川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです

4 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:24:54.03 ID:YJPrE2yU0

ウォードッグ
戦争犬。

戦場を駆けまわり、多くの命を奪い、戦いに生き甲斐を求める者。
人の生を奪う事でしか生を実感できない、戦場をなわばりとする戦争狂共。

お前は一体どれほどの者にそう蔑まれてきたのだろうか。

ろくでなし共。人間の屑。人殺し。

だが戦場でのお前の姿は私には正義のヒーローにも、英雄にも見えた。

戦いの最中では、お前ぐらいしか私を救えるものはいなかったんだ。

だから私はお前をこう呼ぼう。

ウォードッグ
戦争犬と。

私はこの名に親しみと畏敬の念を込める。
         ウォードッグ
共に駆けよう、戦争犬。

6 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:27:15.76 ID:YJPrE2yU0




    川 ゚ -゚)少女は戦争犬と駆け抜けるようです



           第一話 少女の戦い



8 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:29:36.91 ID:YJPrE2yU0

******

目の前にある物は戦車だ。

全長8mある巨大な戦車で、キャタピラは無く二本の5mはある足を持ち、
3mほどの胴体には巨大なミサイルの発射台が設置されている。

キャタピラで走行するのではなく、二足で歩行する戦車"AA"。

先進国ニューソクの作りだした最新の戦車である。

川 ゚ -゚) 「通常のAAに比べ巨大化してしまったが、コンセプトに従うのであらば仕方ないか」

最終チェックを済ませた私は、これを実戦で使用するのにある程度の不安を覚えるが、
このAAが持つ特性を考慮して合点を打った。

从'ー'从 「クーにゃーん、もうチェックは終わった〜?」

同僚である渡辺が間延びした声で私を呼ぶ。

川 ゚ -゚) 「あぁ、少々不満は残るが致し方あるまい。
      軍が注文してきた通り作った。もう少し、手を加えておきたい気もするがな」

从'ー'从 「テストは明日だよ? クーにゃんが小型化したい気持ちもわかるけど、
      今の段階じゃこれでもう充分だよー。もう残業はやめて帰ろう?」

AAが納められたハンガーの中はライトに照らされて明るいが、窓から外を見てみると既に真っ暗だ。
時計を見やればすでに1時を示しており、5時間は残業をしていることになる。


11 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:34:36.49 ID:YJPrE2yU0

川 ゚ -゚) 「そうだな……明日は早い。退勤するか」

从'ー'从 「うん! あがろあがろ!!」

急かすように言う渡辺に背を押されながら格納庫から出ていく。

川 ゚ -゚) 「押すな」

そう渡辺に言おうと振り返りながら、ちらりと私はAAを視界に納める。

通常のAAに比べて太い足だ。胴体も巨大であり、尖った先端は爬虫類の頭部を思わせる。
軍に配備されたAA"NT2−ザイル"は全長5mだ。
それに比べるとこのAAは大きすぎ、戦場では良い的になる。
重量も重く、機動力は損なわれている。本当にこのままでいいのだろうか? それ以前に――――。

从'ー'从 「早くタイムカード切ろう!」

AAを気にしているのを気取られたのか渡辺が急かす。

仕方なく思考を中断し、ダイムカードを切った私は渡辺と一緒に更衣室へ向かい、
ツナギからスーツに着替えてコートを羽織り、会社を出た。

5月とはいえ、流石に夜はまだ冷える。夜風が頬に触れると冷たさを感じた。

12 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:36:45.40 ID:YJPrE2yU0

从'ー'从 「はぁー、疲れたねー」

川 ゚ -゚) 「すまんな、付き合わせて」

从'ー'从 「いいよいいよ、クーにゃん一人に仕事任せるのも悪いしね」

川 ゚ -゚) 「それもそうだな」

从'ー'从 「うん! それに、なんか仕事してる時のクーにゃんって、
      没頭しすぎちゃう感じがして、一人にしておけないんだよね〜」

川 ゚ -゚) 「そうか?」

从'ー'从 「そうだよ。妥協を許さないって言うのかな?
      私が言わなかったら、多分まだ仕事してたでしょ?」

川 ゚ -゚) 「恐らくな。アレは、実戦的ではない」

从'ー'从 「でも、軍の要求してきたスペックは満たしてるでしょ?」

川 ゚ -゚) 「あぁ」

从'ー'从 「だったらそれでいいじゃない」

川 ゚ -゚) 「だがもしアレに乗った者が、削がれた機動力のせいで、
      巨大化してしまった機体のせいで敵に集中攻撃されてしまった場合、逃れられないとは思わないか?」

