川 ゚ -゚) 少女は戦争犬と駆け抜けるようです/2/3

18 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:31:51.24 ID:ngm8Fy4m0

******

街を巡っていった頃には既に19時になっていた。
まだ休暇は三日ほど残っており明日も暇だが、ドクオは仕事だ。

あまり付き合わせるわけにもいかず、
しかし何か礼をしたいと思った私はドクオを自宅に誘った。

私の住むアパートに駐車場は無く、近くの駐車場に車を止めると、
ドクオと私はアパートに歩いて向かい部屋に入っていく。

('A●) 「お、綺麗な部屋だな」

居間に足を踏み入れたドクオは感心したように言った。

川 ゚ -゚) 「そうだろう、マメに掃除はしている」

川 ゚ -゚) (実家から慌てて帰って掃除してよかったな……)

川 ゚ -゚) 「今晩飯を作るから、待っていてくれ」

('A●) 「すまんね、何か手伝うか?」

川 ゚ -゚) 「お前料理出来たのか?」

('A●) 「あぁ、サバイバルについて学んだ。いちおう料理は出来る。
     蛇とかけっこううま―――」

川 ゚ -゚) 「ゆっくりしていてくれ」

23 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:34:42.51 ID:ngm8Fy4m0

('A●) 「いやいやてつだ――――」

川 ゚ -゚) 「大人しくしててくれ。お前に私の料理を振舞いたいんだ」

(*'A●) 「あぁ、そう。いや悪いね」

ドクオは納得したのかテーブルに向かって座りこんだ。

川 ゚ -゚) 「今コーヒーを淹れるから」

インスタントコーヒーを台所から取り出し、
私はカップに淹れて電気ケトルからお湯を注いでいく。

川 ゚ -゚) 「砂糖やミルクは?」

('A●) 「あぁ、いらないよ」

川 ゚ -゚) 「ブラックか、厨二乙」

('A●) 「食事の前に口の中を甘くするのが嫌なだけだよ。飲み分けてんの」

25 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:36:57.95 ID:ngm8Fy4m0

川 ゚ -゚) 「はいはい」

粉を溶くためにスプーンでコーヒーをかき混ぜていく。
インスタントではあるが心地よい香りが鼻腔を満たしていき、
コーヒーは色を更に深めていった。

川 ゚ -゚)つ旦 「どうぞ」

('A●) 「サンキュ」

川 ゚ -゚) 「じゃあ、ちょっと待っていてくれ」

('A●) 「あいよ……ベランダ借りていいか?」

川 ゚ -゚) 「あぁ」

ドクオはそう言うとベランダへと向かい、
私は冷蔵庫から食材を取り出し、調理をしていった。

27 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:39:01.90 ID:ngm8Fy4m0

******

ε=('A●)y━~~「ふぅー」

ベランダの柵に上半身を預けたドクオはタバコを吹かす。
肺から口腔へと煙が抜けていき、辛みが残っていく。
ピリピリとした感触が舌に染みいり、タバコの香りが鼻をついた。

('A●)y━~~ 「我慢して数時間ぶりに吸うタバコは格別だな」

呟いた彼はクールが台所で料理をしているのを見て、笑みを浮かべた。

('ー●)y━~~ 「綺麗だな……あの姿を見られるまで生き延びることが出来て、よかった」

(‐A●)y━~~(でも、俺には無理なんだ。俺がクーを守り続けることなんて出来やしない)

偶々ドクオがパーソク領への侵攻作戦に参加していなければ、
クールは案内所の連中にさらわれていたことだろう。
ドクオはそんな考えをし、背筋に寒気が走るのを覚えた。

(‐A●)y━~~ (果たして、何時までこんなことを続けていけるのかね)

(‐A●)y━~~ (あいつはいずれ、避難させなければいけないな……。
         奴らの手の届かない場所に、人知れず)

