( ・∀・)っ】コールアウターのようです!

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:33:24.62 ID:10fjQ1890


【オープニング代わりの「会話文だけでシチュエーションを想像し興奮したら負けゲーム」】



(*-∀-)「いたいけな凡百の市民諸君―――ご機嫌は如何かな? 『ツーヴァイクル=V=エルシール』だ」

(;#゚;;-゚)「え? あの……」

(*゚∀゚)「ふむ、こうやって自己紹介を始めてみたのは良いが―――どうやって自己を紹介すべきか、少し悩むな」

(*-∀-)「VIP国第四皇位継承者、元老院事務官補佐、公儀隠密特殊作戦事務局長、特務機関の申し子、円卓議会の七人目―――ふぅむ……」

(;#゚;;-゚)っ「あの、どちら様でしょうか……?」

(*゚∀゚)「“どちら様”だと? 貴様、この我(オレ)n( -∀-)「――あー、えっとコイツは俺等の幼馴染のツーです。中身はちょっと優しい・Fateのギルガメッシュ、外見はまんま男の娘です」

(;*゚∀゚)「モララーっ! お前はまたそうやって僕をおちょk( ・∀・)「――ついでに焦ると口調が崩れます」

(;*-∀-)「くっ……俺としたことが油断した。良し、いいだろう。ここで長年の争いに終止符を(;#>;;-<)「あっ、すいませんっ! 時間ですっ!!」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:36:35.38 ID:10fjQ1890


【ゲームスタート】


( * Д)「あ、えっとじゃ……よろしくお願いします」

ζ(-、-*ζ「……うん」


 真後ろから抱き締められるような形。
 デレさんは一度だけ強く俺を抱き締めて、「大丈夫だよ」と言った。

 僅かに残っていた恐怖は、それだけで四散した。


ζ(゚ー゚*ζ「ほら、いくよ?」

( *^Д^)「あっ――はい……」


 ……まったく。
 俺、カッコ悪いなー……。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:39:33.71 ID:10fjQ1890

 デレさんが“そこ”に――触れる。


( * Д)「う、あ……」

ζ(^ー^*ζ「ふふっ、見て? すっごくヌメヌメしてる……」


 皮を剥き、嫋やかな指をぐるり、と回した。
 その刺激で一瞬間、震える。


ζ(-、-*ζ「あったかいねー……」


 耳元で――声が聞こえる。

 馴染んだ彼女の声。
 普段の素っ気ない印象を与えるものとは打って変わった、俺にしか聞かせることのない声。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:42:27.69 ID:10fjQ1890

 その声が、息遣いが、心臓の音が。
 どうしようもなく俺を縛る。

 だけど、それが言い表せないほど心地良いのも事実で、逃げ出せない。

 こういう体勢でこういう状況だと嫌でも思い知らされる。
 どちらがどちらの所有物で、どちらがどちらの所有者なのかを。


( * Д)「うあっ――あ、あ……っ!」

ζ(^ー^*ζ「……もう限界? 相変わらず早いね」


 手を前後に動かしつつ小馬鹿にしたような口調でなじる。

 全身が震える。
 頭がおかしくなりそうだ。


 ああ、くそっ。
 限界だ、もう……駄目だ――――!



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:45:19.38 ID:10fjQ1890

(;*^Д^)「――だあぁぁぁっ!! もう無理!もう無理!! なんか今動いたぁ!!」

ζ(-、- ;ζ「動いてないってば……。釣り上げた時点でもう死んじゃってるよ……」


【今回のシチュエーションは――『デレが付きっ切りでプギャーに魚の捌き方を教えている』でした】


(;^Д^)「マゾ心を刺激されるシーンを思い浮かべた人は来期何のアニメ見るのかを!」

ζ(^ー^*ζ「勃起させてしまった方や、その先までやってしまわれた方は、今集めている漫画や読んでいるネット小説(ブーン系含む)を書いていってね」


(-、-*トソン「四天王篇の銀魂は『ああ男の人ってカッコいいなぁ』って思える話でした……」

( -∀・)「対照的にカイジはいつでも『こんな大人にはなりたくねー』って思うこと請け合いだな。一千万あったら何するよ?」

川*゚ -゚)「DVD予約してエリオたんの抱き枕買う!!」

('A`)「最近完全に俺の変態キャラとしての立ち位置が奪われてるよな……。あー、俺も未来担保にして美少女と一緒に戦いてー。田舎で美少女とイチャつきてー」

(#^;;-^)「どんまい、です。――では本編スタートですっ!」


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:48:43.66 ID:10fjQ1890


13‐Call Would you like to hold ?

从*゚ーノリ「うそつき。嘘をつくたびに眺めたくなる月」




……すたーとっ



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:51:47.45 ID:10fjQ1890


【――午後・甘味処『すりーぴんぐ・びゅ〜てぃ〜』店頭】


(;^Д^)「ゲーム……? ゲームって、先輩……」

( -∀-)「いや、“ゲーム”っつーか“暴露大会”だな」

(;-_-)「どういうことなのさ……」




从*^ーノリ「――あ、ほら。師匠の恥ずかしい話とかをみんなで……」

(;-_-)「ちょっとルカちゃん。いくら温厚な僕でもそろそろ怒る――」

ζ(^ー^*ζ「面白そうね」

(-_-;)「あれぇ敵が一人増えたぞぉ!?」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:54:41.55 ID:10fjQ1890

( ・∀・)「先輩の恥ずかしい話っつーと、アレか? 昔引き篭もってた話とか?」

(;-_-)「事実だから言い返しようがないんだけどさ……」

(;^Д^)「(事実なのか……)」

从*^ーノリ「友達が一人もいない話とか」

(;-_-)「いるよ!少なくとも三人!!」

ζ(-、-*;ζ「(私が言えた道理じゃないけど、それは“少なくとも”にしても少な過ぎるよ)」




川*゚ー゚)「――良い年して未だ童貞なこととかか!!」

(;-_-)「真昼間からなんてことを言うんだ君は! 君の恥じらいという感情は一体何処に置いてきちゃったの!?」

(;^Д^)「(やっぱ、さっきのクー先輩の方が明らか可愛いよな……)」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 20:57:27.51 ID:10fjQ1890

