川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです

2 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:09:43.28 ID:GZA3Xhr80

少し昔話をしよう。

舞台は十年前のカラマロスDNだ。

これは、戦争犬とハインさんにGJの皆と、私の出会いの物語だ。

そしてあの戦争犬の受けた心の傷と、失った左目の謎を紐解く物語でもあり、
私が家族を失い、新たな友に支えられて生を得る物語でもある。

私とドクオは、この時から走り始めていたのだ。

各々の戦場を、各々が守りたい者の為に。

3 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:12:00.37 ID:GZA3Xhr80



       川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです



    第六話 川 ゚-゚) 少女と戦争犬が駆け抜けていくようです(・A・)

6 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:15:46.34 ID:GZA3Xhr80

******

5月31日 11時40分―――9'scafeにて。

外に看板が立てられているのを見ると、
その店が待ち合わせ場所の9'scafeであることがわかった。

店の中に入るとテーブルなどが全て木造で統一されていた。
木の温もりに包まれることで、安心感を覚えるような気がする。

シックな店だな、と思った。

∫ハ*゚ヮ゚ノル 「いらっしゃーい! ご注文は何にしますかー?」

私はカウンターに立ち、ブレンドコーヒーを注文した。
すぐにコーヒーが淹れられ、砂糖とミルクを一つずつ持って壁際の入り口から一番遠い席に着く。

川 ゚ -゚) (それにしても、客が少ないな)

バッグから小説を取り出し、ブラックのままコーヒーを一口すすってから開く。

苦いが、香りが心地良い。眠気覚ましには充分だった。
昨日はあまり眠れなかった。何せ、7年ぶりに話す事になるんだ。
聞きたいことはたくさんあるし、気分がとても高揚していた。

思えば、十年前に出会い、それから三年の月日を共にしただけだというのに、
私はどうもあいつに思い入れしすぎているような気もする。

だが、彼が特別な存在であることに変わりは無い。十年前、全ては十年前に起こったあの戦争が発端だ―――。

8 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:21:30.78 ID:GZA3Xhr80
******

5月31日 1230―――車内にて。

昨日レールガンに吹っ飛ばされた車に代わり、俺はエクストの車を借りた。

時間があれば買い直すのだが、今はそんな暇は無い。
事情を説明するとエクストは快く貸してくれたのだが、
何故かニヤニヤしているのが非常に気に食わなかった。

<_プー゚)フ「良いか! 大切に、傷つけないように乗ってくれよ!!」

と、釘を刺すように言ってきたが、そう言いたくもなるだろう。
エクストの持っている車はお高級なスポーツカーだったのだから。
ファラーリの赤いディーノだった。傷は無くピカピカで、家に帰ると毎日洗車していると語っていた。
車内も清潔にして、タバコを吸うならちゃんと窓を開けて、吸った後はファブリーズをかけろと言われた。

<_プー゚)フ「後な! お前、久しぶりに会ったからって、燃え上がってカーセック……」

('A●)≡つ#;)メメー*)フ・;゙.:ブフォ

調子に乗っていたのでとりあえず殴っておいた。

('A●)y━~~ 「ふぅ……」

言われた通り窓を開けて、俺はタバコを吹かした。

しかし、十年ぶりか。もう遠い昔のことに思えるな……。
あの日、あいつが偶然発見されていなければ、こんなことにもなっていなかっただろう。
思えば俺の戦いが始まったのは、十年前のあの時からだった――――。

12 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:25:47.59 ID:GZA3Xhr80

******

1966年 9月20日 1432――――カラマロスDN。

空爆を受けて戦場となったカラマロスDNの中央へ、GJと呼ばれる特殊部隊は辿りつく。
彼らを乗せた装甲車は市街地にはいると停車した。

そこで装甲車から降りた彼らは、二つの小隊に分かれ一隊はここに待機する。

残る一隊は偵察を行う為、市街地の北部へと向かって進んで行った。
ビル群は空爆によって倒壊しており、
一際大きなビルが真ん中から折れてその内部を晒していた。

家々は吹き飛ばされて廃墟となり、炎がそこに燃え盛っていた。
快晴で日差しは強く、風は秋らしく涼しげだ。

しかし倒壊したビル群に近寄っていくとゆらゆらと揺れる火が肌を熱し、
先頭を進む少年兵の額から汗を一滴流させた。

(・A・) 「異常無し。敵の姿は確認できず」

廃ビルの端から周囲を窺った少年兵、高岡ドクオは仲間達にそう伝える。
その背後に立つ大柄な兵士、ブーンがドクオの肩を叩き前進を命じた。

ドクオの進む先は向かいの廃ビル群だ。

素早く移動した彼らの隊列は、最前列をドクオ。
その背後にブーンとビコーズが続き、モナー、ハインリッヒ、
ペニサス、アサピー、ジョルジュ、ツーと続いた。

15 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:29:28.99 ID:GZA3Xhr80

物影に入り込み、前屈姿勢で進むドクオは、
ビルの端にまで辿りつくと銃を左右に振るった。
敵の姿を探し、確認できなかった彼は異常なしと叫ぼうとした。

が、その奥先に彼はある物を発見した。

瓦礫の山だ。
そしてそこから300m程離れた地点には土嚢が積み重ねられており、
塹壕が築き上げられつつあった。

瓦礫の山をよく目をこらして見れば、数人の兵士がいるのがわかった。

(・A・) 「いや、瓦礫の山に数名の兵士を発見。ここからでは確認し難い。
    そして敵の塹壕を発見した。敵が潜んでいる可能性が高い」

从 ゚∀从 「あそこに屋根の残った廃屋があるな?
       あそこからなら見えるだろう。移動するぞ」

ハインリッヒが命令を下し、ドクオはそれに従って行動を開始した。
姿勢を低くしたGJの隊員達は、構築物の半分が抉られた廃屋へと移動し、
瓦礫の積み重なった場所を通って中へと移動していく。