しかし、そんなことをクールは承知するだろうか、ともドクオは思う。
悩み苦しみ、全ての思考を停止させる為に彼はタバコを吸っていくと、

川 ゚ -゚) 「タバコ……吸うようになったんだな」

30 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:41:18.80 ID:ngm8Fy4m0

ε=('A●)y━~~ 「あぁ、お前と別れて、ちょっとしてからな」

川 ゚ -゚) 「この不良め」

('∀●)y━~~ 「もう大人だ」

苦笑を浮かべたドクオはクールから離れ、煙を吐いた。
だがクールは彼の傍によっていく。

('A●)y━~~ 「?」

傍らに寄り添った彼女はドクオの顔を見ると口を開いた。

川 ゚ -゚) 「私にも一本くれ」

('A●)つ━ 「あぁ……吸うのか?」

川 ゚ -゚)y━ 「いや……」

タバコを受け取ったクールはそれを咥え、ドクオはライターを取り出したが、

31 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:43:20.63 ID:ngm8Fy4m0

川 - -)━  ~~━('A●;)  「?」

彼女はドクオの顔に自分の顔を近づけていき、
タバコを重ねあわせようとした。

川 - -)━━('A●*) 「……」

火種がクールのタバコに火を着けていき、
煙を吸い込んだ彼女はそれを吐きだそうとするが、

川;´-゚)y━~~ 「げほっごほっ……がはっ!」

タバコになれないクールはむせ返ってしまった。
更に煙が目に染みたのか涙を目に浮かべており、
ドクオはそっと彼女の背中を摩っていく。

('∀●)y━~~ 「バカ、吸えないなら吸うな。何がしたかったんだよ」

川;´-゚)y━~~「いや、あれやりたかっただけなんだ……すまん」

川 ´-゚)y━~~「しかし、良いものだな」

('A●)y━~~ 「片目開けられるようになってから言えよ」

川 ´-゚)y━~~ 「いや、味じゃなくてな……」

34 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:45:31.24 ID:ngm8Fy4m0

川 ゚ -゚)y━~~「二人でこうしていられることがな」

('A●)y━~~ 「あぁ、そうだなぁ……」

クールはドクオをじっと見つめていた。
だが、彼は虚空を見つめて再び煙を燻らせていく。

('A●)y━~~「……」

川 ゚ -゚)y━~~ 「……」

('A●)y━~~ 「……」

川 ゚ -゚)y━~~ 「……ドクオ」

('A●)y━~~ 「なに?」

川 ゚ -゚)y━~~ 「ごはん出来たよ。パスタだから冷める前に早く食べよう」

('A●)y━~~ 「ありがとう……でも、最初に言ってくれたらいいのに」

川 ゚ -゚)y━~~ 「スマン、だが反省はしていない」

37 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:48:27.36 ID:ngm8Fy4m0

******

川 ゚ -゚) 「冷める前に食べてくれ」

('A●) 「もうカチカチになりかけてるのですが」

テーブルに置かれたパスタを前にした二人はフォークを手に取る。
ミートソースの乗ったその黄色い麺は弾力さを主張しており、
アルデンテに茹であげられていることが見て分かった。

('A●) 「イタダキマス」

赤々としたミートソースにはナスとバラ肉が絡み合っており、
黄色い麺と赤々としたソースが絶妙な色彩を作り出し食欲をそそる。
しかしフォークを通すと冷えて少々固まってしまっているのを触覚から感じ取れた。

('A●) 「だが美味い」

川*゚ -゚) 「本当か? 良かった」

川*゚ -゚) (引っ越してからしばらく料理などしていなかったんだが……)