从'ー'从 「あー、なるほどねー。確かに大きかったら標的になっちゃうよね」

13 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:39:31.38 ID:YJPrE2yU0
川 ゚ -゚) 「ザイルとは違い、あれは明らかに鈍足だ。ただのデカブツだ」

从'ー'从 「それに乗ったパイロットを死なせたくない、ってこと?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、明らかにあれは欠陥品だ。人を乗せるに値しない。あんなものはただの棺桶だ」

从'ー'从 「じゃあクーにゃん。アレが撃つ"物"で、一体何人の人が死ぬと思う?」

そうだ、それだ。あのAAのコンセプトであり、作られた目的。

川 ゚ -゚) 「……メガデスが起きることだろうな」

アレは、AA"NT3‐M ファットボーイ"は核弾頭を発射することを目的とした機体だ。
最も、搭載される物は近年開発された純粋水爆であり、放射能汚染の危険を持たない物ではあるが、
それでも市街地に落とされれば万単位の人間の死は確実である。

从'ー'从 「アレは弾頭を打ちだす為の移動する発射台。
      だからAAとしての性能は低くていいの。注文された通りに私達は作っただけ。
      アレに乗る人も、任務の為に乗るの。元から死ぬことは覚悟している人がね」

从'ー'从 「私達は仕事をこなした。アレに乗って敵を蹴散らして生きて帰ってくることがあの人達の務め。
      やるべきことをやったんだから、それでもう納得しようよ」

川 ゚ -゚) 「あぁ……そうだな」

从'ー'从 「無理しないでよ、ホントに。クーにゃんに倒れられたら困るんだから」

川 ゚ -゚) 「すまない。軍からの依頼ということもあり少し根を詰めていたのかもしれない」

从^ー^从 「だと思った。明日は早いんだし、うちに帰ったらすぐに寝なよ?」

14 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:43:17.58 ID:YJPrE2yU0

从^ー^从ノシ 「じゃあ明日ね! お疲れ様!」

そういって交差点で渡辺は私と別れる。
そのまま10分程歩き続けると私の住むアパートに辿りついた。

二階建てで、駐車場は無く階段には所々錆の見えるそのアパートの家賃はとても安く、
それだけの理由で私はこのアパートの一室を借りた。

部屋の中にはベッドに本棚、小さな冷蔵庫に机とノートPCが置かれている。
調理器具は一通り揃っているが、ここ最近は仕事漬けでほぼ社員食堂などで食事をすませているためつかわれることは無い。

何度か渡辺がここに訪れた事があり、その度渡辺は「殺風景な部屋」「女の子らしくない」と呟いていた。

結局は部屋なんてものは寝てくつろぐことが出来ればそれでいいのだ。
不自由をしたことなどは一度も無かったと思う。

コートとスーツを脱ぎ捨て、Yシャツと下着だけになった私はベッドに横になり、
頭の下に自分の腕を差し込んで枕にする。先週だが先々週にあまりの湿気で寝苦しく、
寝ぼけて枕を真っ二つにを引き裂いてしまって以来私の枕は自分の右腕になっていた。

目を瞑ると今まで積み重ねてきた疲労がどっと身体全体にのしかかってくるようで、
段々意識が薄れてくるのを感じ、眠気を覚えた。

17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:48:23.59 ID:YJPrE2yU0

川 - -) 「無理、しているつもりはなかったんだがなぁ……」

身体は正直らしい。

仕事に没頭するあまり、眠気や空腹感を私は忘れてしまう事が多々ある。

渡辺の気遣いは少しうっとおしくも感じられるが、
私を気遣ってくれる唯一の同期を愛おしくも思う。

今や私は一人だ。自分の能力を高め活かすことが私の使命であると信じて疑わない。
人付き合いも下手で、その癖仕事となれば自己主張を強くする私に反発する者は多く、自然と私は孤立していった。

孤独を感じているわけじゃない。悲しいわけじゃない。
自分を改めようとは思わないが渡辺がいてくれることは嬉しい。

私は自分の能力を活かし最高の兵器を作る。それだけでいい。
それが仕事であり私の使命なのだろう。

川 ‐ -) 「きっとどこかで、お前もがんばっているんだろう?」

それが私の戦争だから―――。

18 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:54:08.51 ID:YJPrE2yU0

******

( )「少佐、正気ですか? 相手は同志ですよ?」

( ●) 「いや、奴らは同志なんかじゃない。俺達とは、志が違う」

( )「例えそうであっても、あなたはこれから味方を撃ち、
    命令を違反しようとしているのですよ?
    このことが知られれば銃殺は免れません」

( )「なぁに、結局はバレなければいいのよ。パッと行ってパッと帰ってくる、これでいい。
    それに俺は、いずれこうなるとは思ってたぜ? お前だって分かってたはずさ。
    もっとも、降りるなら今の内だぜ? なぁ、少佐?」

