川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです

535 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 19:59:42 ID:zN5QyVS20

戦争犬に示され失われた道でも無く、
敵に屈する道でも無く、ただ現状に甘んじる道でも無い。

他者の思惑、他者の思想に寄らぬ、少女の選ぶ道とは。

彼女の選ぶ最良の選択とは何なのか――――


今はまだ、彼女自身もそれを知ることは無い。

悲しみ、苦しみ、怒り。

やり切れぬ思いに苛まれる彼女にはまだ見えてはこないが、
彼女はたしかに、ある道へと到達するべく落ち続けていく。

世界は、彼女の停滞を許しはせず、確実に動き続けていた。

536 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:04:06 ID:zN5QyVS20


         川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです



            第十三話 続・少女の世界

537 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:07:52 ID:zN5QyVS20

******

6月4日 0245―――――首都ニジ


人気の無い路地で合流した俺は薬を受け取るとすぐさま口にした。

水を飲む手間すら惜しい。

指先から頭の天辺までに至る激痛に、
縮小する肺が酸欠を起こす苦しみが耐えられず、
口の中で噛み砕いた薬を飲み下す。

零れ出る唾液はアスファルトを濡らし、嗚咽が漏れる。

まるで獣の叫びだ。

声だけを聞いた者にはそう聞こえたに違いない。

(,,ナД-;)「はあ゙!はあ゙ッ!ばぁ……ぐぅぅ」


飲んだ物は劇薬だ。
死人ですら脳が無事ならば効果が切れない限り生き続けるような危険な物。
ただし副作用も凄まじく、脳細胞への損害は計り知れない。

538 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:11:45 ID:zN5QyVS20

     「苦しかったろう? よく今まで生きていられたね。
      連絡を受けた時はびっくりしたよ」


建物の端に隠れた声の主の姿は見えない。
例え姿を現したとしてもこの暗闇では捉え難いことだろうが、
あの男のいけすかない微笑を思い浮かべることは簡単なことだった。

(,,ナД-;) 「煩いぞ、道化が」

     「強気だねぇー、今の君なら僕でも排除できそうだけど?」

(,;ナД゚) 「やって……みるか?」

     「……やめておくよ。僕の任務に支障が出ちゃうからね。
      これ以上勝手なことをされる前に始末するのも、悪くはないんだけど」

(,,ナД-;) 「フン、臆したか」

      「虚勢をはるのはやめなよ。それ以上寿命を縮めたら君の目的を果たせなくなっちゃうよ?
       君の脳は新たな身体を拒んでいる。"強化骨格"のプロトタイプとしては成功ではあるが、
       不完全なサイボーグ化であることに変わりは無い」

(,,ナД-;) 「……俺の身体は、あとどれくらい保つ?」

      「もって半年、身体を酷使すれば二か月も保たないだろう。
       不要な戦闘は避け、よく考えて行動することだね」

539 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:16:14 ID:zN5QyVS20

      「君は、僕に生かされているということを忘れずに、ね?」

(,,ナД゚) 「だったら、情報をよこせ。あの小僧はまだ生きているのか?」

     「生きてはいるよ。だが君との戦闘の負傷が深刻で、今も意識不明の重体だ。
      回復する可能性はあるにはあるが、彼らの手の中にあることは変わり無い」

(,,ナД゚) 「奴らはあいつをどうするつもりだ。消さないのか?」

     「意識と体力が回復次第尋問する。彼らはあの男が案内所について、
      自分達よりも多くの情報を得ていると考えている。
      情報を吐かせた後の処置は不明だ」

     「仮定の話だが、僕なら迷わず消すね。彼は案内所と戦っている気のようだが、
      実際はそれすらも案内所の手の平の上での出来ごとにしかすぎない。
      案内所の駒は潰しておくに限る」

(,,ナД゚) 「そうか……では、急がなければな」

     「……僕の話聞いてたの? 無駄な戦闘は避けろと言ったはずだけど」

(,,ナД゚) 「復讐だ。復讐をするのだ。今、仇を俺の手で討ち取る機会が永久に失われようとしている。
      動かねばならない。こんな身体になってでも、
      仲間達の死を背負ってでも生き続ける俺の存在理由が、失われようとしているのだからな」