辛うじて残った壁に隠れ、ブーンが敵を確認した。

( ^ω^) 「瓦礫山の周辺に五名。塹壕に四名。計九名を発見。
       恐らくこの先が敵の領地になっているはずだお」

17 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:32:54.18 ID:GZA3Xhr80

从 ゚∀从 σ「散開するぞ、このままじゃカモだ。
        ブーン、ビコーズ、ツーはアタシについて来い。あのビルまで移動する。
        他の者はアタシらが移動を終えるまでここで待機。合図と共に攻撃開始だ」

ハインリッヒが崩落したビルを指差す。

その廃ビルは恐らくは7階建てだったであろうものであり、
表から見る限りでは4階までは昇っていけるように思えた。
そこからならば戦場を見渡す事が出来、丁度GJの隊員達のいる廃屋の死角をカバーすることが出来る。

指名された三名は先頭を切るハインリッヒに続き、ビルまで移動していく。

残るメンバーを副隊長であるモナーが指揮し、
ドクオとアサピーとペニサスが正面を、
モナーとジョルジュが左右に展開して身を隠す。

号令があればすぐにでも射撃を行えるように、彼らは身構えていた。

(・A・) 「……」

(-@∀@) 「ドクオ、気をつけろよ。お前はハインリッヒ少佐の弟子である前に子供だ」

(・A・) 「僕を過小評価するな」

少し苛立ったような目をして、ドクオはアサピーを見た。

まだ幼い12歳の少年の眼に似つかわしくなく、
その眼は鋭利で刃のようにギラついていた。

20 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:35:35.41 ID:GZA3Xhr80

(-@∀@) 「過小評価しているわけじゃあない。心配しているのだよ、君を」

(・A・) 「僕を信頼していないからじゃないのか?」

(-@∀@) 「そんなことはない。ただ心配なんだ。
       あの、少年兵らしい戦い方をまた君がするんじゃないかと思ってな」

(-@∀@) 「ドクオ、ハインさんからも教えられただろうが、あんな戦い方は忘れろ。
       命を捨てる特攻が必要な状況は、磨きに磨いて技と経験で覆せ。
       お前は少年兵であってもう少年兵じゃない。お前は、私達の一員だ」

(・A・) 「あぁ、そのつもりだ」

(-@∀@) 「頼むぞ、子犬君」

子犬というのは、ハインリッヒに拾われたドクオに付けられたあだ名だった。

戦争の犬共に飼われ、戦場で戦う姿を揶揄された物でもあるが、
ハインリッヒは「可愛いじゃねえか」と言って好んで呼んでおり、
それが部隊の中で浸透した結果、彼の通称は子犬で通るようになったのだ。

24 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:37:53.75 ID:GZA3Xhr80

部隊の者達を包み込む空気が、一層鋭くなっていく。
皆、何時でも仕掛けられる状態だ。

     『へっ、敵が丸見えだぜ〜』

モナーの持つ無線機からハインリッヒの気楽な声が聞こえてきた。

( ´∀`) 『到着したモナか?』

      『ビル内部に侵入した。階段が崩れていて4階までしか登れなかったが、
       ここからでも充分敵が見える。お前等の向かいに見える瓦礫の山の影に4人。
       このビルの正面の塹壕に6人、見えるだろうが、お前等の正面に5人だ』