( ●) 「あぁ、特にとがめやしない。お前が黙っていてくれるなら」

( )「甘いとは思うがの。口は封じておくに越したことは無い」

( ●)「仲間だろ? そんなことはしたくない。約束してくれるなら危害は加えない。
     だから、辞めるのなら今のうちだ。さぁ、どうする?」

( )「あいつらの好き勝手にさせとくのか?
    あいつらの手の回った世界で、あいつらの思い通りの世界で、
    自分の意思を貫いて生きてくか。それとも奴らを止めて本当の自由な世界で生きていくか、選びな」

20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 02:57:54.80 ID:YJPrE2yU0

( )「……わかりました。一度貴方に忠誠を誓ってしまった以上、
   私は貴方に最後まで付き合いますよ」

( ●)「すまんな。明日はお前に指揮を託す。俺の不在の間は任せたぞ」

( )「了解、どこまでもお供します」

( )「じゃあ決まりだな」

( ●)「あぁ、明日―――」

( )「水を差すようで悪いが、止めるのなら今のうちじゃ。
    本当にいいのかの? せっかくその歳で少佐にまで上り詰めたと言うのに」

( )「信念を貫くのは良いことではあるが、お前には、
    いやお前達には栄光を手にして輝かしい地位につくことも出来るのじゃぞ?」

( ●)「もう十年も前から決めていたことなんだよ。
     こんなクソにまみれた場所でクソだらけの栄誉を手にするつもりはねぇ。
     それにすがるつもりもまたない」

( ●)「目に見えるものを見えないふりをして放っておくつもりもねぇんだ。
     ずっとそう言ってきたはずだ、爺ちゃん」

22 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:00:23.90 ID:YJPrE2yU0

( ●)「自分の使命を果たす。この片目で見えるクソ共を俺は叩き潰す。
     見え隠れする奴らの陰に怯えて、死んだように生きたくはない」

( )「とっくの昔に腹は決まっておったか……。
    その恐れをしらないところは若さゆえか、それとも母親に似てしまったのかの」

( ー )「両方、なんじゃねえのか?」

( ∀●)「違いねぇ……」

( )「ならば自分の使命を果たすがよい。あの英雄の弟子として、恥じぬように。
    お前の師匠の背を見守ってきたように、お前の背も見守ろう」

( ●)「頼んだ。じゃあ明日0900―――」

( ●)「俺達はダーウィンとの合同で行う、新型AAの起動実験場を襲撃する」


眼帯をした男の命令に、兵士達の「了解」という答えが返った。

男の眼は信念を貫いた先の世界を見据えているようで、
その奥底には鋭い光が宿り、ギラついていた。

26 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:06:04.97 ID:YJPrE2yU0
******

爆撃の音。

悲鳴。木霊する銃声。建築物の倒壊する音。
聴覚を支配するものは戦場の喧騒。
視覚を支配するものは黒。

暗闇。

私の眼には何も見えなかった。

痛み。何かに圧迫される苦しみ。
身動きの取れない苦しみ。束縛感。

騒音。痛み。暗闇。痛覚と聴覚と視覚を支配された幼い私には恐怖が訪れる。
逃れようにも身動きは取れず、恐怖は増していく。

怖いと思った。耐えられず叫びを上げたが、応える者はいない。

私は叫び続ける。このまま死んでしまうのかと思った。
痛かった。苦しかった。喉がかれるまで叫び続けた。

だが助けが来るのを私は知っていた。知っていても、本能から叫び続ける。

そして―――。

「おい、誰かいるのか!?」

助けはやってきた。十年前の、あの時のように。

29 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:10:10.52 ID:YJPrE2yU0

******

州レつ -)レ 「……眠い」

そうして私は目を覚ます。

私が今まで生きてきた中で一番恐れを感じた時の出来事だ。
夢でいつもあの瞬間を思い出す。

ケータイを手繰り寄せて開くと、時計はAM4時53分をさしていた。

普段は9時出社で8時に起きれば充分に間に合うのだが、
今日は新型AAのテストということもあり6時の出社で、
AAの整備と運搬を行うので早く家をでなければならないのだ。

アラームを5時にセットしていたのだが、それよりも早く目を覚ましてしまった。

後7分は寝られたんだがな……。

仕方なしにアラームを切り、私はシャワーを浴びる為に起き上がる。

Yシャツと下着を脱ぎ捨てそのまま洗濯カゴに放りいれる。
浴室に入り洗面台の前に立つと、ガラスに自分の姿が映り込んだ。


州レ ゚ -゚)レ 「………」


州レ ゚ -゚)レ 「寝癖ひでぇ……」

34 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:19:04.11 ID:YJPrE2yU0

******

6時20分

新型AAファットボーイの積み込みが完了し、このプロジェクトに参加しているメンバーが入りこんでいく。
昨晩の最終チェックを念入りに行ったこともあり、整備はほぼ不要であった。