     「やめておきな。君の仇は、彼だけじゃないだろ?」

(,,ナД-;) 「だが、シャキンを殺めたのは、しぃを殺したのは……アイツだ」

540 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:20:18 ID:zN5QyVS20

      「二人の死体を君と同じように非人道的な技術を以ってサイボーグにしようとし、
       失敗してただの産業廃棄物にした案内所は、どうするつもりなんだい?
       "彼ら"を退けてでも戦争犬を殺害し、負傷した君は、健在である案内所を許せるのかい?」

      「それ以上の損壊を負った君に案内所が倒せるとでも?」

(,,ナД-) 「やるしかない。不可能であっても果たさなければならない。
      それが機械の足で歩む、俺の道だ」

     「戦争犬を君の手で殺害する機会はまだある。今はその限りある寿命を使って虎視眈々と時を待ち続けろ」

     「望みを果たす時は、今では無い」

(,,ナД-;) 「……ッ!」

     「まぁ気持ちはわかるよ。指定したセーフハウスで休むと良い。
      君のメンテナンスを行うメカニックも、そこに派遣している」

(,,ナД゚) 「……案内所に裏をかかれてはいまいな?」

     「あぁ、大丈夫さ。安心してくれ。僕の手で君が生かされているということは、
      僕は君を全力でサポートし何とかして生き長らえさせようとしている、ということでもあるんだよ?」

     「少しは信頼してくれ」

ふぅ、と溜息をつくのが聞こえてきたと思えば、
足元に丸められた地図が転がってきた。

541 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:24:06 ID:zN5QyVS20

それを拾うと、

     「虚無に飲み込まれることなかれ。
      君のその力は国家に巣くう大いなる虚無によって生み出され、虚無を切り裂くことを君は選んだ。
      機械の足で迷わず駆けろ――――道は示されているよ?」

言葉をかけられ、気配が消えた。

(,,ナД゚) 「……分かっている」


任務は、自らに課した使命はただ一つ。

復讐の達成。

戦争犬と国家総合案内所のこの世からの抹消。
奴らを抹殺し、しぃとシャキンの無念を晴らし、
自らの胸の内を支配する虚無を晴らすこと。

ただそれだけだ。

(,,ナД-;) 「……ッ!」

その為に歩を進めるものの、一歩を繰り出す度に訪れる激痛に思わず眉を顰めてしまう。

542 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:27:44 ID:zN5QyVS20

……だが。

心に蔓延る虚無が俺を癒してくれる。
あの小僧に、案内所に一歩近づいていく度に、
脳が機械の身体を否定する苦しみが和らいでいくのだ。

戦争犬と呼ばれた小僧との戦闘には喜びだけがあった。
しぃとシャキンを殺した奴を地獄に叩きこめる、その高揚感が俺を強くさせる。

不完全な機械の身に与えられた、完全なる殺人機械となれる瞬間。
 
                      "まみ"
(,,ナД゚) 「もう一度、あの一瞬を。次に見えるまで、生き延びて見せろ戦争犬」


猛獣が獲物を前にして呻りをあげるような感覚。
心からこみ上げてくる笑い。


(,,ナ∀゚) 「死ぬな、死ぬな戦争犬!」


(,,ナ∀゚) 「俺がこの手で貴様に死を与えるまではッ! 貴様の死を俺に味わわせろッ!!」


また仇敵と対峙できる喜びに豪笑が口から放たれた。
笑い声が、深夜のニジの街に木霊していく。

543 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:30:57 ID:zN5QyVS20

******

6月4日 9時20分――――ダーウィン社の研究室の一室


朝礼を終えるとすぐに私は特殊研究室へと向かった。

もし万が一事故を起こした場合でも外部へ被害を及ぼす事の無いよう、
幾重もの隔壁に覆われたそこは、警備も厳重であり機密保持にも最適である。

他の研究室よりも遥かに広く、三つの区画に分けられており、
兵器の実験、研究、製造と三つの工程を全てそこだけで行う事が可能だ。

軍に持ちかけられた依頼を、
私に押し付けた社長から与えられたVIPルームというわけだ。

川 ゚ -゚) (カコログ粒子とは―――)


金庫に保管しておいた軍から渡されたファイル。
重要機密情報のびっしり詰まったそれを開いていく。

表に出たあらゆる虚偽が裏の真実によって無知だった私に知恵を与えた。

544 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:36:33 ID:zN5QyVS20

川 ゚ -゚) (もっとも容易な運用方法は、その粒子を強化したい物体を充てること。
      昨日見た実験映像の通り、マガジンにカコログ粒子を充填し弾丸に触れさせる。
      しかし威力の調整が難しく暴発する可能性がある)


