
あれは技術局、か。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:54:41.06 ID:hV1WVrk40
ハハ ロ -ロ)ハ「君、狐を逃がさないでくれてありがとう」

眼鏡の女が俺に礼を言ってきた。
俺はあんたのためにやってたわけじゃねえ。

(-_-)「まさかこちらに攻めてくるとは思いませんでした、意図が分かりかねる」

爪'ー`)「くくく、気分転換には丁度いいぜ! 人数は揃ってるか!?」

人数は、ってどういう意味だ。
それよりもあの野郎、この様子じゃ俺の言葉なんて全然通ってねえじゃねえか。くそ。

ハハ ロ -ロ)ハ「迅速に排除して報告に行きましょう」

(-_-)「そうですね。近距離での通信しかできない以上、こいつには話を聞く意味もない」

女は巨大なバズーカみたいな物を担いでいる。
白衣の色の様子から腕は血だらけだったみたいで土色だ。

男はでかい盾にでかい槍がごっそりついたものを持っている。
何本かの槍は盾の周囲を浮遊しているように見えるが、違うのか。

(-_-)「移動補正は」

後ろの白衣に振り向いた、そいつもボロボロだが、頷いた。

爪'ー`)「俺が最後に聞いた時からどれくらい進歩してんのかねえ」

あいつはまだ笑ってる。俺なんて、眼中にねえってのか。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 20:57:49.64 ID:hV1WVrk40
(-_-)「行きます」

男がフォックスに盾を構えた。

爪'ー`)「くくく」

盾にくっついてた槍がとんでもない勢いで吹っ飛んでいく。
数は四本か。他はまだ男の手元だ。

爪'ー`)「それは力か!? 技術か!?」

フォックスは正面に飛んできたものを屈んでかわした。
いや、かわしてない。
かわす位置に来る前に槍は止まったぞ。どうなってんだ。

(-_-)「技術です」

槍はフォックスの目の前で小さな棒に拡散した。
ありゃあ……どっかで見たことあるぞ。

爪'ー`)「面白れぇ!!」

声と手を払うと、津波のような炎があいつを中心に巻き上がる。
馬鹿げた火力だ。あの野郎本当に、完全に、俺とは遊んでやがったみてえだ。

(-_-)「こちらが、私の力ですかね」

男は盾を向けたままだった。
そして男の周囲に浮いていた槍が炎の中心の真上に向かって飛びあがる。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:00:59.42 ID:hV1WVrk40
ハハ ロ -ロ)ハ「浮遊カメラ正常です、対称確認完了、多重ロック開始します」

眼鏡を通してホログラムの画面が表示されているようだ。
一点を見つめたまま女はバズーカについたキーボードみたいなやつに片手で何かを打ち込んでる。
これが技術局か。なんだか知らんが入力の早さが無茶苦茶だ。

槍は上空で浮遊したままでさっきみたいに突っ込まない。
炎の中心に向けて切っ先を向けたまま。

(-_-)「連装拡散ニードルの制御、装填は十分ですか」

後ろの白衣は頷いた。いつの間にか、男の盾についた槍が増えてやがる。

(-_-)「なら、次です」

またも盾から発射される。六本か、見えた分は。
今度はフォックスが捲き上げた炎に突っ込んでいく槍と、炎の寸前で周囲に突き刺さった不発弾があった。

「弾幕薄いぜぇぇぇぇぇ!!」

炎の中で楽しそうに叫んでやがる。
ムカつくが、俺には何もできない。

ハハ ロ -ロ)ハ「だったら、捌いてみなさい」

女がでかいバズーカを上に向けて発射した。見た目通りでかい音だ。
空に向けて飛んだ鉄球の煙が尾を引いて、方向を変えたと思ったら破裂、中に入ってた針が炎に向かって一気に急降下した。
俺の見立てでは多分、それは全て一点に向かっている、全部あいつを狩るために向けられているんだろう。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:04:05.07 ID:hV1WVrk40
炎は勢いを増した。
俺の後ろで燃えている建物のそれよりも大きいかもしれない。
  _
(;-∀-)「!!」

思わず、目を覆う。

爪'ー`)「はははははは!!」
  _
( ゚∀゚)「!!」

次に瞼を開いた時にはフォックスが上半身のスーツをほとんど失って、血だらけになりながら笑っていた。
その体の右半身には黒い筒のようなものがいくつも突き刺さっている。

爪'ー`)「まだだぜ!!」

そして、それはあいつの声とともに爆散した。

あいつの血が舞う。炎と同じような、少し濃い色だ。

そこでようやく気付いた。あいつ、右腕が無かったのか。
あれは今負った傷じゃない。あの時、失ったのか。

(-_-)「次ですね」

男が声を出すと、さっきの不発弾がフォックスに向けて飛び散った。
また、いつの間にか増えていた槍が撃ち出された。
そしてさっきのように拡散した無数の槍は血まみれのあいつに次から次へと突き刺さっていく。

だが、ちょっと、待ってくれねえか。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:07:12.04 ID:hV1WVrk40
爪 ー )「まだだ……まだやれる……俺は……」

手から火を小さく起こしながら、フォックスは膝を地についた。

もう無理だろうが。

ハハ ロ -ロ)ハ「ロックなしでいいわね。さあ死になさい、狐火」

眼鏡の女がバズーカを正面に構える。

待ってくれ。

さっきの大きな音と同じくして、鉄球は撃ちだされた。

爪 ー )「さぐ――」

鉄球が真っ直ぐ腹に直撃。

次には、そこから連続して爆発が起こる。

爆発の最中、すぐにあいつの胴体は二つに、三つに分かれ、人としての原形を留めずに地面に転がった。

……あっけねえ、死にやがった。
あいつ、簡単に死にやがった、死んじまいやがった。
ふざけんなよ、ふざけんじゃねえ。

足は勝手に進んでた。
あいつの、吹っ飛んだ体に向けて。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:10:47.30 ID:hV1WVrk40
  _
(#゚∀゚)「てめえ!! ふざけんじゃねえぞ!!」