問題なく稼働することができ、純粋水爆を詰めたミサイルを発射することが出来るだろう。

川 ゚ -゚) 「しかし眠い……」

从'ー'从 「くーにゃん、目に隈できてるよー?
      やっぱり、無茶してたんだって」

川 ゚ -゚) 「そうかもしれんな」

从'ー'从 「うん、この仕事が終わったら有給貰いな?
      溜まってるんでしょ?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、全く使ってなかったからな」

从'ー'从 「へへ、溜まってるのは疲労だけじゃなかったり」

川 ゚ -゚) 「うるさい」

同性だからといって、渡辺はたまにこういうセクハラを言ってくる。
普段は「ふぇ〜」とか言ってるくせに、こう言う時の彼女はただのオッサンと変わらないセンスだ。

37 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:21:47.41 ID:YJPrE2yU0

(-_-) 「素直主任、行きましょう。もうトラックは出ますよ?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、運転頼むぞヒッキー」

(-_-) 「了解です」

ヒッキーは私と同期であり、勤勉な業務態度と視野の広さからこの計画の副主任を任されていた。
実際よく働いてくれて、休憩中も技術書を読み漁るなどかなりの努力家であると知られている。

最も、渡辺からそんな話を聞く前は私は全く気付かなかったが。

副主任という立場にも関わらず、彼は雑用もキリキリとやってくれるので、
そんな話し云々関係なく私は評価している。

トラックが出ていくのを見送った後、私と渡辺の乗り込んだ会社の車は発進した。

実験はパーソクとの国境近辺にあるスカイプ砂漠で行われる。

そこではニューソク軍がパーソク軍と交戦しているそうだが、
純粋水爆の性能試験を兼ねている為、軍の立会いの下ここで実験を行うしかなかった。
戦闘区域とは離れた場所で実験は行われるが、危険があることは否めない。

ダーウィン本社のあるニューソクの首都ウプスレッドから二時間半程車で南へ走り続ける。

南に進むにつれて建物は少なくなってきており、廃れていく。

40 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:25:24.04 ID:YJPrE2yU0

(-_-) 「見えてきましたね」

从;'ー'从 「あっついねぇー」

川 ゚ -゚) 「砂漠だからな」

道路は途切れ、砂漠が見えてきた。

見える物は砂しかおらず、後ろを振り返っても木々と土しかなくウプスレッドにあるようなビル群は見当たらない。
そして何より、日差しが強く車内の中は暑苦しくなっていた。

窓を全て開けるが肌にあたる風すら熱を帯びていた。

そこからさらに10分程走り続けると、
安全を確保したニューソク軍の部隊がテントを張っていた。
周囲を警戒しており、私達ダーウィン社の者を発見した兵士は停車を促す。

別の兵士がこちらを警戒する視線を送っており、鋭い刃のような冷たさを感じた。

川 ゚ -゚)つ□「ダーウィン社の素直クールです。
        本日の実験のご協力よろしくお願いします」

社員証を差し出し、それを確認した兵士は頷く。

 ( ^Д^) 「いえ、こちらこそよろしくお願いします。
        こんな状況下で実験をさせてしまい申し訳ございません。
        何分、軍備の増強は急務となっておりまして」

43 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:29:30.02 ID:YJPrE2yU0

川 ゚ -゚) 「こちらも全て承知の上で仕事を引き受けました。
      積み荷を降ろさせます。さっそく準備に取り掛かりましょう」

私達の乗っていた車とトラックが停車し、そのままトラックはハッチを開く。
トラックの上部が展開していくと、格納されたハンガーが起き上がっていきAA"ファットボーイ"がその姿を現した。

それを見た兵士達と、随伴してきた研究員たちは舌を巻いたようだ。

     「これほど巨大な物を、よくもこんな短期間で……」

     「巨大にするだけならば時間をかければ出来るさ。
      それよりも純粋水爆を乗せた弾道ミサイルが予測通りの航行距離を飛べるかどうかだ」

ロックが解除され、ファットボーイが起動していく。

从'ー'从 「ヒッキー君、ちゃんと操縦できるのかな?」

川 ゚ -゚) 「あいつが一番上手く操縦出来るだろ。心配は無い」

ファットボーイにはヒッキーが搭乗していた。
ファットボーイはその巨体を揺らしながら、淀みなく歩みを進めていった。

研究者達が持ちこんだパソコンなどを操作していき、何やら計測を始めているようであった。
こちらも、複数の社員が計測をすでに開始している。

各関節の動作具合、ヒッキーの操作から動き始めるまでのタイムラグ、
機体に発生する熱量などを記録していき、そして私は無線機を使いヒッキーへ通信を繋ぐ

46 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:32:13.84 ID:YJPrE2yU0
川 ゚ -゚) 『ヒッキー、ファットボーイの操縦はどうだ? 不具合は無いか?』