      『数の上では不利だが、奇襲をしかけてやれば充分やれる。
       ましてやお前等の腕なら当然であり、遠く及ばない物だ。やってやれ!』

      『攻撃開始!』

その命令が下されると同時、一斉に銃声が響きわたって身を震わせる大音となった。

音に遅れて、瓦礫の周辺を巡回していた兵士が4名と、
陰に隠れていた兵士が2名倒れていき、次いで塹壕に立つ兵士達が2名と続々と倒れていった。

27 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:40:35.04 ID:GZA3Xhr80

驚きの悲鳴が上げられる。痛みに上げられる悲鳴は無く、倒れたほぼ全ての者が即死した。

ある者は額を、ある者は左胸を綺麗に撃ち抜かれ、声を上げる間もなく絶命していく。
肉片が飛び散り、血飛沫が宙をまって血の海を作りだしていった。

      『戦場は地獄だぜ、ホント』

気楽に言うハインリッヒの声がモナーへ無線越しに届き、モナーは笑みを浮かべて言う。

( ´∀`) 『だから僕らはアンタに付いていくんだモナ、ハイン』

       『とんだ馬鹿野郎だぜお前らは。油断すんなよ!』

薬莢が跳ね跳び、金属音が廃屋内に木霊する。

兵士達の構えるM16からマズルファイアが発され、弾丸が吐き出されていく。
それは確実に敵の肉を穿ち、無力化していった。

30 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:43:22.60 ID:GZA3Xhr80

******

カラマロスDN北部廃ビル付近――――1520

壁に銃弾の雨が見舞われ、鈍い音と共にコンクリート片が散っていく。

崩れかけたビルの傍に身を覗かせたブーンは、
ブロックと砂袋で作られた塹壕へと攻撃を加えていた。

しかし、その弾丸は当たることなく、砂袋に弾けて砂を撒き散らかせる。

( ^ω^) 「おっおっお、どんどん現れてきやがるお。
       グレネードでぶっとばしてやりてーお」

( ^ω^) 「リロード!」

銃を構えていたブーンは身を引かせていき、
リロードを行い始めるとビコーズが入れ替わった。

( ∵) 「……」

ビコーズが塹壕へと向けて射撃を行うと、兵士が一人腹部に銃弾を受けて倒れた。
倒れた兵士を介抱し、衛生兵がその場から離れていこうとする。

32 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:47:51.43 ID:GZA3Xhr80

( ^ω^) 「ナイスだおビコ。グレネード!」

いつの間にか手榴弾を取り出したブーンはピンを抜いて放る。

綺麗な放物線を描いていったそれは、
引きずられていく兵士の傍に落ちて衝撃波を生む。

腹の奥底に響く爆音が立ち、灼熱に身を焼かれる兵士もあれば破片に身を引き裂かれる兵士もいた。

4名の兵士が吹き飛ばされたが、次々に兵士の増援が現われていく。

その数は6。

(;^ω^) 「キリがねーお! マザーファッカー共め!!」

ブーンは身を表し、発砲すると兵士が一人倒れた。
ビコーズも一名を射殺するが、如何せん数が多い。

(;^ω^) 「え、ヤバッ! ビコ退避するお!!」

( ∵) 「……ッ!」

ブーンは手榴弾を持った兵士を発見すると慌ててその場を離れようとする。
踵を返す頃にはそれは放り投げられ、銃声が鳴ると空中で爆発した。

35 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:50:22.35 ID:GZA3Xhr80

(;^ω^) 「ッ! 少佐かお」

ビルに潜んだハインリッヒが、手榴弾を狙撃したのだ。

息つく暇も無しに弾雨をビルから浴びせられ、
兵士達は頭に受け足に受け、肉を抉られていった。

降り注ぐ銃弾によって砂煙が生まれていく。

ビルから繰り出されるツーの構えた軽機関銃の射撃に、兵士達はそこで気付いた。
位置を把握した兵士達は彼女達を狙うが、
ブーンとビコーズの放つ弾丸に身を晒してしまう。

追撃。

ブーン達に容赦などは無く、隙を見せた兵士達は呆気なく殲滅されていった。

36 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:54:09.54 ID:GZA3Xhr80

数分が過ぎた頃。

その辺りで立っている者はもはやブーン達以外にはいなくなっていた。

銃を構えながら油断の無い視線で塹壕を確認する。

砂煙が晴れていくと、そこにはやはり敵兵は残っていなかった。
その場に残された者は、大量の亡骸だけだ。

( ^ω^) 『クリア。残存兵なし』

ブーンはヘッドセットに声を吹きこむと、ハインリッヒがそれを受けた。

       『了解だ。こちらからも敵兵は確認できない』

( ^ω^) 『おっおっお、少佐、指示を』

       『いや、ちょっと待て……』

一拍の間が空くと、再びハインリッヒの声が返る。

       『ブーン、緊急事態だ――――』

39 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 21:57:47.24 ID:GZA3Xhr80

******

カラマロスDN北部 廃屋付近―――――1520。

真っ青な空の下で銃声が響きあう。

屋根が辛うじて残された廃屋からドクオ達は銃を撃っていた。
瓦礫の山の正面に立つ兵士達は既に全滅しており、
GJの攻撃に気付いた敵兵は瓦礫へと慌てて身を隠し、ある者は反撃する。

(・A・) 「一人仕留め損ねているぞ!」

倒れた兵士が身を這って射線から逃れようとするのを、ドクオは無情にも撃ち殺した。
少年の瞳は無機質であり、敵兵をただの肉の塊としてしか認識していなかった。

物影に隠れた敵兵も次第に無力化されていき、

(-@∀@) 「もう一人残っている」

ドクオを狙った敵の額をアサピーが撃ち抜く。

衝撃に身を仰け反らした兵士の銃は天を仰ぎ、誰も撃ち抜くこと無く連射されていった。
冷静に呟いたアサピーは、爆破されたことで生まれた巨大な壁の穴から身を引き、次なる敵を探す。
ドクオは瓦礫の山を駆けあがってきた兵士を一名射殺し、同じく身を引かせる。

(・A・) 「リロード!」

空になったマガジンを取り出し、既に弾が込められた別のマガジンを薬室に叩きこむ。
弾を補充したドクオ身を乗り出して銃を構える。

42 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:00:42.15 ID:GZA3Xhr80

引き金が引かれると瓦礫から身を覗かせた敵兵の頭が撃ち抜かれた。
その間にアサピーは身を引かせてリロードを行う。
ドクオは時間を稼ぐために牽制の射撃を送り続けた。

すると、

(-@∀@) 「グレネードを使うぞ!」

手榴弾を手に取ったアサピーがピンを抜き、放り投げた。
瓦礫ごと敵兵を吹き飛ばす爆発が起こり、
四名の兵士が死亡し、数名の兵士が瓦礫から飛びだしてくるのをドクオは見た。

即座に撃ち抜き、撃たれた兵士は力を失って倒れていった。

ドクオ達GJの前に圧倒されていく兵士達。
生き残ったのはたったの二名だった。
兵士達は後退していき、瓦礫の山の後ろに隠れると無線を取り出して援軍を呼ぼうとする。

( ´∀`) 「ドクオ! 奴らがクソ共を呼び出す前に始末するモナ!! 援護する!!」

モナーが叫ぶとペニサスと共に牽制の射撃を後退した兵士達へ送る。
間断なく浴びせられる弾雨に、兵士達は反撃できなくなってしまう。
攻撃の手が止むのを待つ兵士達。

だがその隙に、ドクオは廃屋から飛び出して駆け抜けていく。
兵士達の移動した場所の反対側を進んで行くと、瓦礫の陰から様子を窺う。

43 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:05:37.74 ID:GZA3Xhr80

すると彼は敵兵を二名発見した。

ドクオは息を潜めて敵の頭に照準する。
引き金に指をかけ、倒すとけたたましく鳴り続ける銃声に、新たな銃声が加わった。

二度引き金が引かれた。

敵兵の頭に、血の花が咲いていった。
脳漿と血の入り混じった液体が地面にぶちまけられていき、身を横たわらせる。
確認するまでも無く、ドクオは死亡したことを悟った。

敵の生き残りに警戒しながらドクオはモナー達の所へ戻っていく。

( ´∀`) 「よくやったモナドクオ」

(・A・) 「敵戦力は確認できなかった」

( ´∀`) 「こちらも把握しているつもりモナ」

モナーは無線機を手に取り声を吹きこむ。

( ´∀`) 『少佐、こちらは戦闘を終了したモナ。敵残存戦力は確認出来ず。指示を』

       『終わったか。こちらももうすぐ片付く。その場で待機していろ、警戒を怠るな』

( ´∀`) 『了解モナ』

46 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:10:20.86 ID:GZA3Xhr80

無線を切り、その場で待機するようモナーは指示を出そうとするが、
彼へと焦りの籠った声をかける者がいた。
  _
(;゚∀゚) 「大変だ大尉! そばの瓦礫の下に誰かが埋まってる!!」