机の上に置かれた、カコログ粒子の入った試験管を納める、
絶縁体を加工して作られたトランクを見る。

カコログ粒子が漏れ出ていた場合、僅かな静電気や摩擦が生じただけで爆発する危険がある為、
それは厳重に保管されていた。

川 ゚ -゚) (次に第二の運用方法。物体と共に放ち、その運動エネルギーを強化する。
      あらゆる物体を強化するという性質から、微量のカコログ粒子を射出される物体に充てることで、
      物体は強化される。ただし暴発の可能性が高く、精密な装置を必要とする為大型化は免れない)

川 ゚ -゚) (では、今回の依頼の品である、歩兵が携行可能な小型兵器には、この方法を使えないな)

川 - -) (対装甲服用の装備。現基準における丙種装甲の破壊を可能とした武器……か)


カコログ粒子の運用に軍が30年もかけた代物に、私が挑戦しなければならない。

軍がかけた30年には、装甲服の開発、AAの量産など、
他に時間と労力を割くべき重要課題があり、現在に至るまで放置されてきた背景はあるが、
更に自分の有用性を知らしめる良い機会であることに間違いは無い。

しかしこれは軍の、いや、もしかしたら案内所の策略の可能性がある。
奴らは純粋水爆と核搭載型AAを開発した私を、捕らえるのではなく、利用しようとしている。

545 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:40:57 ID:zN5QyVS20

私がダーウィンにいる限り、奴らが仕事を依頼してくればこなさなければならない。
10年前カラマロスDNを"戦争犬"と共に脱出した、素直クールであると知っての依頼だ。
させたい仕事を引き受けると言うのならば、無理に拘束する必要はもはや存在しない。


奴らにとってのデメリットは機密を開示しなければならないということだが、
ダーウィンにまで案内所の手が伸びていると言うのならば、特にデメリットと呼べるような物もないだろう。

もし内部告発する者が現われたとしたら、その前に"行方不明者"が出るだけのことだ。


川 - -) (かつて私が選んだ、案内所と接触する為の道。これほどまでにハマりこんでしまっていた、とはな……)


後悔は無い。

奴らの一部にされようとも、ここで私が性能の良い兵器を作り続ければ、
それだけ前線の兵士達の命は救われる。

敵兵士の命を私の兵器が奪う事によって。

546 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:43:52 ID:zN5QyVS20

川 ゚ -゚) (それが私の選択で、戦いだ)


ドクオの失踪も、失われたかもしれない約束も、関係は無い。

私は私で戦い続ける、それだけだ。


……でも、彼の身を案じる自分もいる。

脳裏に蘇ろうとする忌々しいフラッシュバックとビジョンを、
目の前の仕事に没頭することで掻き消す事もまた、苦しい戦いであった。

  _,
川 - -)y━ 「……」

そんな時はタバコを吸うのが、私の覚えた苦しみに対する処置法だ。

スーツの上から羽織った白衣のポケットから血塗れZIPPOを取り出し、着火する。

547 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:46:23 ID:zN5QyVS20
  _,
川 - -)y━~~ (……向こう側の原案としては、刀剣類を加工するつもりだったようだな。
           これなら単純な機構で済む上に、トーチカの破壊にも扱える)

吸いこむと同時に辛みがきた。

じりじりと舌を刺激され、初めは咳き込むほど苦しかった煙も、
今では心地の良い香りとなって口腔を満たしていく。

疲労した脳をほぐしていくような快感がささくれ立った心に安らぎをもたらせ、
過去に囚われかけていた意識を現実へ引き戻した。
  _,
川 - -)y━~~ (こちらも"機械剣"として装甲服用の装備を考えていたところだ。
          その案を流用してこちらを完成させるか。
          たしか、後日製作途中であった物のコピーを送ると言っていたが……)


没頭する。

浮かんでくるものはビジョンではなく、作りあげようとした機械剣の姿。

その3パターンの構成。

一つはマイクロ波を刀身に当ててその切断力を強化した高周波ブレード。
一つは刀剣の柄に発電機関を備え刀身を高温によって灼熱化するヒートブレード。
そしてもう一つは、夢想の粋を出ない実現不可能な剣。