(-_-) 『やはりかなり重量が重いようで、操縦してる感想としては"鈍い"って感じですね。
     機体が重たい為、命令伝達速度に反して行動が遅いです。レーダーなどの計器は良好です』

川 ゚ -゚) 『了解だ』

そう答えながら、私は当然だろうと思う。
私が念入りにチェックを行ったのだから、不具合などあるはずがない。

パソコンを操作している研究員たちを見ると、こちらに頷きを送ってきた。
どうやら弾道ミサイルの発射実験に移れ、という意味のようだ。

よほど純粋水爆の威力とその射程が気になるらしい。

川 ゚ -゚) 「退避しろ! AAから距離を取れ、純粋水爆の発射実験を行う!!」

拡声器を使って叫び、軍用車や会社の車に乗ってそれぞれ避難していく。
私も車に乗り込み、渡辺の運転で退避していった。

充分に距離を取り―――最も下手を打てば無事ではすまないだろうが。私は無線に声を吹きこんだ。

川 ゚ -゚) 『ヒッキー、弾道ミサイルの発射実験を行う。
      予定通り、初弾は信管を抜いたミサイルを発射。二時へ10000km先に発射。
      二発目は純粋水爆を搭載したミサイルを12時へ100km先に発射だ』

(-_-) 『了解』

短く言葉が続くと、AAの補助脚部背部から展開していき、
その身をさらに安定させていく。

49 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:34:52.18 ID:YJPrE2yU0

大陸間弾道ミサイルの発射態勢に移ったようだ。

胴体上部に備えられたミサイル発射台が上空を向いていき、そして発光する。
辺り一面へ光が溢れ、ロケットエンジンが煙を撒き散らして上空へと発射されていった。
衛星で観測している映像を、社員のパソコンから私は覗く。

それは高速で飛来し、やがて海のど真ん中に水飛沫を爆発させるとそのまま沈んでいった。

目標の距離に見事達しており、ミサイルの精度が正確であることをそれは物語る。

川 ゚ -゚) 『ヒッキー、第二射だ』

了解とまた短く続き、再びミサイルが発射された。
ファットボーイはその反動に上体を軽く揺らす。

その後に訪れたのは圧倒的な暴力だ。

ミサイルが巨大な炎を吐き出して飛翔していくと、
雲を突き抜け、ミサイルは煙で尾をひかせて目標地点へ向かう。

到達地点は100km先の砂漠だ。

そのまま下降していき、地面へと落下していく。

51 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:37:19.95 ID:YJPrE2yU0

目を潰すかのような閃光。
そして次に身体を震わせるような音が轟く。

暴力的なエネルギーの奔流が辺りに撒き散らされ火球が生まれていった。

砂は渦を巻き、灼熱を帯びた風が辺り一面を殴りつけていき、
凶暴な衝撃となってその場の全てを弾き飛ばし、
6000℃の炎が30km四方を飲みこんで行く。

目に痛いほどの輝きを遠目に見ながら、私は戦慄を覚えた。

自らが作り出した兵器の、恐るべき威力に。

川 ゚ -゚) 「……」

言葉にならなかった。

これが戦争に使われ、首都にでも落とされれば一体どれほどの者が死に絶えることだろう。
ウプスレッドにこれが一度落とされれば一瞬で更地に変えてしまう事だろう。

天に昇る巨大なキノコ雲を見ながら、私は無線を開く。

川 ゚ -゚) 『ヒッキー、無事か?』

(-_-) 『えぇ、何も問題はありません。機体の稼働良好です』

川 ゚ -゚) 『御苦労。データを確認する。機体を降りてこちらに戻ってこい』

54 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:39:47.05 ID:YJPrE2yU0

了解、とだけ答えた彼はファットボーイに待機姿勢を取らせ、機体を降りていく。
装甲車に乗った研究員達へと向かって歩いていき、声をかける。

川 ゚ -゚) 「データは取れましたか? 一応、予備の弾薬も用意してきましたが」

     「素晴らしい結果だった。スペック通りの効果を発揮していた。礼を言う。
      我々だけでは純粋水爆を実現させることは出来なかっただろう。
      一応だが、放射能汚染が起きていないか確認させてもらう」