( ´∀`) 「要救助者? 本当かモナ?」
  _
(;゚∀゚) 「本当だ! 戦闘中に声を聞いたんだ!!」

( ´∀`) 「むう……今のとこ時間はあるが、敵の増援が来るかもしれんモナ……」

(-@∀@) 「大尉、私は反対です。私達の任務は敵拠点の捜索、殲滅です」
  _
(;゚∀゚) 「軍人が民間人見捨てるってのか!?」

(-@∀@) 「違う。我々の仕事ではない、それだけだ。
       作業中に敵が現れたら私達は全滅だ」
  _
(;゚∀゚) 「ならなおさらだ。こうしている間にも敵が―――」

(-@∀@) 「ではジョルジュ、お前はその負傷した民間人を抱えてこの戦火を潜り抜けられると思うか?
       その助けられたかもしれない命も、私達の命もここで散ることになるのだぞ?」
 _
(#゚∀゚) 「じゃあ! 救助がくるまで要救助者が生きているって保証はあんのかよ!?」

(-@∀@) 「我々がいるのは戦―――」

( ´∀`) 「二人とも、議論はそこまでにするモナ。今、少佐に指示を仰ぐ」

49 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:14:36.87 ID:GZA3Xhr80

モナーは空いている手で二人を制し、もう片方の手にしていた無線を使って、
ハインリッヒの応答を待っていた。

       『こちらW1。どうした?』

繋がった。W1とはコールサインであり、Wとは"warrior"を指す。
その一番ということは部隊長であるハインリッヒを意味していた。

( ´∀`) 『こちらW2。少佐、厄介なことになった。要救助者を発見したモナ』

       『人数は?』

( ´∀`) 『瓦礫に埋もれていて確認できないが、恐らくは一名モナ』

       『瓦礫を撤去する必要があるか……敵影は?』

( ´∀`) 『確認できない。だが、増援がいつやってきても可笑しくは無いモナ』

       『そうかい……じゃあ救助を頼む。発見者は?』

( ´∀`) 『ジョルジュモナ』

       『ならお前とジョルジュが救助を行え。撤去作業にブーンを向かわせる。
        工具は無いんだ、不可能だと判断したら中止しろ』

( ´∀`) 『了解モナ。では残りの隊員は?』

50 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:17:34.68 ID:GZA3Xhr80

       『アタシがそちらの指揮をとる。ドクオにジョルジュのライフル持たせてこちらに送れ。狙撃を任せる』

( ´∀`) 『スポッターは誰が?』

       『アタシの弟子だぞ? 奴の腕は近いうちにジョルジュの域にまで到達するだろう』

( ´∀`) 『少佐、貴方少し親バカ入ってるモナよ?』

       『冗談で言ったわけじゃねぇんだがな。ドクオなら問題は無い』

( ´∀`) 『了解モナ。 OVER』

モナーは無線を切り、睨み合うジョルジュとアサピー、そしてペニサスとドクオを見据える。
常に笑みを浮かべているように見える、彼の顔を見る隊員達には緊張が走っていた。
それでいて落ち着いており、冷静に彼の口から命令が放たれるのを待つ。

だが、ドクオだけは彼の言葉を待ちながらも敵を警戒し、周囲を索敵しているようであった。
GJのスカウトとしての役割を、彼は常に忘れてはいない。

( ´∀`) 「瓦礫に埋もれた一般人を救助するモナ。ジョルジュ、君は僕を案内するモナ。
       ブーンがこれから合流する。ドクオはジョルジュと武器を交換してツー達と合流。
       少佐が僕に代わってこちらの指揮をとるモナ」
     _
(・A・) ( ゚∀゚) 「了解」

53 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:21:30.08 ID:GZA3Xhr80

( ´∀`) 「アサピー、ペニサス。君達には作業が完了するまで時間を稼いでほしいモナ」

(-@∀@) 「了解」('、`*川

命令を復唱する声が返り、モナーはこちらへ向かってくるブーンの姿を認めた。

だが、

(・A・) 「モナー、敵の増援を発見した。距離は約200!!」

ドクオの声が走り、ブーンもその存在を目視したようで慌てて身を隠した。
アサピーがそれに合わせてスモークグレネードをブーンの方へと放り、煙幕が焚かれてゆく。

すると、ブーンは疾走を始め、モナー達の下へと向かう。

( ´∀`) 「さてさて、皆さん状況開始ですモナ」

言葉よりも早く、アサピーとペニサスは弾幕を張っていった。

55 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:25:28.18 ID:GZA3Xhr80

******

崩れたビルや家屋が次々と視界の端へと送られていく。
全速力を以ってヘッドセットをつけたドクオは疾走していた。

頬にあたる風は冷たく、硝煙の香りを運ぶ。

(;・A・) 「……ちっ」

すると、ドクオの目前で火花が散った。
敵兵が彼を発見し、発砲したようだ。

姿勢を更に低くして、少年の体躯は狙撃銃M700を抱えて更に走る。
額には玉のような汗を浮かばせ、頬を伝い落ちていく。
疾走によって生まれる熱と、敵の射線上にに立つ緊張感によってそれは生まれていた。

ドクオの目前を音速が抜け、衝撃波が顔にぶつかっていく。

一歩早ければ、彼の頭を撃ち抜いていたであろう弾丸がそこを通ったのだ。
背筋を冷たいものが抜けていくが、ドクオは恐れることなく進む。

身を擦り減らす戦場の中で、彼は命のある限り地面を蹴り続けた。

一瞬の躊躇や油断が生死を決める戦場で、隙を見せることは許されない。

57 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:30:26.17 ID:GZA3Xhr80

(;・A・) 「はぁ……はぁ……ぐぅ!」

だが彼の息は次第に上がってきていた。
速度が少しずつ落ちていく。

身体が完成しきっていない成長期にある少年の身には、堪えるものがあった。

だが、既に目標の廃ビルまでの距離は100mを切っている。

後少しで遮蔽物へと辿りつける。
ドクオは瓦礫を発見すると、そこを目指して一直線に駆けた。

しかし、敵もその目論見に気付いたようで、彼への攻撃をより一層激しくした。
弾丸によって地面が穿たれていき、頬を掠めていく。

(;・A・) (もう少し、後、少し!)