(; _)「だっ、大体っ……。僕だって……」

川;゚ -゚)「――まさか先輩、一丁前にチョメチョメしたことがあるというのか!?」

( -∀-)「まじでか。先輩もチョメチョメを……」

(;^Д^)っ「言い方が古い!!」

( ・∀・)「ギシギシ」

川 ゚ -゚)「アンアン」

(;^Д^)「アンタ等仲良しだなぁまったく!!」




从;*゚ーノリ「え……そうなんですか、師匠?」

(;-_-)「う……。(なんでそんな純真さ溢れる瞳で僕を見るのさ……)」

从;*゚ーノリ「…………師匠?」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:00:29.36 ID:10fjQ1890

(;つ_)「嘘だよ、見得張ったよ……。したことないよ……。これでいいんでしょ?」

从*^ーノリ「――ですよねー!! あはははっ!」

(;-_-)「笑うなよ! ルカちゃんだってね、下手すりゃ将来僕みたいに笑われることになるんだからね!!」

从*゚ーノリ「セクハラは止めてください」

( う_)「理不尽だ……」

从*-ーノリ「そもそもありえないですよー、私は。ぜっっったいに、ありえませんね」

(;-_-)「その自信の出所が知りたい!!」




( ・∀・)「…スゲー嬉しそうだな、ルカちゃん」ボソボソ

(;^Д^)「……………本当に深い仲じゃないんですか?」ブツブツ

ζ(゚ー゚*ζ「…とりあえず肉体関係は持ってないってことははっきりしたけど」ボソボソ

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:03:16.32 ID:10fjQ1890

(;-_-)「…………」ジッ…

(;^Д^)「え、なんスかその縋るような熱視線……」

川 ゚ -゚)「ほら同属性キャラだし」

(;^Д^)っ「何勘違いしてるのか知りませんけど俺にしてもヒッキーさんにしてもアンタ等がボケ倒す故のツッコミ属性ですからね!?」

( ・∀・)「ボケ殺しじゃなくて残念だったなー」

(;^Д^)「ありとあらゆるボケを封殺するハジケリスト達の天敵・『ボケ殺し』――って解説が必要なほど懐かしいジャンプネタを使わないで下さい!!」

( -∀-)「んなこと言いつつちゃんとツッコめてて、そこに痺れる」

(;^Д^)「憧れない!!」

川 -ー-)「現在ジャンプはブ●ーチが“敵がいつの間にか旧知の間柄だったことになっている”みたいにホラーっぽくて面白いな、原点回帰だ!」

(;^Д^)「確かに死神テーマにした作品ですけど別にアレって初期でもホラー要素はないですよ!?」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:06:16.92 ID:10fjQ1890

(;-_-)「…………」ジーッ…

(;^Д^)「(なんだ? 何を期待されてるんだ、俺?)」

ζ(゚ー゚*ζ「――あ。」


ζ(^ー^*ζ「君の初体験の年齢は十三だったよね――プギャー君?」


(;*^Д^)「いっ、いきなりなんてことバラしてんですか!! デレさんと言えども怒りますよ!?」

川 ゚ -゚)「声裏返ってるぞ後輩」




(; _)「くそう、同じタイプの人だと思ったのに……」

( -∀-)「……先輩マジで小さいよな、器」

(;-_-)「ほっといてよ! これでも気にしてるんだよ!!」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:09:14.81 ID:10fjQ1890


【――しばらく後、】


( -∀-)「――まあ、暴露大会っつってもヒッキー先輩の面白い話をする大会ではない」

(;-_-)「だったらもっと早い段階で止めてくれても良かったじゃん……」

川 ゚ -゚)「ほら、折角の先輩主体のトークだったし」

(;-_-)「弄られることでトークの主体になんかなりたくないよ! 僕は若手芸人か!!」

(;-_-)「……君達のせいで、デレさんの中での僕の評価が――」




ζ(゚ー゚*ζ「――いえ特に変わってないですよ? 前からなんかアレっぽいなって思ってましたし」

(;-_-)「変わってないの!? そして“アレ”って何!!?」

ζ(-、-*ζ「…………童貞?」

(; _)「(訊かなきゃ良かった……)」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:12:15.64 ID:10fjQ1890

( -∀-)「――はいはい、童貞トークおしまい。本題戻ろーぜ?」

川 -ー-)「まったくだな。多感な女子中学生がいる前で童貞童貞と連呼して……大人としてどうかと思うぞ?」

(;^Д^)「いやアンタが振ったんでしょ!?」

( -∀・)「大体だな、かん●ぎの騒動の時から思ってたんだが、恋人の過去をウダウダ言うのは格好悪いと思うぞ?」

(;^Д^)「どちらかと言えば懐かしくてコアなネタを使わないで下さい!!」

川 ゚ -゚)「ああ。アリ●アとかヨ●に比べたら随分マシじゃないか」

(;^Д^)「スクウェア三大悪女を持ち出さないで下さい! そしてクー先輩も同じ理不尽系の美少女です!!」

从*-ーノリ「まー鈴木先生もこの間言ってましたからねー。過去は所詮、過去ですよ」

ζ(-、-*ζ「…………過去を大事にしてくれる人は素敵だと思うけどね……」

(;-_-)「(気のせいかも知れないけど二人共実感入ってる感が……)」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:15:42.21 ID:10fjQ1890

( ・∀・)「――とにかく話を戻すと、その悪女みたいな話をしようってことだ」

( -∀・)「それぞれが自分の暴露話をして、それでルカちゃんが『この人の人柄が好きだなー』と思った相手が案内しようってこと」

(-_-)「なるほどね……」

川 ゚ -゚)「ちなみに――たとえばどんなのだ?」




( ・∀・)「二つ名の由来が、スーパーで間違えてお酒勝っちゃったからとか」

(;^Д^)「アンタは名の知れた<<狼>>であり二つ名は『氷結の魔女』、私立烏田高等学校ハーフプライサー同好会の代表かなんかですか――って『ベ●・トー』か! アニメ化おめでとう!!」

川 ゚ -゚)「ただ弁当奪り合いしてるだけなのにバトル描写がやたらカッコいい作品だな」

( -∀-)「やる必要全くないんだけど、ちょっとやってみたいよなー……。半額弁当争奪戦」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:18:18.56 ID:10fjQ1890