川 ゚ -゚) 「えぇ、お願いします。それではこちらは撤収の準備を行います」

     「あぁ、それが良いだろう。ここはパーソクとの国境が近い。
      これ以上奴らを刺激するわけにもいかない。速やかに撤収しなさい」

川 ゚ -゚) 「はい、それでは」

刺激も何も、自分達がここで実験を行うことを決めたのだろうに。

社員達に撤収を命じると、彼らはテキパキと行動を開始した。
手際がいいのだろうが、それだけではなく、私にはこの場からすぐに離れたいという恐怖心があるように思えた。

 ( ^Д^) 「素直主任、少々お伺いしたことがあるのですが」

車に戻ろうとすると、警備隊の兵士が私に声をかけてきた。

57 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:41:55.67 ID:YJPrE2yU0

川 ゚ -゚) 「なんでしょうか?」

 ( ^Д^) 「こちらへ来てください」

兵士は私をテントへ誘い、それに従って中に入ると机の上にノートパソコンが置かれているのを目にした。
それ以外は何もなく、兵士は私にノートパソコンの画面を指差した。

そこに映っていた物は写真だ。

軍服を着た少年の写真であり、撮られたのは今から十数年前のようであった。

川 ゚ -゚) 「この少年がどうかしたのですか?」

 ( ^Д^) 「現在、ニューソク軍はこの少年を追っています。
        彼は少年兵です。十年ほど前に味方兵士を三名殺害して以来、行方をくらましているのです」

言わんとしていることが、読めてきた。

 ( ^Д^) 「"高岡ドクオ"、それが彼の名です。あなたは彼の行方を知っていますね?」

川 ゚ -゚) 「いえ……私はこの少年を今日初めて知りました」

 ( ^Д^) 「そうですか……」

59 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:44:28.73 ID:YJPrE2yU0
そう言った兵士は微笑を浮かべるが―――。

 ( ^Д^) 「これは十年ほど前に撮影されたものです。
        生きていれば今年で22になる。この少年は幼き頃からゲリラとして戦い続けていて、
        ニューソク軍の部隊と交戦し捕虜となり、ある部隊で戦い続けてきたのです」

 ( ^Д^) 「"三ヶ国大戦"で散った伝説の英雄、高岡ハインリッヒに拾われて!」

 ( ^Д^) 「部隊の名は"GJ"! 十年前カラマロスDNに派遣され戦った部隊です。
        あなたが知らないはずがない!!」

川 ゚ -゚) 「えぇ、たしかにその部隊の名は知っています。
      カラマロスDNについて調べれば誰でも知ることができます。何分、有名でしたから」

 ( ^Д^) 「いや、違う。あなたは知っていたのです。十年前のあの戦いで知ったのです。
        知っているのでしょう? 高岡ドクオの、高岡ハインリッヒ唯一の弟子の行方を!」

川 ゚ -゚) 「ですから私は―――」

 ( ^Д^) 「とぼけたって無駄だ! 素直クール!
       あなたは十年前カラマロスDNに住んでいた。
       そして戦闘に巻き込まれ両親は死に、あなたは戦場に取り残された!

 ( ^Д^) 「そしてそこで救助された。あの部隊、GJに!
       救助されたあなたは難民キャンプへ避難した。
       高岡ドクオに誘導され、戦場を脱出した。違いはないだろう!?」

63 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:47:37.78 ID:YJPrE2yU0

どうやら私の過去は調べ尽くされているらしい。

たしかに私はあの人たちに救われ、アイツに守ってもらった。
そうやって生き延び、今こうして生きている。

この男は一体なんだ?

アイツのことを調べて、何を……。

川 ゚ -゚) 「確かに私は救助されました。ニューソクの兵士に。しかし―――」

 ( ^Д^) 「高岡ドクオという名は知らなかったと? そんなはずはない。
       当時キャンプの警護にあたっていた兵士や難民達からも証言はとれている」

 ( ^Д^) 「あなたは高岡ドクオを知っている」

川 ゚ -゚) 「知っていたとしても、あの時の兵士の消息なんて私が知るはずないじゃないですか」

 ( ^Д^) 「さて、どうかな?」

そう言いながら、兵士は腰のホルスターからハンドガンを取りだした。

コルト1911だ。
両手でグリップを保持して油断なくこちらを見据え、
兵士は銃口を突きつけてくる。

 ( ^Д^) 「もう一度聞く。高岡ドクオは何処にいる?
       言え、言うんだ。黙秘はあなたの為にはならないぞ?
       言えば、すぐに解放しよう」

64 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:49:51.42 ID:YJPrE2yU0
そこまで調べているというのならば、私を解放する気がないのは明白だった。
このまま私を野放しにしておくメリットも理由も奴らにはない。