藁にもすがる思いで瓦礫の裏へ駆けこんで行くと、突撃銃の物とは違う銃声が響く。
それは一定のリズムで発されていくと、次第に銃撃が治まっていった。
遅れてドクオは、ある者の姿を見た。

从 ゚∀从 「……こっちに逃げ込め! 急げ!!」

瓦礫の上にM700のバイポッドを立て、ハインリッヒが狙撃していたのだ。
ボルトアクションが故に手動で弾薬を排出し、新たに弾丸を込める必要があるが、
彼女はそんな手間も関係なしに敵兵を次々に射殺していく。

61 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:34:08.60 ID:GZA3Xhr80

照準を合わせ、引き金が引かれるまでの時間が異様に短く、
ボルトアクションの煩わしさなどその姿からは一切感じられなかった。

ドクオはハインリッヒの援護を受けながらも瓦礫へと回り込んで行く。

背をコンクリート片に預けながら、ドクオは息を整えた。

(;・A・) 「ハイン、すまない助かった」

从 ゚∀从 「へ、この程度お安いご用ですよ。大事な息子の為ならな!」

そう言いつつもハインリッヒは弾を排出し、次なる獲物を求めた。

(;・A・) 「敵兵の数がやたら多い、それでも救助を行うのか?」

从 ゚∀从 「瓦礫の撤去は出来るようだ。なら、助けるのが道理ってもんだろ?」

(;・A・) 「僕達が先に死ぬかもしれないぞ?」

从 ゚∀从 「そんなヤワじゃないだろ、お前ら」

从 ゚∀从 「さっ、休んでねーでとっとと持ち場へ向かえ。
       どうやら敵さんもこっちを狙い始めてきたようだ。もう長くは保たん」

ハインリッヒは身を屈め、腰のバックパックからスモークグレネードを取り出してアサピー達のほうへと放る。
煙幕が焚かれていくと同時、叫びをあげる。

62 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:37:35.08 ID:GZA3Xhr80

从#゚∀从 「GO!GO!GO!!」

言葉と共にドクオとハインリッヒは駆けだした。
それぞれの持ち場へと向かって、全力を以って。

その背後では金属音が響き、遅れて手榴弾が爆発した。

爆炎はコンクリート片を撒き散らしていく。

ドクオは背に爆音を受けながらも廃ビルの目前へと辿りついた。
身を後ろへと倒し、ビル内へと滑りこんで行った彼は、
背中がコンクリートに擦れることで生まれる熱を感じた。

(;・A・) 「――――あっつ! 熱っ!!」

その摩擦熱に彼は身を悶えさせるが、銃弾は奇跡的に受けていなかった。

ビル内では軽機関銃の銃声が響きわたっており、彼の鼓膜を震わせる。

(・A・) (ツーが弾幕を張ってんのか……)

そう思った矢先、ビルの入り口を護っていたビコーズが合流してきた。

( ∵)σ 「……」

壁に身を預けてリロードを行った彼は、片手の指を上に立てた。
上階にツーがいるので合流しろ、ということらしい。

63 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:40:20.58 ID:GZA3Xhr80

(・A・) 「了解だ」

予め何階にいるかを伝えられていたドクオは、ツーの許へ向かう。

ビルの上部は崩れているが、四階までは進めるようだ。
ビル内は薄暗く、コンクリート片によって進入できなくなっている場所も多いが、
ドクオはなんとか階段を見つけ出して昇っていく。

四階に辿りつくと、ドクオは軽機関銃をぶっ放すツーの姿を見つけた。

ツーも彼に気付いたようで、窓際から離れ壁に背を預けた。
弾薬が少なくなって来たようで、彼女はリロードを開始する。

(*゚∀゚) 「ドクオ! もう来たのか!?」

(・A・) 「あぁ、戦況はどうだ?」

(*゚∀゚) 「北からどんどん敵が攻めてきやがる! 数が異常に多い!!
     撃っても撃ってもキリがない」

(・A・) 「確認できる敵の数は?」

(*゚∀゚) 「塹壕付近におよそ7、瓦礫の山に5だ。双眼鏡で見た限り、
     どうやら奴ら近くにキャンプを立てたようで、そっから湧いて出てきやがる」

(・A・) 「そうか……どの道、今回の任務の目的は達成できたようだな」

ドクオは口を開きながら狙撃の準備をする。

66 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:43:17.25 ID:GZA3Xhr80

(*゚∀゚) 「子守りは必要か!?」

(・A・) 「いらないよ、ハインほど上手くはやれないけどさ」

(*゚∀゚) 「へっへ、ハインさんと比べようってのがそもそもの間違いさね!
     んじゃ、私は二階に移るぜ。ここでちょっと暴れすぎた、
     頃合いを見てドクオも移動した方がいい」

(・A・) 「そのつもりさ。幸運を」

(*゚∀゚) 「へっ、ガキンチョが一丁前に! 幸運をな!!」

リロードを終えたツーは階段へと向かった。

横になったドクオはバイポッドを立てたM700に引き金に指をかけた。

スコープの十字線には、瓦礫の山陰からグレネードを投げようとする兵士が映っている。
引き金が倒されると、その兵士が以っていたグレネードが撃ち抜かれ、
腕ごと兵士の上半身は爆発に吹き飛ばされてしまった。