('A●) 「あぁ、久しぶりにこれほど美味い物を食った」

川*゚ -゚) 「そうか」

40 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:50:30.94 ID:ngm8Fy4m0

川 ゚ -゚)「普段どんな物を食べているんだ?」

('A●) 「最近は……レーションだったな。休暇に入ってからは主にハンバーガーを」

川 ゚ -゚) 「レーションってあの……ぬるぬるした……」

(;'A●) 「違う違う!軍の野戦糧食だよ」

川 ゚ -゚) 「どんなものなんだ?」

('A●) 「色々入ったパックがあって、パンとかポークパテとかたくさん詰まってんだ。
     クラッカーとかも入っててさ」

川 ゚ -゚) 「けっこう美味しそうじゃないか」

('A●) 「言葉で聞いたらね。実際は酷い味だ。
     保存性を重視していてな。臭いしぐちゃぐちゃしてて気持ち悪い上にまずい」

川 ゚ -゚) 「そうなのか、一度食べてみたい気もするがな」

('A●) 「ふぅ……御馳走さま。やめておけ、あの味は知らない方が幸せだ」

川 ゚ -゚) 「お粗末さま。お前がそう言うならやめておくかな」

('A●) 「どうしてもっていうのなら用意してやるかな」

川 ゚ -゚) 「いいのか?」

42 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:52:35.23 ID:ngm8Fy4m0
('A●) 「僕少佐。レーション用意させるくらい造作もないよ多分。
     いざとなればパクってくるし」

川;゚ -゚) 「無理しなくてもいいぞ?」

('A●) 「いやいや、今日のお礼にと思ってね」

そう言ったドクオは立ち上がり、玄関へ向かおうとした。

川 ゚ -゚) 「ドクオ、行くのか?」

('A●) 「あぁ、良い時間だしな。お前も早く寝ろよ」

川 ゚ -゚) 「そうか……」

('A●) 「じゃあな、また会おう」

川 ゚ -゚) 「また、か……次はいつ会えるんだ?」

('A●) 「……」

クールの言葉に、ドクオは表情を変えた。
無機質で、一切感情を窺わせない鋭い瞳をして彼はクールを見る。

('A●) 「次はわからない。出来れば接触は控えた方が良いしな。
     もしかしたら俺が案内所と決着をつけるまでは無理かもな」

('A●) 「それと一つ提案だ。クーはこのままじゃいずれは案内所の手に落ちるだろう。
     だからそうなる前に、お前には移住してもらおうと思う。
     今のままの生活はおそらく長くは続かないだろう」

46 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:55:07.60 ID:ngm8Fy4m0

川 ゚ -゚) 「どこにだ?」

('A●) 「他国になるだろうな。ニーソクかテンゴクかはたまたカナソクか。
     いちおうこちらで用意は進めておく。お前が承諾さえしてくれればな」

川 ゚ -゚) 「……」

('A●) 「答えは二日以内に決めてくれ。こっちにも準備がある。
     準備が終わり次第こちらから連絡をする」

川 ゚ -゚) 「どうしてもそうしなければならないのか?」

('A●) 「あぁ、いずれは俺達では手が回り切らなくなってしまう。
     そうなってからじゃ遅いんだ。クーが決めることだから、
     俺が強制することも出来ないが、"奴ら"の目から逃れない限りお前の安全を保障できない」

川 ゚ -゚) 「守ってくれるって、約束してくれたばかりだろう?」

('A●) 「そうだ、その通りだ。だからクーを移住させたいと思っている。
     資金ならある、俺が溜め続けてきた金だ。
     贅沢をしなければ数十年は生きていけると思う」

('A●) 「ただ決断が必要だ。覚悟する必要がある」

川 ゚ -゚) 「……」

50 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:57:19.15 ID:ngm8Fy4m0

('A●) 「二日だ、二日だけ猶予を―――」

川 ゚ -゚) 「ドクオ、私はな」

クールは立ち上がり、ドクオと向かい合って語る。
その眼はドクオの目を真っ直ぐと貫いており、彼女は彼へ自分の胸中全てを明かそうとしていた。

川 ゚ -゚) 「私は自分の能力を、チャネラーの能力を最大限に活かそうと思ってダーウィンに入った。
      労を惜しまず働き続け、仕事に一切の妥協を許さなかった。
      私の願いを、私の夢を叶え、敷いた道しるべの上を駆け抜けていく為に」