ζ(゚ー゚*ζ「君達が話してることは分からないけど…………とにかく、自分の失敗談を話せばいいんだね?」

( -∀・)「いや、話すのは俺とクーと後輩だけです。あくまで案内が目的ですし」

ζ(-、-*ζ「なるほど。そういやそうだね」




(・∀・ )「――で、いいよな? 二人共」

(;^Д^)「いやまあ、構わないっスけど……」

川 ゚ -゚)「失敗にこそその人の人柄が表れるというものだからな。構わないぞ」


( -∀-)「よーし。んじゃ――――暴露大会開始っ!!」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:21:21.98 ID:10fjQ1890


【――( ^Д^) のターン】


(;^Д^)「え〜っと、割とマジで恥ずかしいことなんですが……」

川 ゚ -゚)「うずうず」

(  Д)φ「えっとですね…………はい、」カキカキ…


(;^Д^)っ□「――俺、つい最近まで“ばくろ”って言葉、こういう風に“曝露”って書くと思ってて……“暴露”はずっと“ぼうろ”って読んでました」


( ・∀・)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

(;-Д-)「いやー、文学部なのに恥ずかしい限りです……」

从;*゚ーノリ「…………えっ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:24:49.09 ID:10fjQ1890

( ・∀・)「お前まさかそれで終了とかする気じゃねーだろうな?」

(;^Д^)「え?」

ζ(-、-*ζ「……いくらなんでも暴露のレベルがちっちゃ過ぎるよ」

(^Д^;)「えっ?」

川 ゚ -゚)「お前には失望したぞ」

(;^Д^)「えぇー……」




(;^Д^)「…………」ジィ…

(;-_-)「そんな縋るような視線を向けられても僕にはどうしようもないよ……」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:27:18.31 ID:10fjQ1890

( -∀-)「あー、はいはい。後輩は主人公補正バリバリの失敗知らずだからそういうのないってことねー」

(;^Д^)「いやそれはむしろ先輩じゃ……」

川 -ー-)「これはこれは。凡人である私達と同じレベルで語ってしまい、真に申し訳なかったです」

(;^Д^)「ええっ、いや…………なにこの状況? アウェー? 俺一人アウェーなんスか?」




从*^ーノリ「相変わらず笑いには厳しいですねっ」

(;-_-)「厳し過ぎでしょ……。見てるこっちは全然笑えないよ……」

ζ(ー *ζ ウズウズ

(-_-;)「…………ドウシテ、ウレシソウナノデショウカ?」

ζ(^ー^*ζ「いえ、別に」ニコニコ

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:30:30.80 ID:10fjQ1890

(; Д)「――ああっ、もう!!」


(;^Д^)「分かりましたよっ!! もっと超ド級に恥ずかしい話すればいいんでしょ!!?」


( ・∀・)「分かればいんだよ、分かれば」

(;-_-)「(苦労してるなー、後輩君……)」




川 ゚ -゚)「というか『ド級』も『チョメチョメ』ぐらいには古い表現だと思うんだが……」

( -∀-)「ドレッドノートが由来だから、何世紀前になるのやら」

从*゚ーノリ「?」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:33:20.89 ID:10fjQ1890

(;^Д^)「ええっと……じゃあですね、」チラ,


ζ(゚ー゚*ζ「…………」


(; Д)「俺のちゅ――中学時代の彼女に関する失敗談を…………話します」

从*゚оノリ「おおー。来ましたね、恋バナ」

( -∀・)「おっと来たな黒歴史」

(;^Д^)「黒歴史とか言わないで下さい!むしろ黄金時代です!!」

川 ゚ー゚)「……自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

(;^Д^)「アンタ等俺の心をへし折ってそんなに楽しいか!!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:36:14.17 ID:10fjQ1890

(; Д)「それ、で……」


(;^Д^)「当時、俺は一つ上の先輩と付き合っていまして」

川 ゚ -゚)「――可愛かったのか?」

( ^Д^)「え?」

川 -ー-)「その彼女は、可愛かったのかと、訊いている」

(;^Д^)「いやっ、そこら辺はあんま関係ないじゃないっスか。とにかk川 ゚ -゚)「――あまり可愛くはない彼女だったそうだ」

(;^Д^)「っ――先輩! 何勝手なこと言ってんスか!!」

川 ゚ -゚)「だって……なあ?」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:39:23.23 ID:10fjQ1890

川 ゚ -゚)「本当に好きな――好きだった相手なら即答できるだろう」

川 ゚ -゚)「それともお前はアレか。頭が空っぽのチャラ男にありがちな、別れてからはボロクソ言うタイプか」

从*゚ーノリ「あー。いますよね、そういう人」

(;^Д^)「そんなわけないじゃないですか!!」

川 ゚ -゚)「ふぅん、そうか」

川 -ー-)「なら、『可愛い』と即答できない時点で…………大して可愛くなかったか、そんなに好きでもなかったかのどちらかだろう?」

(; Д)「そんな……わけ…………」チラリ


ζ(^ー^*ζ「…………」


(;^Д^)「そんなわけ――ないでしょ……」

川 -ー-)「うむ、よし」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:42:35.41 ID:10fjQ1890

川 ゚ -゚)「――で、可愛かったのか?」

(;* Д)「…………はい、可愛かったです。可愛いっていうか美人でした……。(ちくしょう、なんだこの羞恥プレイ)」

( -∀-)「どんなところが好きだった?」

(;* Д)「ぐ……」

(;*^Д^)「全部ですよ、全部!! 何処が好きとか言えないぐらいに――全部好きだったんです!!」

从*^ーノリ「らぶらぶですねー」




ζ(ー *ζ「うふふ、ふふ……」

(;-_-)「(心なしかデレさんから邪悪な気配が……)」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:45:37.69 ID:10fjQ1890

(;^Д^)「はあ、ふぅ…………いい加減話戻しますよ?」

( ^Д^)「――それで当時俺は先輩と付き合ってて、まあ、そこそこ上手く行ってたんです」

从*゚ーノリ「初恋だったんですか?」

(; Д)「…………うん。初恋で、人生初の彼女だった」

从*>ーノリ「甘酸っぱい! いいなぁ〜」




ζ(゚ー゚*ζ「――ちなみにヒッキーさんの初恋は?」

(-_-)「人生で初めてできた、ちゃんとした友達。何処となくクーちゃんに似てるかな……」

川*゚ー゚)「なんだ先輩、だから私をオカズにしてたのか!」

(; _)「…………その人はこういう風にサラッと下ネタ言ったりはしなかったけどね……。そしてオカズにはしてない……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:48:15.83 ID:10fjQ1890