(・A・) 「兵士一名を射殺……」

ポツリと呟いたドクオは薬莢を排出し、次なる弾を込めて敵を探していった。

68 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:47:10.11 ID:GZA3Xhr80

******

('、`;川 「何て数なのよ……」

衛生兵であるペニサスはトンプソンM1短機関銃を構え、
壁に隠れて瓦礫に潜む敵へと射撃を送っていた。

医療用キットを持つ彼女は重たいバックパックを背に抱えている。
身を引いてリロードを行うが、今の彼女にとってそれが非常に煩わしい。
投げ捨ててしまいたくなるが負傷者が出た場合応急処置が出来なくなってしまう為、それは絶対に出来ない。

リロードの最中、ペニサスは視界の端にグレネードを持った敵を納めた。

('、`;川 「アサピー!3時にグレネード!!」

(;-@∀@) 「クソッ」

現状二人で対応しているため、リロードを行う際はどうしても手が回りきらなくなってしまう。
しかし、これまで二人でなんとか戦いぬいてこられたのは偏に、彼らの技量の高さが故であった。

アサピーは慌ててM16をその兵士へと向けようとするが、
敵によって妨害されてしまう。

彼の隠れる廃屋の壁に、幾重にも銃弾が浴びせられていった。
壁に火花が大量に散っていき、アサピーは身を隠さざろうえなくなってしまう。

71 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:50:09.89 ID:GZA3Xhr80

('、`;川 「ちっ」

舌打ちを漏らし、やっとペニサスはリロードを終える。
身を乗りだし、グレネードを放ろうとしていた兵士へ銃を向けた、が。

その途端に兵士が手に持ったグレネードが突然爆発した。

('、`*川 「ほっ……ドックンか」

そう安堵の息を吐いたペニサスは辛うじて爆発から逃れた兵士を撃つ。
銃声と金属音が連鎖する中、アサピーは声を上げた。

(-@∀@) 「狙撃ポジションについたようだな!」

続いて銃声が響きわたると、アサピーへと銃を向けていた兵士が頭蓋を撃ち抜かれて倒れた。
好機だと確信したアサピーは前進し、廃屋に出来た穴から銃を覗かせ、
こちらへと向かいつつあった敵を射殺した。

(-@∀@) 「12時の方角、一名排除した。ペニサス、リロードだ。援護を!」

('、`*川 「了解」

その場にしゃがみ込んだアサピーはマガジンを手に取り、弾を詰めていく。
ペニサスは9時から迫る敵を2名発見し、トンプソンで敵を撃ち抜いた。

一名が倒れるが、もう一名はその場で姿勢を低くし、
膝を突いてペニサスへと銃を向けた。引き金が引き絞られる。
それを確認したペニサスが身を引くと、3時から迫るもう一名の敵を発見した。

74 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:52:14.82 ID:GZA3Xhr80

9時からは更に敵が現われ、続々と瓦礫の山へと集結を始めていく。

('、`;川 「こっちも弾が尽きそう!」

壁から銃だけを覗かせ、引き金を引くと3時から迫ってきていた兵士が倒れるが、
他の敵には手が回りそうにない。

(-@∀@) 「もうすぐだ!」

ドクオの狙撃も届かず、彼は塹壕へと向けて攻撃を始めたようであった。
向こうは向こうで手が回らないようだ。

(;-@∀@) (ちっ、やはり三人も抜けたのはきついか)

(;-@∀@) (だがこの数、全員揃っていたとしても対処しきれていたかどうか……)

最後の弾丸を込めたアサピーは、攻撃を開始しようとした。
だがその時、コロン、という音をすぐそばで聞き取り身を震わせた。

自分の足元に、緑色をした金属の球体が転がって来たのだ。

(;-@∀@) 「ッ!!」

息をのみ、咄嗟に拾い上げて穴から放る。

投げられた手榴弾は空中で爆散し、破片が敵兵へと食らいついていく。
しかし彼らは、恐れることなく前進してきた。

76 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:54:21.02 ID:GZA3Xhr80

('、`;川 「アサピー! 援護を!!」

トンプソンの弾が切れたペニサスは、敵の勢いを見てリロードを諦め、
腰のホルスターに納めていた拳銃を抜いた。

ニューソク軍で正式採用されているコルトガバメントを構えた彼女は、敵の足を撃った。
撃たれて転倒した兵士は進軍はやめるが、倒れた姿勢のままでペニサスへと銃を向けた。

('、`*川 「ッ!」

ペニサスは身を隠すが、敵の攻撃が激しく攻勢に移れずにいた。
同じくアサピーもその場で釘づけにされてしまい、攻撃を繰り出せずにいる。

(;-@∀@) 「……万事急すか」

そう思った矢先、先頭を切っていた兵士の頭が弾け飛んだ。

(-@∀@) 「ッ!?」

次いで爆音が鳴り響き、アサピーの胃にまで重く響くその振動はグレネードの物であり、
爆炎を身に受けた兵士は下半身を失い、ある者は破片に喉を突き刺されて絶命した。
その間にも敵兵の頭が撃ち抜かれていき、虚を突かれた敵兵へとアサピーは瞬時に射撃していく。

それに遅れず、ペニサスはガバメントで敵を撃った。

アサピーの視線の端に映るのは、廃屋の背後にある瓦礫に身を隠し、
狙撃するハインリッヒの姿であった。

81 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:57:22.44 ID:GZA3Xhr80

('、`*川 「少佐ぁ! 待ちかねましたよ!?」

从 ゚∀从 「すまん、ちっとガキの御守りがな。アサピー!
       モナーから銃を預かっているか!?」

(-@∀@) 「えぇ! 自分が持っています!!」

从 ゚∀从 「よし、そちらに向かう! 援護を!!」

そういったハインリッヒは一名の足を撃ち抜くと、身を低くして廃屋の中へ向かう。
アサピーは敵を牽制しつつ彼女の許へ向かい、背中のバックパックに差していたトンプソンを取り出す。