川 ゚ -゚) 「私はな、10年前にお前に助けられてから、ずっと抱えていたんだ。
      お前のことが気にかかってしかたなかったんだ。
      助け出して貰った上に、お前に目を失うような怪我までさせてしまった」

川 ゚ -゚) 「だというのに7年前私だけ親戚に引き取られて、戦場からお前を置いていって、
      のうのうと今まで生きてきてしまったんだ」

川#゚ -゚) 「お前が苦しい目に沢山あってきたのに! 私だけ! 私だけ家族が出来て!!
      学校に通って、友達が出来て! 暖かい食事と暖かい布団で眠り、のうのうと日々を過ごしていた!!」

川#゚ -゚) 「自分が許せなかったんだっ! ドクオはハインさん達を失い、
      傷を負ってまで戦っていると言うのに、私は……!」

('A●) 「それが本音か?」

川#゚ -゚) 「あぁそうさ! 私はこの数年自分を恨み続けた。
      この国のどこかで戦い続けているお前を思い、泣いたこともある。
      どうしてお前にもこの暖かさに触れさせてやれないんだろうって!!」

53 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 01:59:22.11 ID:ngm8Fy4m0

川#゚ -゚) 「だから私は、少しでもお前に近づこうと思って……。
      ダーウィンで働いて私なりに戦争に携わろうとして、自分の能力を活かして認められて……」

川 -) 「案内所に接触しようと……」

('A●) 「先日の合同実験で襲われたところを助けたのは、邪魔だったか?」

川 -) 「いや、そんなことはない……それは嬉しかった。
      お前と再会出来たのは、すごく嬉しかったんだ」

川 ゚ -゚) 「でも私は案内所と接触しさえすれば、奴らの中に入り込むことが出来れば、
      内部から崩壊させることも出来るかもしれないと思ったんだ」

('A●) 「どんな処分を受けるかはわからない。下手すればただのモルモットにされるぞ」

川 ゚ -゚) 「その通りだな。浅はかだったが、でも私に出来る戦い方といえばこうするしかなかったんだ」

川 ゚ -゚) 「家族といれば巻き込んでしまうかもしれないし、友人も巻き込んでしまうかもしれない。
      だから私は、ずっと人を寄せ付けないように生きてきた。それが彼らを守る為でもあった。
      そうやって戦い続けてきたが、ドクオが現れたことで全部変わった……」

川 ゚ -゚) 「それで、気付いたんだ。自分の中にある本当の気持ちに。
      そして今日それを深く実感した……私は、私はなドクオ……」

('A●) 「……」

55 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:01:44.38 ID:ngm8Fy4m0

川 ゚ -゚) 「お前に、幸せになって欲しかったんだ。お前が喜んでるところもっと見たいんだ。
      その姿をずっと傍で見ていたくて、一緒に戦って、一緒に苦しいことも分かち合いたいんだ」

川 ; -;) 「私はただ、お前と一緒にいたかっただけなんだ……っ!」

クールの声は震えていた。
目からは涙が零れ、様々な感情が入り混じり混沌とした彼女の心を洗い流し、
根元にあるただ一つの意思を明白にさせていく。
クールの強い思いを受け止めたドクオはそっと彼女に歩み寄り、

川 ; -;) \('A●) 「クー、俺はな」

いつぞやのように頭を撫で、言い聞かせていく。
その表情は何時の間にか柔らかな物となっており、口調もまた優しく変わっていた。

('A●) 「俺はお前を護る。それがハインから与えられた任務で、俺の決意だ」

川 ; -;) 「任務だから仕方なくやってるの……?」

('A●) 「違う、俺はお前を守りたいんだ。十年前からその気持ちに変わりは無い。
     クーも俺も大事な者を失って、一人ぼっちになってしまって、
     これ以上悲しませたくないと思ったんだ」