川 ゚ -゚) 「知らんな。私はあれ以来、奴とは顔を会わせていない」

 ( ^Д^) 「良いだろう――――。付いてきてもらおうか」

右手で銃を保持して突きつけたまま、左手が私の右手首を掴む為に伸ばされた。
言った途端に腕が飛び出してきたかのようだった。

だが、

 (;^Д^) 「ッ!?」

遅い。

反射的にその腕を捻りあげて男の側面へと回り込むと、銃声が発した。
テントの柱に火花が爆ぜ、兵士はそのままコルトを連射する。

回り込む動きと同時に私の右足が兵士の左足をすくい上げると、
銃口は空へと弾丸を吐き出し続けていく。

掴んだ左腕を背中へと押しつけて、そのまま私は地面へと叩きつけてやった。
背へと膝をかけて屈みこみ、全体重をかけてしゃがみ込むとコルトを持つ右手をも捻りあげた。

66 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:52:58.07 ID:YJPrE2yU0

 (;Д) 「アァーッ!」

あらぬ方向へと曲げられた右手はコルトを落とした。

抵抗をしようともがかれるが落としたコルトを拾い、
銃口を後頭部へと押しつけてやると兵士は大人しくなった。

 (;^Д^) 「貴様、ただの科学者ではないな? その身のこなしどこで学んだ?」

川 ゚ -゚) 「調べが足りなかったようだな戦争犬―――。
      いや、お前など子犬にしかすぎんか……」

 (;^Д^) 「まさか、貴様も高岡の……」

川 ゚ -゚) 「今度は私が聞く番のようだな」

次の言葉を重ねようとしたその時、

 ( ^Д^) 「さあ、それはどうかね?」

焦燥を露わにしていた兵士の顔に、微笑が浮かべられた。

川 ゚ -゚) 「ッ!?」

テントの入口に大勢の兵士が集まってきており、私へとアサルトライフルを向けていた。
いつでも引き金は引けるようで、それが引かれれば私はあっという間にズタズタに引き裂かれてしまうことだろう。

67 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 03:56:27.64 ID:YJPrE2yU0

一人の兵士が前に出てきて言う。

    「銃を捨て、その男を離してもらう。
     素直クール主任、御同行を願おうか」

こいつだけではなかったのか。

ここに訪れた部隊そのものが敵であったようだ。
この状況で勝ち目はない。私の命は奴らの掌の上にある。

川 ゚ -゚) 「ちっ……」

言われた通りに銃を捨て、私は兵士から離れていった。
起き上がった兵士は関節の外れた手首を痛々しげに押さえ、私を蹴り飛ばした。

川メ -) 「くそ……」

地面にはいつくばってしまい、蹴られた背中が痛む。

さすがは訓練を受けている者の脚力だ。
痛みで、すぐには立ち上がれそうになかった。

       「少尉、御無事で?」

 ( ^Д^) 「あぁ、右手首以外はな。連行しろ、手は出すなよ?」

       「了解」

ふっ、と笑って男は応え、私の両手に手錠をはめていく。

72 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 04:00:10.13 ID:YJPrE2yU0

そのまま奴らに従いテントを出ていくと、渡辺達が私を遠巻きに見つめていた。

先程の銃声を聞き、心配しているのだろうか?

それとも……。

川 ゚ -゚) 「……」

そのまま視線を逸らした。

そして連れられるまま装甲車へと向かっていき――――。

川 ゚ -゚) 「なっ!?」

そこで銃声が響いた。

一つだけでは無い。多くの銃声が一斉に、ほぼ同時に響きわたっていき、
兵士達が頭に地の花びらを咲かせて力無く次々に倒れていく。

咄嗟に地面に伏せると、数人だけが両手と足を撃たれて生き残ったのに気付いた。

音が消えた。けたたましく鳴り響いた銃声はほんの数瞬でなりやんだ。
だが、そのほんの数瞬で部隊の兵士達に戦えるものはいなくなっていた。

 (メ; Д) 「ぬぅ……クソ、何が起きた」

あの兵士は両手と右足を撃ち抜かれ、倒れているようだ。
周囲を見渡してみれば、覆面を被った、デザート迷彩を施された野戦服を着た兵士達に包囲されてしまっていた。

75 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 04:02:56.10 ID:YJPrE2yU0
ご丁寧に銃にまで迷彩をしている手の込みようだ。

ゲリラやテロリストではない、正規部隊のものだと私は思った。

パーソクの部隊か……?