从 ゚∀从 「サンキュー。状況はどうだ?」

(-@∀@) 「敵の攻撃が激しく苦戦中。ペニサスと私でなんとか凌いでいましたが、
       もう限界でした。感謝致します」

82 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 22:59:25.23 ID:GZA3Xhr80

从 ゚∀从 「あぁ、それにしても敵の様子がおかしいな。
       キャンプが近くにあるにしても、多すぎる」

(-@∀@) 「もうここら一帯は奴らの支配下にあるのでしょうか」

从 ゚∀从 「かもしれんな。救助が終わり次第、味方と合流して撤退する」

(-@∀@) 「了解」

アサピーは応えると前方へと向かい、崩れた壁に背を預け敵の様子を窺い、
ハインリッヒは左方へ向かって廃屋から出て、陰から敵を狙った。

从 -∀从 (アタシの予想が、外れていなければいいが……)

从 ゚∀从 (モナー、ジョルジュ、ブーン。早く救助を終わらせてくれ)

そう願いながら、ハインリッヒは引き金を引いた。

渇いた音が一つ、戦場に一つ加わっていく。

83 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:02:01.91 ID:GZA3Xhr80

******

廃屋の傍に積り、出来あがった山はどうやら元は一軒家だったようで、屋根が残されていた。
その中は空洞になっているようで、撤去作業を行っているモナー達は慎重に歩いていく。

彼らが作業を行う中、爆音が響き渡っていった。

(;^ω^) 「爆発音かお。こっちにきていたらタダじゃすまなかったお」

瓦礫を運んでいたブーンは額に冷や汗ともつかない物を浮かばせている。

( ´∀`) 「急ぐモナ」

そう言ったモナーの顔は声とは裏腹に柔和な笑みを作っていた。
幸いなことに瓦礫は細かく砕かれた物が多く、
手で運べるものばかりであった。

しかしその中でもジョルジュは人一倍張りきっているようで、
とうてい一人では運べないように巨大な瓦礫を手にしている。
  _
(;゚∀゚) 「ブーン! 手伝ってくれ!!」

ジョルジュの体格はモナーとブーンに比べて小柄であり、
彼一人ではビクともしないそれをブーンが持ちあげると軽く浮き上がっていく。
二人は息を合わせて放り投げると、穴が覗けた。

光が差し込んで行き、ブーンとジョルジュ、そしてモナーが加わって穴を見通す。

85 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:05:11.55 ID:GZA3Xhr80

すると、

川 -)

瓦礫の下敷きになった少女を見つけた。
薄暗くはっきりとその姿を見ることは出来ないが、
顔だけは覗けるようで、額から微かに血が流れているようであった。
  _
( ゚∀゚) 「おい! お嬢ちゃん!! 約束通り助けにきたぜ!!」

ジョルジュは穴へと顔を突っ込み、少女へと呼びかけると微かに反応があった。
彼女は声を聞くと、瓦礫から伸びた手を上げようとしたのだ。

( ^ω^) 「大尉、どうやら生きているみたいですお」

( ´∀`) 「あぁ、だが、この大きさでは大人は入れそうにないモナ」

たしかに、モナーの言うとおりこの穴は大人が入るには小さすぎた。
回りの瓦礫を撤去しようにも、下手に動かせば崩落してしまい、
少女を生き埋めにしてしまう可能性もある。
  _
(;゚∀゚) 「チクショー……ここまで来て、結局助けられないのかよ……」

( ^ω^) 「敵も、迫りつつあるお」

( ´∀`) 「……」

三人は、決断を迫られていた。
モナーは無線機を取り出し、何時でも通信を行えるようにしている。

88 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:07:34.99 ID:GZA3Xhr80
  _
(;゚∀゚) 「……」

ジョルジュはそれを見て、生唾を飲み込んだ。

(;^ω^) 「ほら! 君!! こっちに手を伸ばすお!!」

ブーンは必死に少女へと手を伸ばすが、彼女の手は届きそうにはなかった。
弱々しく伸ばされたその手は、酷く痛々しく見えた。
それを見たモナーから、冷徹な言葉を浴びせられるのを二人は覚悟する。

( ´∀`) 「ジョルジュ、ブーン。僕たちじゃ助けられないモナー。敵の増援がまだまだやってくる。
        敵はどんどん増えていく。でも、僕達は消耗していくだけモナー」

( ´∀`) 「一刻の猶予もならないモナ。それに僕達はこの穴には入れない」

( ´∀`) 「ドクオを呼ぶモナ。あの子ならこの穴に入れるはずモナ」
   _
Σ( ゚∀゚) 「――――ッ!」

モナーの言葉に諦める用意をしていたジョルジュは、パッと顔を輝かせた。
  _
( ゚∀゚) 「そうか、そうだな! ドク坊ならこの穴に入れる!!」

( ^ω^) 「おっおっお、良かったお。でも、戦力は下がっちゃうお」

( ´∀`) 「そこは君達がカバーするモナ。とっとと行け!
       少佐とドクオには僕が連絡しておくモナ」

「了解」と答えた彼らは銃を構えて各々の持ち場へと向かっていった。

90 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:10:12.94 ID:GZA3Xhr80

******

廃ビルを全速力を以って抜け出したドクオは、
廃屋方面へと向けてスモークグレネードを放り捨てて煙の中に紛れて疾走していく。

あちこちから銃声が聞こえてきたが狙われたのか、
流れ弾が飛んで来たのか知らないが、弾丸がドクオの左腕を掠めた。

しかし、この程度の傷など、ドクオにとっては傷の内にも入らない。

全神経を集中させ、彼はモナーが指定した廃屋へと駆け抜けていく。

スモークグレネードが起こす、白煙を潜り抜けたドクオは、
敵の射線に身を曝すこととなり、姿勢を低くした状態で走っていく。

地面が爆ぜ、空を切る弾丸の音が、
自分は狙われているのだという実感をドクオにもたらす。

94 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:12:44.54 ID:GZA3Xhr80

(#・A・) (ちっ! 後少しなんだよぉぉぉ!! 邪魔すんなボケェェェェ!!)