('A●) 「一種の仲間意識みたいなものだったんだと思う。
     俺とクーが、同じものみたいにあの時は思えた」

57 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:03:59.74 ID:ngm8Fy4m0

('A●) 「でも、違うんだ。俺とお前は」

('A●) 「俺は兵士だ。クーのような一般人を護る為に俺達は戦っている。
     俺は少年兵だった。だから身寄りなどあの時無かった」

('A●) 「いずれ俺達は離れ離れになるだろうとわかっていた。
     いずれは別れる時がくるだろうとわかっていた。
     俺にとっては赤の他人だったそれでも! クーを死なせたくは無かった!!」

('A●) 「俺達の道は重なり合ってはいない。俺達は別々の道を駆け抜けていくことになる。
     だから俺は10年前お前と出会ったあの戦場では、その時が来るまで護り続けようと誓った」

('A●) 「銃を握り続ける道。平和に溶け込む道。俺の目の前には銃の道があり、
     クーの目の前には平和の道が続いていた。
     その道にお前を戻してやることが俺の使命だと信じていた」

(-A●) 「別世界へと続く道だった、俺にとって。全く知らない世界だ。
     7年前、親戚に引き取られていくお前を見送って、これからは戦いとは無縁のその道を、
     幸せに歩んでいくものだと、誤解していた」

(-A●) 「クー、お前の話を聞いて、お前が苦しんでいたことはよくわかった」

(-A●) 「ごめん……」

川 ; -;) 「……なんであやまるの?」

(-A●) 「わからない……あの時の俺にはどうすることも出来なかったに違いないのに、
     俺がお前と共に歩んでいける道なんかないと分かっていたのに、
     それでもお前を今までずっと苦しませていて、こうして泣かせてしまっているのは、駄目だと思ったんだ」

59 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:06:19.86 ID:ngm8Fy4m0

川 ; -;) 「うっ……うぅ……」

(-A●) 「俺は戦う事しか出来ない。戦いの中でしか自分を表現できない。
     戦い続けることこそが俺の生きている証を世の中に刻みつけることになる。
     銃を握ることでしか生を実感出来ない男だ」

(-A●) 「俺達のような人間のことをハインはよく知っていた」

('A●) 『人を殺した時から私達は地獄に落ちた。天国なんか用意されていない。
     殺人の罪を背負い続ける限り永遠の闘争に縛られ続ける
     勝ち負けじゃない。生きている限り、私達は果てしない戦場を彷徨い続けるのだ』

('A●) 「ハインが俺に言った言葉だ。俺はこの言葉を忘れた事が無い。
     一度銃を握り、生き残ってしまった時から俺達兵士は戦争の呪縛に囚われてしまうんだ」

('A●) 「だけどハインは、それでも俺が銃を捨て平和な世界で生きることを望んでいた……」

(-A●) 「俺はいずれ銃を捨てる……」

川 ; -;) 「うん……うん……」

ドクオはクールの両肩に手を置いて、彼女を見つめて言った。

61 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:09:21.73 ID:ngm8Fy4m0

('A●) 「クー、俺はお前が好きだ」

川 ; -;) 「ありがとう……私も、ドクオのことが大好きだ。
      ずっと、ずっとお前に会いたいと思っていた……」

('A●) 「でも俺達の生きる道は違うんだ。生きる世界が違うんだ。
     俺にお前の傍にいる資格なんてないんだ。
     だから、俺がいずれ銃を捨てるその時まで、待っていてくれないか?」

川 ; -;) 「わかった……」

('A●) 「じゃあ、こいつを持っていてくれないか?」

ドクオは懐にしまっておいたコルトパイソンを抜き出すと、
銃身を持ってクールへと差し出す。

クールにも見覚えのあるその銃は、
彼の師であり母でもあるハインリッヒの形見と言えるものだ。

川 ; -;) 「い、いいのか?」

('A●) 「あぁ、俺を護る必要はもうない。
     だから今度はクーを護ってくれって、ハインにも頼んでおいた。
     きっと、ハインもお前のことを護ってくれるよ」