デザート迷彩の部隊は包囲を狭めていき、ある者は生き残りを、
ある者はダーウィン社の社員へ銃を突きつける。

そして、一人の兵士が私の傍に近づいていき、

川 ゚ -゚) 「……?」

通り過ぎていった。

そして、怪我を負ったニューソクの兵士へと近づく。

が、兵士はこれまでにないほどの俊敏な動きで銃を取った。
しかし、それよりも早く覆面の兵士は銃を持った手を踏みつぶす。

 (メ;゚Д^) 「アアァァァァッ!?」

銃弾で撃ち抜かれたというのに無理矢理銃を手に取った上に、
軍靴で踏みつけられた痛みは想像を絶するものだろう。

77 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 04:06:13.50 ID:YJPrE2yU0
叫びを上げた兵士は顎を蹴り上げられてしまう。

打撃音が響く。血を吐き出し、苦しむ兵士は胸元を掴まれて地面に押しつけられた。
それらは全て、私のすぐ近くで行われていた。

私は、自分もああなるのではないか、
それともこれ以上に酷い目に遭わされるのではないかという、
自己の保身からくる恐怖を覚えた。

( )「所属と名前を言え」

(メ;Д) 「ウプスレッド研究所の警備部隊所属、宝プギャー。階級は少尉」

( )「ではプギャー少尉。今回の任務は何が目的だ?」

(メ;Д) 「今回の任務は、ダーウィン社が軍の依頼で開発していた新型AAファットボーイと純粋水爆の実験の警備だ」

( )「違う、そうじゃない。俺が知りたいのはその任務じゃない。
    それはエサだ。獲物を誘き出す為の罠でしかない」

( )「目的は素直クールの拘束か?」

(メ;Д) 「くっ……」

( )「どうやら図星のようだな。じゃあ更に質問だ。
   その命令を下したのは誰だ? 正直に話せ。
   急所は外してあるが、放っておけば出血多量で死ぬぞ? まだ助かるかも知れん」

78 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 04:08:52.81 ID:YJPrE2yU0
(メ;Д) 「ふん、情報を得たいんだろう? だったら、俺に死なれたら困るはずだ」

( )「いざとなれば助けるとでも? そうか、そう思われてるんだったら話すわけがないよなぁ」

そう言った覆面の兵士はすかさずプギャーの腹部へ銃弾を撃ち込んだ。

(メ;Д) 「ぐうぁ……ッ!」

( )「お前が話してくれないならお前より口の軽い奴を探すだけさ。
    残念だ、死んでくれ」

覆面の兵士は照準をプギャーの額に定めた。

そして―――。

(メ;Д) 「ま、待て! わかった、話す。話すから助けてくれ!!」

( )「早く話せ。死んじまうぞ」

(メ;Д) 「俺達は……ウプスレッド研究所のセントジョーンズ博士に……この、任務を任された。
     本当だ、信じてくれ! 素直クールの過去の経歴について知らされ、高岡ドクオの消息を探るつもりだったんだ」

( )「では最終的な目的はその高岡ドクオだったんだな?」

(メ;Д) 「あぁそうだ……頼む、早く手当てを……」

( )「待て、これが最後の質問だ。これに正直に答えたら楽にしてやる」

81 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 04:10:55.13 ID:YJPrE2yU0

(メ;Д) 「なんでも話す……だから、早く……」

( )「"国家総合案内所"を知っているか?」

(メ;Д) 「な、なに……? "鮫島"だと? 貴様、一体何者……」

そこまで言いかけたところで、プギャーは急に苦しみ始めた。
身を悶えさせて胸と傷口を抑え、彼は泡を吹いていく。

( )「おい、しっかりしろ!」

覆面の兵士はプギャーの身体を押さえ、注射器を取りだすが……。

(メ;Д) 「ぐぅ……ぐぞがっ……」

薬を打つ間もなく、プギャーは息を引き取った。

( )「……逝ったか」

覆面の兵士はそう言うと、私に近づいてくる。

86 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/08/27(土) 04:17:03.36 ID:YJPrE2yU0

川 ゚ -゚) 「……」

次は私の番か?

身構え、いつでも抵抗できるようにしていると、
兵士は屈みこみ、右手を差し出してきた。

川 ゚ -゚) 「?」

( )「久しぶりだな、クー」

川 ゚ -゚) 「お前は、一体……?」


いや、まさか――――。


('A●) 「そう警戒すんなよ、俺だって。ドクオだよ」


覆面を取ったその素顔には、少年兵であった私の戦友の面影が残っていた。

                    ウォードッグ
そうか、お前だったのか――――戦争犬。

高岡ドクオ。

彼と再会した瞬間、不思議と私を取り巻いていた恐怖はどこかへと消え去ってしまっていた。


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