从*>ーノリ「えっとあの、ガツガツしちゃって申し訳ないんですけど!」

( ^Д^)「え、うん」

从*^ーノリ「プギャーさんかその人か、どっちから告白したんですか!?」

(;^Д^)「……え゛。」

从*-ーノリ「私、『初めて』って大事だと思うんです。誕生日とか、記念日とか……。だから、良ければ後学の為にお聞かせ頂きたいなー、みたいな」




(;-_-)「……ルカちゃん、ノリノリだね」

ζ(゚ー゚*ζ「女の子ですから」

( -∀-)「まー、ヒッキー変態じゃ惚れた腫れたの話は聞けそうにないしなー」

(;-_-)「その“変態”っていうの止めてよ!お願いだから!」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:51:28.22 ID:10fjQ1890

(; Д)「ああ……。まあ、そうだな……」


( ^Д^)「いや、この際正直に言うと――――どっちからでもないんだ」


川 ゚ -゚)「“どっちからでもない”?」

从*゚ーノリ「?」

(;^Д^)「なんて……言うか……」チラリ



ζ(゚ー゚*ζ「…………」



( ^Д^)「しいて言えば、俺が……」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:54:30.04 ID:10fjQ1890

( ^Д^)「最初はただの練習だった。“嘘”――だったんだ」

(; Д)「その先輩は当時問題を抱えてて、それで…………人を信じられなくなってた。人っつーか、自分自身かな」

从*゚ -ノリ「…………」

( ^Д^)「俺はそれが嫌で、だから……」


( -∀-)「――――“だから付き合った”、か?」


(;^Д^)「はい……」

川 ゚ -゚)「お前、それは――」

( -∀-)っ「…………クー」フルフル

川;゚ -゚)「む……」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 21:57:21.60 ID:10fjQ1890

( ^Д^)「お互いに、ただの練習でいい、これは練習だって言い合いながら」

从*゚ーノリ「恋愛の、練習?」

( ^Д^)「『いつか本当に人を好きになった時の為に。いつか本物を見つける為に』――って。そういう風に先輩は言ってたよ」

(  -Д-)「でも今思えば……多分な、」


( ^Д^)「俺は先輩を初めて知った時から――――あの人を好きになってたんだと思う」

( ^Д^)「理由は何でも良いから、傍にいたいと願ったんだと思う」


( ^Д^)「この人が自分との関係なんて遊びにしか思ってなくても――それでも俺はこの人のことを守りたいと、思った……」



川 ゚ -゚)「…………」

ζ(-、-*ζ「…………」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:00:16.36 ID:10fjQ1890

(  Д)「でも、俺は結局、嘘吐いてて。あの人も守れなくて」

( ^Д^)「今思えばもっとちゃんと、俺なんかじゃなくて――“嘘”なんかじゃなく“本当に”あの人を愛している人が、傍にいるべきだったのかもしれない……」



 嘘なら嘘で、もっと上手に吐くべきだった。

 嘘なら嘘で、その嘘を吐き通すべきだった。



 ……今更気づいた。
 そんなことすら、俺は気がつかなかった。

 俺の嘘を。彼女の嘘を。



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:03:24.22 ID:10fjQ1890

 嘘でも「ずっと一緒にいよう」と言ったのに。
 あなたが好きだと言ったのに。

 “嘘”という免罪符を使って“本当”を覆い隠してまで、拙い愛を囁いたのに。


 俺は――結局。



( ^Д^)「俺が後悔してるのは、そのことです」



 やり直せるならばどうかもう一度。
 記憶を空にして、ちゃんと初めから――あなたをちゃんと思い出せたら良いのに。

 そしたらきっと今度は――。




52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:06:21.86 ID:10fjQ1890

ζ(-、-*ζ「…………」

川 -)「…………」


( ・∀・)「――お前、」
从*-ーノリ「――あの、」




从;*゚ーノリ「あっ、被っちゃった。お先にどうぞ」

( -∀-)「いーやっ、多分言いたいことは同じだろうし、ルカちゃんに譲るよ」

从;*-ーノリ「そんな……。モララーお兄さん、“それっぽいこと”を言うのが趣味なのに。取れませんよ」

( ・∀・)「別に趣味じゃねーよ。ありゃただの個性だ」

从;*゚ーノリ「余計に取り辛くなりました! びっくりです!」

(;-_-)「君達はこの状況で何を譲り合ってるのさ……」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:09:19.95 ID:10fjQ1890

从*-ーノリ「では、僭越ながらワタクシめが」

(;^Д^)「? ああ……」


从*゚ーノリ「――結論から言うと、薄縹のお兄さんは気に病む必要なんかないと思います」

( ^Д^)「でも……俺は嘘を吐いてたんだぜ?」

从*-ーノリ「それはお互い様じゃないですか。しかも二重なので無効じゃないですか?」

(  Д)「……そうじゃないんだ」


( ^Д^)「俺は下手に嘘を吐いた挙句――――その嘘を吐き通すことすらできなかったんだよ」


从*゚ーノリ「そう――そこですよ、お兄さん」

(;^Д^)「……え?」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:12:19.34 ID:10fjQ1890

从*-ーノリ「私は今流行りのツンデレではないので言いにくいのですが、『勘違いしないでよ』です」

(;^Д^)「いや、アンタはどっちかって言うとツンデレ要素持ちだし、そもそも現在はツンデレそこまで流行ってねぇし……」

从*゚ーノリ「きっとお兄さんの彼女さんは――、」


ζ(゚ー゚*ζ「…………」


从*゚ーノリ「――ツンデレってたから言えなかったんですよ」

从*-ーノリ「私が“視た”限りじゃ、お礼を言うのが限界ぐらいです。『好きだよ』とか『愛してる』とかお互いに全然言えなかったでしょ」

(;^Д^)「ああ……まぁ、な」

从*゚ーノリ「最後の最後まで『本当は嘘じゃなくて本当に好きなんだ、別れたくない!』――とは、言えなかった」

( ^Д^)「…………」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:15:25.72 ID:10fjQ1890