65 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:11:38.51 ID:ngm8Fy4m0

('A●) 「俺がお前の許に戻るまで、預かっていてくれ」

川 ; -;) 「あぁ……あぁ……っ!」

('∀●) 「まっ、待ち切れなかったら、その時はその時でいいさ。
     もっと相応しい奴と幸せになればいい」

川 ;ー;) 「ふふふ……何を今更。7年も待てたんだ、私はしつこいぞ?」

('∀●) 「それもそうだな」

ドクオはクールに抱きしめた。

彼女はそれを受け入れ、自ら彼の背に腕を回していき、しがみつく。
10年来の抱擁を交わした二人は、その場で互いの想いを確かめ合うかのように抱き合い続ける。

しかし、空白の時間を埋め合わせるには、残された時間は二人にとってあまりにも短すぎた。

69 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:13:40.28 ID:ngm8Fy4m0


******

6月1日 0600―――――素直クール宅


台所で調理をしていた俺は出来あがった料理を皿に載せ、
テーブルの上に置いていく。

('A●) 「おっしゃあ!」

スクランブルエッグとサラダの皿に出来あがったトーストを載せ、
隣にはインスタントではあるがコーンスープの入ったカップを置く。
二人分出来あがった朝食を見るが、しかし人数が足りなかった。

('A●) 「……」


州レ-〜-)レ  zzz


('A●) 「まぁ、無理に起こすのも悪いし……」

呟いた途端、眠っているはずのクーの鼻がヒクヒクと動き出し、手は目を擦っていく。
……メシの匂いを嗅ぎつけたのか?

州レつ o;)レ 「ふわぁ〜、おはようドクオ。今朝食を作……」

州レつ -゚)レ 「る……って、え?」

73 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:15:42.15 ID:ngm8Fy4m0

州レ;゚ -゚)レ 「あああもう朝食が……! すまない寝過ごしてしまった!!」

('A●) 「いいよ俺が早いだけだし。それにその前に寝癖直せよ、あと服着ろ」

州レ;゚ -゚)レ 「うわっ、あぁそうだ寝癖! と服服……! 見るなバカ!!」

素っ裸のまま起き上がってきたクーは慌てて薄掛けで身を隠し、
生地が豊かな膨らみを作って白い肌を覆っていくと、
彼女は手探りで服を探っていく。

('∀●)9m 「はっはっはバカめ。普段冷静な癖にとんだ醜態だな」

州レ#゚ -゚)レ三つ#;)A●) 「うるさい!!」「右目はやめてっ!!」

(#;;)A●) 「しかし良いものが見れた」

州レ゚ -゚)レ 「フン、昨日の夜散々見ただろうが」

(#;;)A●) 「夜のほうはもっと良いものを見れましたがねぐへへ」

州レ*゚ -゚)レ 「お前のせいだろ……責任はとって貰うからな」

(メ'A●) 「お前が待ち切れたらな」

州レ*゚ -゚)レ 「昨日のは担保だ。お前が絶対に私の元に戻ってくるようにな」

(メ'A●) 「俺を待つより、もっと良い人がいると思うんだけどな」

州レ゚ -゚)レ 「私はずっと待ち続けるぞ、お前が銃を捨てるのを」

76 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:17:43.01 ID:ngm8Fy4m0

(メ'A●) 「俺は銃を捨てるさ、案内所の連中を倒してな。
     何時になるやらわからないが」

州レ゚ -゚)レ 「別に倒さなくても、お前が銃を捨てれば私との話はそれですむんだぞ?
      ずっと傍にいてくれれば、お前は私を護れるんだからな」

(メ'A●) 「そういうわけにもいかないさ、でも、それもありだな」

州レ゚ー゚)レ 「じゃあ、どっちの根が折れるのが先か、だな」

('A●) 「そうだな」

州レ゚ー゚)レ 「ふふふ……」

('∀●) 「ははは……」

(;'A●) 「って、やべ……時間!」

クーの笑みに釣られて笑みを浮かべていると、
俺は目覚まし時計の示す時間が目に入り驚愕した。
時刻は0620であり、0700には基地に戻っていないといけないので余裕はない。