血だらけの肩を掴む。死んでる、声なんて届かない、わかってる。

でも。でもだ。
  _
(#゚∀゚)「てめえのせいで!!」

てめえのせいで、俺の妹が死んだんだ。
それだけじゃない、じいちゃんも死んだ。会社員も大勢死んだ。
こいつは削除人だ、それだけでもない、もっと殺してきたんだろう。

俺は殴った。何度も死体を殴った。
  _
(#゚∀゚)「お前を殴らせろよ!」

こいつを殴りたかった。
ずっとだ、あの時からずっと。
俺の親友を作り変えて、俺を殺したこいつを。

こいつから返してほしかった。もう何だっていい、あの時の俺の断片でいいから。
せめて一発殴って、あの時のこいつの言葉でもいいから、返してほしかった。それで俺は、納得してやろうとしたのに。
  _
(#゚∀゚)「一方的に全部持って行って、勝手に死んで全部ぶん投げやがって!
     返せよ! 俺の人生を返せ! 俺の親友を返せ! 俺を……返せよ!」

( ^ω^)「………ジョル、ジュ?」

……ああ、よりによって。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:13:56.62 ID:hV1WVrk40
爆音は止んだ。しかし、炎はいまだ消えることはない。

ブーンはハローらがフォックスのところへ向かったのを確認した後、クーの手際をただ見ていた。
重傷者は体力には自信があるそうで、止血が終わった頃には平静を取り戻しつつあったのだ。
それからクーに彼を任せ、爆音の止んだ建物の反対側へ回った。

そこで彼が見たものは、自身の親友が赤と黒の物体を殴る姿であった。

( ^ω^)「なに……してるんだお……」

彼は駆けてきたブーンの問いかけに対して固まり、反応を示さない。
先程の叫びはどういう意味だったのか、ここで何が起きたのか。
それを聞こうとしたブーンの口は止まってしまった。

ハハ ロ -ロ)ハ「私達は少しこっちの調整をしたら学園に向かうわ。あなた達はどうするの?」

( ^ω^)「ハローさん……これは…………」

ハハ ロ -ロ)ハ「さあね。で、どうするの? 多分だけど、今ニュー速は大変なことになってるわよ」

ジョルジュのことなど気にかけてすらいない。
非情なのではなく、当然の反応だ。死体に怒鳴りつける人間が正気なはずがなく、放っておくのは間違いではないだろう。

( ^ω^)「まだ……こいつと話すことがありますお……」

ブーンが告げるとハローは黙って振り返り、白衣のもとに歩いていった。
その白衣達もジョルジュの行動にはなにも興味は無いようだ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:17:08.46 ID:hV1WVrk40
( ^ω^)「ジョルジュ」

死体の肩を掴む親友の前にブーンは座りこむ。
声をかけた相手は未だ反応をする素振りを見せない。

( ^ω^)「それ、フォックスかお」

ここまでグロテスクな死体は初めて見るのだが、それ以上に気になることがブーンにはあった。
言うまでもない。先程の言葉と、明らかな親友の異常だ。

( ^ω^)「どうしたんだお、さっき言ったこととか。お前、おかしいお」

蔑む為ではなく、親友に諭すための言葉だ。
今の自分の行動は明らかに異常である、と彼に教えたかったのだ。
  _
(  ∀ )「おかしいのは……………」

言葉が返ってくる。
肉塊と呼べるほど壊れた死体を掴む男と、その横に無表情で座る男。
この場においておかしいと言えるのは、誰だろうか。

( ^ω^)「ジョルジュ、どうしたんだお。言わなきゃ、やっぱり言葉にしなきゃわからないんだお」

冷静な声で言った。マニュアルでも持ちだしてきたのかと思わされるようなトーンだ。
  _
( ゚∀゚)「おかしいのは、お前もだろうが……。いい加減疲れてきた頃だろ? 辞めるなら今だぜ、親友」

実際は言葉にしたとても、それだけで相手の意図が伝わるなんてことはあまりに少ないだろう。
つまりはブーンにとって『親友』である彼のこの言葉は、全く要領を得ていないと思わされるものであった。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/27(金) 21:20:15.78 ID:hV1WVrk40
ミセ;゚ー゚)リ「もう大丈夫なの……かな?」

ξ゚听)ξ「静かになったわね……」

ツンの介抱が終わると、二人はただ漫然と座っていた。

川;゚ -゚)「ジョルジュ……大丈夫かな……放火犯の方に向かったらしいが……」

クーも二人のもとに歩いてきていた。
処置をした彼は自力で立てる程度には意識を保てるようになり、彼女にほっといて欲しいと言ったのだ。

ξ゚听)ξ「大丈夫よ、ブーンがあいつに任せてこっちに来たんでしょ?」

ツンははっきりと言い切る。
不安そうな印象は微塵も受けない、いつもの声で。

川;゚ ー゚)「そう、だな。ブーンも見に行って帰ってこないし、きっと馬鹿な話でもしているんだろう」

ミセ*゚ー゚)リ「きっとそうだよ! でも学園祭は参加したかったなぁー」

ξ゚听)ξ「それにしても一体何なのかしらね……」

ミセ*゚ー゚)リ「ツンは自分の心配しなよ? 今はなにも考えちゃだめー!」

足の折れたツンを放っておけないのでいつものように三人で話をし始める。

いずれはすぐそばに居る二人の異常にも、気付くことになるだろう。

第十八話「認識の相違」・終わり


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