从*-ーノリ「だから綺麗に終わってしまった。言いたいことも言えず」

( ^Д^)「…………何を? あの人は、何を言いたかったと思うんだ?」

从*゚ーノリ「簡単ですよ」


从*゚ーノリ「嘘も方便という言葉があるように『本物』に勝る『偽物』もある、ということです」


从*^ーノリ「そして“本物に勝った『偽物』”は最早偽物じゃなくて本物です!」

( ^Д^)「…………」

从*-ーノリ「あくまで予測ですけどね。もっと分かり易く言いましょうか?」

从*゚ーノリ「『私にとってはあなたこそが掛け替えのない“本物”だ』とか『たとえ嘘から始まった恋でも最後は真実だった』とか」

从*゚ーノリ「きっと、そういうことが言いたかったんですよ。その人」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:18:25.42 ID:10fjQ1890

从*^ーノリ「ツンデレってたから――素直になれなかったから、言えなかっただけで」

从*゚ーノリ「口から出た言葉だけが真実なわけないじゃないですか。だから、嘘なんて言わないでください。嘘にしてしまわないでください」

( ^Д^)「でも……」

从*^ーノリ「私の言うことが疑わしい……それこそ『嘘だ』って言うのなら確かめてみてくださいよ」


从*゚ーノリ「やり直すことはできないけれど――でも、一回終わったんだからもう一度始めることはできますよ。いつからだって、いつだって」


( ^Д^)「…………」

ζ(-、-*ζ「…………」




川*゚ -゚)「ルカ子カッコいい!」

(;・∀・)「止めてやれ。今の時期言うとシュ●ゲ効果で男の娘みたいになっちゃうから」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:21:16.12 ID:10fjQ1890

( -∀-)「――ま、そういうことだよ。後輩」

( ・∀・)「世の中には『恋とは同じ部分を見つけること、愛とは違う部分を見つけること』という言葉があるが…………俺なら多分、こう言うね」


( -∀-)「――――『恋とは偽っている部分を好きになること、愛とは偽りのない部分を好きになること』ってな」


(-_-)「“偽り”?」

( -∀・)「おうよ。だって好きな相手の前で格好付けたくなるのは球磨川君じゃなくても当たり前だろ?」

( ・∀・)「先輩の書いて欲しい短編は『嘘』を題材にしたものらしいが、俺からすればそれは『恋』をテーマにしてるのとほぼ同じだ」

ζ(゚ー゚*ζ「『恋』はそもそも“嘘”ってことかな?」

( ・∀・)「化粧もオシャレも、言わば“嘘”だろ。頑張って、無理してるんだ」

( ・∀・)「相手に好きになって欲しいから、必死に嘘を吐いてるんだ」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:24:15.82 ID:10fjQ1890

川 -ー-)「確かにな」

川 ゚ -゚)「『ありのままの自分を愛して欲しい』という文言が一時期そこかしこで見られたが……私からすれば片腹痛い限りだな」

( -∀・)「身の丈に合ったことばっかしてたら進まないし、何よりつまんねーよ」

( ^Д^)「……ははっ」

( ^Д^)「努力家の二人らしい言葉ですね、また」




( ・∀・)「――で、オチはどうした」

( ^Д^)「え?」

( -∀-)「もちろん今までのは前フリだろ? そんな、真剣十代しゃ●り場みたいな感じで終わるわけがないよな」

川 ゚ -゚)「親眷状態チョベリバ?」

(;^Д^)「何スかその『お父さんが現在進行形で超危篤!』みたいな空耳! そして色々懐かしっ!!」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:27:17.20 ID:10fjQ1890

( -∀-)「まー、んなことはどうでもいいんだよ」

( ・∀・)「さあさっさと落としやがれ」

(;^Д^)「いや終わりですよ? これ“暴露大会”であって“すべらない話”じゃないですし……」

( ・∀・)「うるせーよこの常時だだ滑り男」

(;^Д^)「滑ってねぇよ! ツッコミが滑るかぁっ!!」

川 ゚ -゚)「黙れさるすべり」

从*゚ーノリ「ひゃくにちこう」

(;^Д^)「いや確かに“さるすべり”って“百日紅”って書きますけど、猿滑りにはネタが受けない的意味合いないですし!!」

( ・∀・)「ほら滑ったー」

(;^Д^)「滑ってねぇよ!!」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:30:17.76 ID:10fjQ1890


【――( ・∀・)のターン】


( -∀-)「前の後輩は甘酸っぱい思春期の話を思う存分語るだけという如何ともし難い結果だったわけだが……」

(;-_-)「(君が煽ったんでしょ……)」


( -∀・)+「――俺はそうはいかないぜ!」


从*^ーノリ「お兄さんカッコいい!」

( -∀-)「はっはっは、ありがとう。でも知ってる」

川*゚ -゚)「イケメン! 博学! スポーツ万能!」

( *・∀・)「はっはっは!!」

川*゚ー゚)「料理上手! 女タラシ! 衒学家! 変態! 変な名前!」

( -∀-)「おいコラ後半ただの悪口になってんぞ」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:33:08.85 ID:10fjQ1890

( -∀-)「……まあ良いだろう。俺のターンだ」

( ・∀・)「鮮やかな手際でモンスター・エクシーズを召喚しちゃうぜ……!」

川 ゚ -゚)「ならば私は手札から『サイバー・ド●ゴン』を特殊召喚」

( -∀・)「甘い! 俺は自分の場の『電算機獣テ●バイト』とお前のフィールド上の『サイ●ー・ドラゴン』を融合! 融合デッキから――――って何やらせるんだよ」

(;^Д^)「今日二人共テンション高いっスね……」




从*゚ーノリ「子供みたいなことやってますねー」

(;-_-)「というか、まんま子供だけどね……。ノリノリでカードゲーム談議をする美男美女……」

ζ(-、-*ζ「言ってる意味はよく分からないけど、絵柄は壮絶ね」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:36:19.10 ID:10fjQ1890