(;'A●) 「すまん、俺はもう基地に戻るぞ!」

慌てて玄関まで走っていき、ドアを開けて外へ出ようとするが……。

州レ゚ -゚)レ 「ドクオ」

(;'A●) 「あ?」

79 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:20:02.45 ID:ngm8Fy4m0

(;'( 州州州「んん!?」

何時の間に追いついてきていたクーが俺を抱きしめ、キスをしてきた。
触れ合う唇からは彼女の味がし、鼻腔が彼女の匂いで満たされていくと、
俺の慌てふためいていた心は途端に静まり返り、彼女が俺の中に流れ込んできたかのようだった。

州レ゚ー゚)レ 「いってきますのちゅーだ。これも担保だから、戻ってこいよ」

(*'A●) 「あ、あぁ……いってきます?」

州レ゚ー゚)レ 「いってらっしゃい」

クーがそう言ったのを耳にすると、
どこか新鮮な響きで、しかし不思議と落ち着く変わった感覚を覚える。

……もし、夫婦になれたら、こんな感じなのだろうか。

俺はそんな考えを胸に秘めながら、駐車場へと向かっていった。
それは前進への一歩だった。それは未来への確かな歩みだった。
別の世界を歩む二人の、存在するかもしれない交差点へ続く道しるべ。

俺はそれまで駆け抜けていこうと思った。

83 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:22:07.84 ID:ngm8Fy4m0

だが、

(,,\=◎) 「お前……高岡ドクオだな……」

謎のバイザーを着けた黒コートの男が俺の前に立ち塞がり、
住宅街のど真ん中で立ちつくすことになってしまう。

合成音声で尋ねるこの男からは、嫌な予感しかしない。

('A●) 「違います、人違いです。だからどいてくれません?」

(,,\=◎) 「ならば鬱田タケシか?」

('A●) 「はいそうですが、何か?」

(,,\=◎) 「ならば死ね!!」

バイザーの男は腰から何かを抜き出すと、
俺はバックステップで咄嗟に距離を取った。

(;'A●) (速い……)

あまりの速さに、獲物を確認する余裕も無かったほどだ。
距離を取り、ナイフとコルトパイソンを抜いて構えようとするが……。

(;'A●) (しまった、パイソンはクーに渡したんだったか……クソ、ついてねぇ)

左手でナイフを構え右手は自由にし、男と対峙する。

86 名前: ◆K8iifs2jk6 投稿日:2011/10/16(日) 02:25:01.58 ID:ngm8Fy4m0

するとバイザーが展開していき、男の顔が露わとなる。

(;'A●) 「なにっ!?」

(,,ナД゚) 「俺の顔を忘れたとは言わせんぞ、小僧ぉ……」

それは、10年前にクーに射殺されたはずの男、
国家総合案内所のエージェントであるギコの顔であった。

(;'A●) 「どうしてお前が生きている!?」

過去の負傷だろうか、右目を傷に覆われたギコは、
隻眼で俺を身の毛もよだつ様な殺気を込めて射抜くと、
激しい怒りを込めた口調で叫ぶ。

(,,ナД゚) 「その理由はあの世でしぃとシャキンに聞け!!」

ギコが駆ける。

日本刀――恐らくはこの間のロマネスクとかいう奴と同じ物――を構え、
奴は俺へと一直線に飛びかかってきた。

10年間積み重ねられてきたであろう憎悪を発したギコを迎撃すべく、戦闘態勢へと入っていく。
クーと共に歩む道の為にも、俺はこの闘争の道を駆け抜けていく。
決意を新たにし、そう誓ったのだから……。

再び、クーにまた会える日まで、俺は戦い続けるだけだ。

ナイフと刀が激突しあい、堅い金属音が火花と共に散っていった。


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