548 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:49:36 ID:zN5QyVS20


数種類の物質を登録し、センサーによって対象物を捉えると、切断するのに最適な物質へと変化させる――――

 "ユニバーサルブレード"
  万能型刀剣

   _,
川 - -)y━~~(我ながら阿呆な物を思いついたものだ。
        一体どうやって作りあげるつもりだったのやら……)


そんな妄想の産物に内心苦笑しながら、ヒートブレードを採用することに決めた。
問題は装甲を溶断するほどの高熱に耐える刀身を製作するのが難しいことぐらいだ。

機械剣製作のプロジェクトを任せているヒッキーが、
試作段階では完成したものの、長時間の使用に耐えうる品は作れないと嘆いていた姿が思い返される。

川 ゚ -゚) 「軍が試作品を送ってくるまで、様子見するか」


携帯灰皿を出して短くなったタバコの火を消すと、
読んでいたファイルを机に置き、持ちこんだノートPCを立ちあげた。

ファイルに納められていたUSBを差し込み、動画データを読みこませる。

プレイヤーが起動され、カコログ粒子を運用した試作品の数々の実験映像が映しだされていく。

549 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:55:17 ID:zN5QyVS20

昨日のM16から、レールガンなどが火を噴いてる光景が、
カコログ粒子の輝きにより目に焼きつくような感覚を覚えさせた。

映像は多く、30年分の歴史が詰まっているようだ。
しかしそこで好奇心が生まれた。"物質を強化する"という特性が兵器に新たな可能性をもたらしたのだ。
様々な兵器を見ていく内、カコログ粒子について疑問が生まれだしていく。

カコログ粒子にはまだ、明かされていない謎があるのではないか、と。


川 ゚ -゚) 「……?」

そう思案していた頃、内線電話が鳴りだした。

動画の再生を止めてから受話器を取ると、

爪'ー`) 『素直くん、そろそろ戻ってきたまえ。
     もう昼休憩は過ぎているぞ?』

川;゚ -゚) 「あぁ、そうでした……」

爪'ー`) 『作業を中断してすぐ戻ってこい。休憩をとりなさい』

550 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:58:29 ID:zN5QyVS20

川;゚ -゚) 「あ、いえ。問題はありません。このまま作業を続けます」

爪'ー`) 『休憩も兼ねて報告したいことがあるのだ。昨日の会議室にきたまえ』

川;゚ -゚) 『了解です……ありがとうございます』


通話が切れると、腕時計が目に入り時針が13時を指していた。
没頭するあまりに時間を忘れてしまってたらしい。

……危うく、フォックス課長の配慮がなければ昼食を取り逃すところだった。

待たせるわけにはいかず、厳重なロックのかけられた扉をくぐり、
私は昨日軍の研究者と会話した会議室へと急いだ。

551 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 20:59:15 ID:zN5QyVS20

******

6月4日 13時16分―――――会議室


川 ゚ -゚) 「すいません、お待たせしました」


从'ー'从 「あ、クーにゃん」


会議室の扉を開くとそこには、渡辺とフォックス課長がいた。

愛想の良い二人の間には穏やかな空気が流れていて、
休憩をとっていたという風情だった。


爪'ー`) 「来たかね。まぁ座りなさい」

川 ゚ -゚) 「はい」

从'ー'从つ△ 「クーにゃん、はいお昼のサンドウィッチ」

川 ゚ -゚) 「ありがとう、だが……」

爪'ー`) 「構わんよ、食べながら聞きたまえ。あまり時間は無い」

552 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 21:03:12 ID:zN5QyVS20

川;゚ -゚) 「はぁ、申し訳ありません……」


早速サンドウィッチのセロファンを取り外し口へ放り込むと、

从^ー^从つ□ 「はいコーヒー」

川;゚ -゚) 「ありがとう……後でお金渡すよ」

爪'ー`) 「私の奢りだ」

Σ川;゚ -゚) 「す、すいません……」

从^ー^从 「太っ腹だよね〜。私も奢って貰っちゃった。さすが課長!」

爪'ー`) 「私は細身だ。このくびれを見ろ」


スイッチが入ったのか課長は立ち上がり、スーツをはだけさせて身をくねらせた。
50代を前にした中年にしては、たしかにほっそりとしている。
贅肉はなく、Yシャツには皺一つ見つからない。

川 ゚〜゚) 「……」もっきゅもっきゅ

サンドウィッチ、うま。

557 名前:◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 22:22:16 ID:zN5QyVS20