( -∀-)「――よし、それで俺のターンだったな」

川*゚ -゚)「私のバトルフェイズはまだ終了していないぜ!」

( ・∀・)「そもそもお前のターンはまだ来てねーよ…………んで、どうすっかなー」




(;^Д^)「え、あそこまで豪語しといて俺煽っといてノープランなんスか!?」

( -∀-)「いやー、お前の話を聞き流しつつ考えてたんだが……」

(;*^Д^)「そっちが振ったんだからちゃんと聞いて下さいよ! 投げっぱなしジャーマンか!!」

( ・∀・)「――うん。正直全くネタ浮かばねーわ」

(;^Д^)「とんだ口先男だよ! アレか、アンタのさっきの言葉はただの自分擁護か!!」

( -∀・)+「なんだ、今頃気がついたのか?」

(;^Д^)「格好付けながら開き直ってんじゃねぇよ!!」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:39:32.24 ID:10fjQ1890

( ・∀・)「お、そうだ」

( ・∀・)「ルカちゃんが指定してくれていいぜ。何の話が良いか」

从*゚ーノリ「ふぇ?」

( -∀-)「聞きたい話とか好きな分野とか……最悪単語だけでも構わねーし」

从*-ーノリ「そうは言ってもですねー……私、モララーお兄さんにあまり興味ないですし」

(;・∀・)「うわサラッと酷いこと言われた!」

(;-_-)「つい数秒前まで持ち上げてたのにそれはないでしょ、ルカちゃん……」

从*^ーノリ「恋をする相手とカッコいいと思う相手が違うのと同じですよー」




川 ゚ -゚)「…ルカ子はヒッキー変態が好きに五千万ペリカ」ボソボソ

(;^Д^)っ「…それには全面的に同意ですけどいくらペリカであっても五千万も賭けたら大金です!」ブツブツ

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:42:16.05 ID:10fjQ1890

从*-ーノリ「じゃー、ですねー。恋のお話が良いです」

( ・∀・)「“恋”?」

从*>ーノリ「はい! もう失敗談は二の次で良いので、恋の話をしてください!」

( -∀-)「オーライ、お嬢さん。恋の話だな」




( ・∀・)「――ただし惚気話になるけど」

从*>ーノリ「むしろ思い切り惚気ちゃってください!」

( -∀-)「分かった」

( ・∀・)「んじゃ……最近じゃなく、高校時代の話でもしようかな」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:45:15.37 ID:10fjQ1890


【―― 回想 ――】


 まだ、俺とトソンが付き合ってなかった頃の話。
 ……つっても、お互いに気があることは薄々ながら分かってたんだけどな。

 最終的に俺が学園祭の劇の最中に告白して恋人同士になるんだが――その直前の話だ。



(゚、゚トソン『――先輩、映画など如何ですか?』

( ・∀・)『え?』


 当時から俺はトソンのことを呼び捨てにしていたが、トソンは俺のことを「先輩」と呼んでいた。
 そういうことには結構厳しい奴なのだ。
 今でこそバカップルをやっているが、この時期はまだまだちゃんとした先輩・後輩だった。

 まあ今でもアイツはたまに、俺のこと間違って「先輩」って呼ぶんだけどな。



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:48:26.36 ID:10fjQ1890

 いきなりだった。そんなお堅いアイツからの映画の誘い。
 朝、廊下ですれ違った時に挨拶をして、二三言葉を交わした後に、思い出したかのように。


(-、-トソン『ミセリさんと行く予定だったのですが……二枚あるので』

( ・∀・)『ああ、なるほど』

(-、-トソン『余ってしまうのも勿体なかっただけなので、ご都合が悪いなら結構です』


 さらりと言い放つ。

 台詞はツンデレなのに俯くどころか頬さえ染めやがらない。
 お前はパワ●ケ13のアルバムなしの隠し彼女かよ。口調までそっくりじゃねぇか。


 「デートの誘いかな?」とは思わなかった。
 彼女の中では“デートは彼氏彼女がするもの”という認識があるらしく、たとえ男女で遊びに行くとしてもそういう風に呼ばれるのは嫌っていた。
 妙なところで堅いのだ、アイツは。

 だから、と言うと変だが俺は「遊びに行きたいんだな」とだけ思った。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:51:21.01 ID:10fjQ1890

( -∀-)『でもよー、トソン』


 始業の時間まで間があることを確認しつつ、俺は言った。


( ・∀・)『そういうのはクラスの女友達と行った方がいいんじゃねーか? 二人きりで遊びに行くと、嫌でも噂は立つぜ?』


 本当に今でこそああだが、当時の彼女はそんな――噂が立つことすら嫌がるような子だった。
 それを知っていたからこそ俺はあえてそういう風なことを返す。

 溜息を吐きつつ、トソンは呟く。


(-、-トソン『ただの映画ならば普通の友達と行けるのですが……』

( -∀・)『なんだ、ホラー映画とかなのか?』

(゚、゚トソン『いえ、少しはグロテスクなシーンがあるかもしれませんが、ホラーではありませんね』

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:54:24.80 ID:10fjQ1890

(゚、゚トソン『――エヴァン●リオンの新劇場版です』

( ・∀・)+『行きます。行かせて下さい』



 かくして。
 俺とトソンは――というかオタク二人は、一緒に映画に行くことになったのだった。



 ……後にクーから「私と行く約束だっただろう!」と普通に怒られたが、その瞬間の俺は全く失念していた。
 いやあ、ノリって怖いよね。
 結局二回見れて得ではあったんだけどさ。


 日時と集合場所を確認した後、折り目正しく礼をして去っていた後輩を見送り、小さくガッツポーズをしながら教室に戻った。
 当然それは「気になる後輩と二人きり!」ということではなく、純粋に映画が楽しみだったからである。

 まあ――向こうは違ったんだけど。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 22:57:29.33 ID:10fjQ1890


 当日は生憎、朝からの雨だった。
 秋雨は昼を過ぎても止まず、約束の時間である夕方になっても降り続いていた。


 時間厳守、特にデートは三十分前集合を心がけている俺は早めに待ち合わせ場所である繁華街の最寄り駅に辿り着く。
 缶コーヒーを買って飲んだりしつつ思案に耽る。
 何を考えていたかはよく覚えていないが、多分割かし真面目なことだったと思う。