内心に絶叫を上げ、ドクオは死に物狂いで走り続ける。
すると、音が聞こえる。金属が転がっていくような、小気味の良いものだった。

(;・A・) (グレネード!?)

そう判断すると、よりいっそう力を入れて走り抜ける。

数秒が経つと、爆発するかと思われたが、何時になってもそれは訪れない。
だが、その代わりに白煙が巻き起こる。

ドクオの眼前には、ブーンとジョルジュが居た。
二人はそれぞれ、塹壕と瓦礫の山へと向けて威嚇射撃を行っており、ドクオを援護していた。

あのスモークグレネードを投げたのも、あの二人のどちらかだろう。
ドクオは一抹の安心感を得て、廃屋へと辿り着いていった。

95 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:14:46.11 ID:GZA3Xhr80

******

( ´∀`)σ 「よく来てくれたモナ。要救助者はこの穴の中だモナ」

(・A・) 「了解」

ドクオは短く応えるとM16をモナーに預け、穴へと入っていく。
背を少し引っかけ、迷彩服が少し裂けてしまうが、なんとか中へと彼は進入した。

中はやはり薄暗く、バックパックから小型ライトを取り出すと前を照らす。
腰を低くし、ゆっくりと進んで行くと瓦礫の下敷きになった少女を見つけた。

(・A・) 「おい、しっかりしろ」

川 -) 「……うぅ」

呻き、少女はドクオのほうを振り向こうとする。

(・A・) 「大丈夫だ、傷は浅い」

たしかに憔悴し、身動きを取れずにはいるが、
怪我を見てみるとそれほど深いものではなく、
肉が少し裂けただけで骨折しているようには見えない。

もっとも、瓦礫に埋もれた胴体のほうがどうなっているか調べることはできないが……。

100 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:18:10.12 ID:GZA3Xhr80

(・A・) 「待ってろ」

瓦礫を撤去しようとするも、彼の幼い身体の力ではそれを動かす事は出来ない。
上手く身体を使っていくがビクともしなかった。

手を離して後ずさるが、彼の息は既にあがってしまっていた。

(;・A・)-3 「ふぅ……ふぅ……」

ブーンかモナー、もしくはジョルジュならこれを撤去することも容易だったろう。
だが、ドクオは子供だ。子供だからこそ、この場に入れたのだが、
大人の腕力が無ければこの瓦礫を撤去することが出来ない。

何という皮肉だ。

ドクオは自分の無力さを恥じ、悔しさを覚えた。
自分では彼女を救うことは出来ない。

(;・A・) (ちっ……)

ドクオは心の内に舌打ちをする。
少女に不必要な不安を与えないために、実際にはしない。

仕方なしに彼はホルスターからコルトガバメントを抜いて、構えた。
銃口が彼女へと向けられていき、そして……。

暗闇の中に、銃火が一つ灯っていった。

103 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:21:37.25 ID:GZA3Xhr80

******

聞き慣れた、乾いた火薬の音が穴から響き渡って来た。

(;´∀`) 「モナっ!?」

銃声が穴から響いてくるなど予想もしていなかったモナーは、
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

身体を反射的に穴へと覗きこませようとするが、
突然黒い長髪を持った頭が出てきたので、それは叶わなかった。
灰まみれになった少女が穴から出てきたのだ。

背にはドクオの手が掴まれており、穴から少女を這いださせた彼は自分もそうしていく。

(・A・) 「よっこらセックス……と」

灰を被ったドクオはその場で座り込み、手でそれを払っていった。

(・A・) 「どうしたの、モナー?」

不思議そうな視線でモナーを見かえすと、彼はそう尋ねた。

(;´∀`) 「ドクオ、さっきの銃声はなんだモナ?」

105 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:23:37.83 ID:GZA3Xhr80

(・A・) 「あぁ、要救助者の体の上に瓦礫が乗ってたんだけど、
     僕の腕力じゃ持ち上げられないから、仕方なくハンドガンで壊したんだ」

(;´∀`) 「はぁ〜そうだったモナか。流石の僕も胆が冷えたモナー」

(・A・) 「……?」

ドクオが疑問符を浮かばせるが、
モナーは慌てて気を持ち返し、ハインリッヒへと無線を繋げる。

( ´∀`) 『少佐、ドクオが要救助者を救出した。次の指示を』

从 ゚∀从 『よくやった! その場で待機だ、そちらに合流する!!
       とっととこのクソ溜めを脱出するぞ!!』

( ´∀`) 『了解モナ』

(・A・) 「……」

ドクオはその流れを横目にやりつつ、周囲を警戒する。
まだ銃声は鳴りやまず、戦闘は激化していった。
するとM16を構えて屈みこんだ彼に、不意に声がかけられた。

108 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/01(土) 23:25:40.26 ID:GZA3Xhr80

川 -) 「なぁ……なぁ……」

(・A・) 「うん?」

必死に絞り出されたその声は少女の物だった。

川 -) 「私は、たすかる……のか?」

(・A・) 「あぁ、もう大丈夫だ。安心しろ」

縋りつき、安全を求める彼女の声に、ドクオは毅然として応える。
すると少女は笑みのような物を浮かべて、彼に更に尋ねた。

川 -) 「きみ……の……君の、名前……は?」

(・A・) 「高岡ドクオだ。階級は一等兵」

川 -) 「高岡……ドク……わた、しは……素直、クー……」

声を絞り出そうとするも、少女は、素直と名乗ったその少女は意識を失った。
ドクオは脈を測り生きていることだけを確かめると、ハインリッヒ達がこちらへ向かってくるのを見かけた。

少女を救出したGJは、味方部隊と合流する為にこの戦場を駆け抜けていく。


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