从'ー'从 「そう、ですね」

爪'ー`) 「断じて太っ腹ではない」

言いつつ着席する課長。
穏やかな雰囲気の中に冷気が流れ込む感触。

 川 ゚ 、゚) 「……」ズズズ
 |⊃□⊂)

コーヒーうめぇ。


爪'ー`) 「さて、報告というのは君の抱えている仕事についてだ。
     先方に問い合わせてみたところ、
     君の希望通り、渡辺君もこのプロジェクトに参加出来るようになった」

从'ー'从 「クーにゃんから指名貰っちゃうなんてね。軍の機密に関わる仕事なんて、面白そう」

川 ゚ -゚) 「渡辺には既に説明を?」

爪'ー`) 「あぁ、だが君からも説明をしてやってくれ。
     進捗状況も兼ねてな。しかし、本当に二人だけで良いのか?
     先方も心配していたぞ?」

川 ゚ -゚) 「問題はありません。設計の見通しは出来ました。
      二人でも充分にこなせるでしょう。ですが、本来私が携わる予定であった、
      機械剣のプロジェクトのほうは小森に任せてしまうことになります」

553 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 21:06:08 ID:zN5QyVS20

爪'ー`) 「うむ、元からそう言う話だ。君達は依頼の方に専念したまえ。
     機密情報を取り扱う複雑な依頼だ。細心の注意を払え」

川 ゚ -゚) 「了解」

川 ゚ -゚) 「話は変わりますが、課長。
     先方に一つお願いしたいことがあるのですが、連絡をとって頂けますか?」

爪'ー`) 「出来るが……どんな頼みだ?」

川 ゚ -゚) 「カコログ鉱山の調査を私にさせてください。
      あの粒子について更に理解を深める為にも、
      現地の地理や環境、そして採取される前の粒子について調査したいのです」

爪'ー`) 「ほう、なるほど。軍に閉鎖されている為、個人ではいけないしなぁ……」

爪'ー`) 「了解だ、先方には私が伝えておこう。渡辺君も連れて行きたまえ」

从;'ー'从 「私もですか? 許可下りますかねー……」

爪'ー`) 「このプロジェクトに携わる君達二人程度なら、先方も快く承諾してくれるだろう」

川 ゚ -゚) 「だといいのですがね、お願いします」

爪'ー`) 「すぐにでも連絡を取ってくる。期待して待っていたまえ。
     私はオフィスに戻る。君達も業務に戻りたまえ」

川 ゚ -゚) 「了解」

554 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 21:08:46 ID:zN5QyVS20

答えを聞く間もなくフォックス課長は会議室を出ていき、オフィスへと帰っていった。
残った私は渡辺のほうを振りかえり、

川 ゚ -゚) 「渡辺、いきなりのことですまなかったな」

从'ー'从 「うぅん、大丈夫だよ。それよりクーにゃんのほうこそ大丈夫?」

川 ゚ -゚) 「私か?」

从'ー'从 「昨日、なんだか調子悪そうだったじゃない。早退してたし」

川 ゚ -゚) 「あぁ知っていたか。昨日はなんだか体調が優れなくてな」

从'ー'从 「……」

川 ゚ -゚) 「……」


渡辺の視線には疑惑が孕んでおり、
見透かされているのではないかと不安に駆られもするが、


从^ー^从 「そう」


いつも通りの笑顔を作り出した彼女に、内心安堵の息を吐いた。

555 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2012/02/05(日) 21:11:48 ID:zN5QyVS20

从'ー'从 「でも、何かあるんだったら、絶対私に言ってね。
      力になってあげられないとしても、クーにゃんの味方にはなってあげられると思うから」

その言葉にどれほどの意味を持っているのか、わかっているのだろうか。
私の敵がいかに強大にして不可視であることを知った時、
彼女は今と同じことを言ってくれるのだろうか。

軽薄で力の無い言葉だ。
それでも、

川 ゚ー゚) 「ありがとう、渡辺。いつか、話せる時がきたら話すとするよ」

ただそれだけの言葉に胸の内に広がる虚無が、蹴散らされていくような気がした。


从^ー'从 「あ、やっぱり何か隠してるんでしょう?
      いつか話してくれるんなら、まぁいいけどねー」

……そう、これが私が彼女を選んだ最大の理由。

技量を持ち、優しく、信頼できる者と言えば彼女を他に置いてはいない。
渡辺がいてくれれば例え過去のビジョンとフラッシュバックに襲われたとしても、
耐えられる気が、今はした。


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