 そうこうしている内にトソンがやってきた。
 集合時間の十五分前に小走りで現れた彼女は俺を見つけると少しだけ悔しそうな顔をした。


(-、-トソン『先に着いたと思ったんですけど……雨が降り出すものですから』


 傘を忘れて、途中、タオルを買い求めたりしている内に時間が経ってしまったらしい。

 ダメージジーンズを穿き帽子を被っている彼女はかなり男の子っぽかったが、雨のせいで透ける上半身、下着はどうしようもなく女の子だった。
 しばらくは見ていたいほど良い眺め。
 しかし放っておくわけにもいかず、とりあえず上着を被せてやった。


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:00:14.79 ID:10fjQ1890

(、 トソン『……! ……ありがとうございます』

( -∀-)『気にすんな』


 僅かだけ顔を伏せた彼女が可愛かったのは、言うまでもない。
 普段の堅い雰囲気と相俟って、その時のトソンは相当に可愛かった。

 ギャップ萌えの素晴らしさを実感しつつ、俺は訊ねる。


( ・∀・)『んで……どうする? 相合傘はアレだし、なんならコンビニで――』

(-、-トソン『――いえ、流石にそこまでは』


 俺の言葉を遮ってトソンは言った。


(゚、゚トソン『私のような不束者でよろしければ、傘に入れて下さいませんでしょうか?』


 もう少し照れて言ってくれないかなあ―――と思ったのも、言うまでもない。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:03:21.12 ID:10fjQ1890


 その後はまあ、普通に映画を楽しんだ。

 鑑賞中の会話は一切なく、手を握ることもなかった。
 当たり前だが途中で寝て隣の人に持たれかかるー、みたいなこともなかった。

 どっちも趣味に対しては真摯である。


 帰り道もドギマギした雰囲気は全くと言っていいほどになく、お互い真面目に映画の感想を語り合っていた。
 ……今思えばよく恋人同士になれたな、と思う。
 そういう似た者同士で相性が良かったのかもしれないけど。

 けど。


( ・∀・)『――っと、どうせだし、送ろうか?』

(-、-トソン『お言葉に甘えさせて頂きます』


 家まで送る提案をした際に素直に受けてくれたのは、今日のことで、少しは仲良くなれているからかも知れない。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:06:21.49 ID:10fjQ1890

 俺は片手に傘を、トソンは片手に飲み切れなかったジュースを持ち、雨の街を行く。
 似たようなカップルは沢山いたが、肩が触れる度に遠慮したするような仕草をする女の子はトソンぐらいのものだった。

 ……いじらしい奴。


( -∀-)『んじゃー、今日はありがとな』

(゚、゚トソン『いえ、こちらこそ』


 送り届けた家の前でペコリと丁寧なお辞儀をする。

 上着は洗って返すと言って聞かなかったのでまだトソンが着たままだった。
 完全に男の子の格好になってしまっている後輩に俺は言った。


( -∀・)『もっと照れてくれりゃ可愛かったのに』


 何か言い返してくるのは今までの経験からも確実だった。
 問題はどんな風に来るか――じゃれ合いのように怒ってくれたら嬉しいな、なんて俺は思っていた。


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:09:31.39 ID:10fjQ1890

 だが、トソンは。
 怒るでも文句を言うでもなく、ただ顔を赤くし、俯くだけだった。

 そして――次の瞬間。


(/、//トソン「っ……!」


 俺が傘を差していない方の手を取ると――――そのまま、自分の胸に持ってきた。

 生乾きの感触と彼女の体温。
 見ている限りでは平らにしか見えないトソンの胸は、触ってみると微かな柔らかさを持ち、存在していた。

 何より――。


( -∀-)『…………』


 ドクン、ドクン、ドクン―――。
 彼女の心臓は苦しそうに、張り裂けそうなほどの鼓動を刻んでいたのだ。


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:12:15.10 ID:10fjQ1890

(/、//トソン『十分……照れていますよ』


 声を震わせ、目を潤ませ、一言を一言を区切り、何かをねだるように彼女は言う。


(/、//トソン『パッと見は分からないかもしれませんが……いつも、』

( -∀-)『…………』

(、 トソン『先輩と話している時も、先輩のことを見ている時も――――ううん、先輩のことを想うだけで。私は……っ』


 身体中が震えていた。
 必死で想いを伝えているのだと、理解できた。


 ここが室内でなくて本当に良かった。
 もしも部屋の中で、そんな表情でそんな台詞を言われてしまったら、確実に俺はトソンを押し倒していただろうから。
 それぐらい、その時のアイツは可愛かった。

 この瞬間を以て、俺の人生を最終回としても良いと――思ってしまうほどに。


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:15:19.49 ID:10fjQ1890

( -∀-)『……傘、わざとだろ?』

(/、//トソン …コクン


 今日は朝から雨だった。降り止んでいたことは一分もない。
 ならば“雨が降り出した”はずはないのだ。

 トソンは、俺と同じ傘に入りたいが為に、わざと忘れてきたのだ。

 きっとの件もチケットも同じ。
 本来はミセリと行くつもりだったと言っていたが、そもそもオタクでも何でもない彼女があんな映画を見たがるとも思えない。
 見るとすれば無難に恋愛モノだろう。


 そして――――。


(/、//トソン『――――失礼します』


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:18:17.73 ID:10fjQ1890

 言うが早いか、トソンは残っていたジュースを思い切り俺に向けてブチ撒けた。
 薄々予想はできていたが……迷いがなさ過ぎる。

 直後に襲ってきた不快感は後輩の嬉しそうな声音で掻き消された。


(/、//トソン『…………これで、私の家でシャワーを浴びて行けますねっ……』

( -∀-)『……そーだな。流石にこのまま帰ったら風邪ひくし』


 どちらもお互いの意思を分かっているように。
 分かり切っているように。
 
 どうしようもないなあ、なんて、顔を見合わせはにかみ笑いながら。


( -∀-)『離れたくないなら素直にそう言やいいのに』


 呆れて俺は言い、その言葉にフッと微笑んでトソンはこう返した。


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:21:16.79 ID:10fjQ1890

 切なげに―――刹那げに。
 優しく微笑みながら。




(-、-*トソン『だって、私は先輩と一緒にいたくて――――だからこれは“恋(故意)”なんです』






【―― 回想、終了 ――】





90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:24:15.60 ID:10fjQ1890

( -∀-)「――――ってな」


( _)「…………」

ζ(、 *ζ「…………」

从*//-ノリ「…………」




( ・∀・)「……アレ、どうした? 面白くなかったか?」

(; Д)「いや、なんつーか……」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:27:15.42 ID:10fjQ1890

(;*^Д^)「――――トソさん可愛過ぎるわぁぁぁぁああっ!!!」


(;*^Д^)「うっがあぁぁぁあっ! そして“恋”と“故意”が掛かってて無駄に上手ェし!!」

( -∀・)「ついでに“凍える”という意味の“凍”と“ねだる”という意味の“請い”にも掛かってる」

(;*^Д^)「なんだアンタ!なんなんだアンタ!! 即興にしても上手過ぎるだろ!! なんだアンタ、弱点なしか!?無敵かよ!!」

(;*^Д^)「青春過ぎるわ羨まし過ぎるわ甘酸っぱ過ぎるわ! 心臓がもうおかしくなりそうですッ!!」

从*//ーノリ「あー……。ちょっと、顔を洗いたいです……冷やしたい……」




川; -)「(…………ヤバい)」

川;゚ -゚)「(こんな凄いネタの後で私の番とか――無理だぁっ!!)」



 ――延長戦に突入?



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/06/30(木) 23:30:18.39 ID:10fjQ1890

Call back‐13 PART-A




(゚、゚トソン「…………恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり。人知れずこそ 思ひそめしか」


……すたーとっ



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:00:55.26 ID:/AAyJTgF0


【sailing days. ――featuring 『Bloody Serious Fairy』】



 遠い世界で、誰かが歌っていた。


 止めたはずの時計の音を聞きながら。酷く悲しい声音で、酷く切なげな声色で。
 ありふれた悲しい過去と危うい秘めた傷痕を抱いて――今日も、誰かは遠く歌っている。


 きっと咽が枯れるまでここで歌い続けるつもりなのだろう。

 誰も抱けぬほどに血に塗れた腕を広げ。
 憎く愛しい誰かを想いながら、ずっと。

 遠い昔の理想も遥か彼方の幻想も全てを置き去りにして、重く輝く鎖に繋がれながらも、彼女だけに歌を捧げる。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:03:16.69 ID:/AAyJTgF0

 地獄さながらの緋色と哀しみを表す深い藍。

 私はその姿に魅せられる。
 彼女を想って歌い続ける彼の横顔は言葉にできないほどに私の心を惹きつけた。

 思わず、涙が零れるほどに――彼の姿は美しかった。


 「あなたの為なら悪魔にさえなれる」と彼は歌う。
 「あなたの為なら神にさえ背く」と彼は歌う。


 多分、彼だって気がついていた。私が気づくより前に、私が分かるより深く。

 もう彼女は戻ってこないと。
 自分がいくら想っても、その恋は永遠に報われないのだと。



 なぜなら。

 どんなに綺麗に歌ったところで、彼女に本当の声は聞こえやしないから――――。



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:06:15.10 ID:/AAyJTgF0




 そして、私はその彼に、生まれて初めての恋をした。







99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:09:18.31 ID:/AAyJTgF0


【―― 1 ――】



 街を歩いていたら、いきなり美少女に話しかけられた。

 ……ライトノベルの導入部みたいな展開だが、その美少女が“見知らぬ”でなかったことがギリギリで幸いだ。
 少し前にすれ違った、モラ先輩の関係者。トソさんに聞いた話では先輩の後輩。


( ^Д^)「……ああ、」

リパ -゚ノゝ「…………お初にお目にかかります。『絣 雪』と言います、」


 丁寧なお辞儀をし、蚊の鳴くような小さな声で彼女は朴訥に名を名乗る。
 酷く可愛らしい声音と墨汁をどろどろになるまで煮詰めたような色合いの瞳が印象的な中学生は「絣 雪」というらしかった。

 その名字は聞き覚えがあったものの、思い出さない方が良い気がしたのであえて検索をかけることはしない。
 もうこれ以上『非日常(シリアス)』な要素は増やしたくない。
 今だって同級生の可愛い女の子が血塗れなシーン(しかも滅茶苦茶似合っている)が脳裏に焼きついていてアレなのに。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:12:46.62 ID:/AAyJTgF0

 “モラ先輩の関係者”という時点でマトモではないことは覚悟していたが、絣は分かり易く逸脱していた。

 分かり易く――というか見るからに。
 ……初夏なのに冬用の制服を着ていることは突っ込まないとしても、左手に打刀を携えている時点でもう『普通』はありえない。
 普通にありえない。

 まさかそれ、真剣じゃないだろうな。


リパ -゚ノゝ「…………アドバイス部のプギャー様とお見受けしますが、」


 「真剣」「絣」の検索結果、何か絶対に思い出さない方が良い事柄を無性に思い出しそうになっている俺は生返事をする。
 確実に目の前の少女は『非日常』側の人間だ。


( ^Д^)「まあ、そうだよ」


 “そうだ”で切るか、年下相手だし“そうだよ”まで言うか――みたいな物凄くどうでも良いことを考え続けることで検索結果をデリート。
 履歴も消去。 
 ……よし、もう大丈夫だろう。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:15:16.22 ID:/AAyJTgF0

 さて、ところで。


( ^Д^)「モラ先輩のマンションの前で一度すれ違っただけなのによく覚えてたな」

リパ -゚ノゝ「…………いえ、以前モララーさんから頂いた手紙にあなたについての記述と、あなたの写真が入っていたので、」

(;^Д^)「……ああ、そう」


 昨今は情報管理も厳しいのに、俺の個人情報はダダ漏れだった。


リパ -゚ノゝ「…………妹さんとは仲がよろしいんですね、」

(; Д)「……………………そうだな」


 添い寝シーンか、両頬にキスされてるシーンか。
 その手紙には果たしてどちらの写真が同封されていたのだろう。

 いや、どっちでも大して変わらないような気がするが。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:18:16.00 ID:/AAyJTgF0

 超然とした感じで、絣は続ける。


リパ -゚ノゝ「…………冰刃さんとは試合をしたことがあるので、手紙の以前にお名前だけは聞き及んでいたのですが、」

( ^Д^)「あ、そうなのか。剣道か、弓道か……」

リパ -゚ノゝ「…………どちらもです。お互いに会場で吃驚しました、」


 そりゃ吃驚するだろう。
 普通はどっちかしかやらないし、どっちもやっていたとしてもどちらもの大会に出ることなんてまずしない。


( ^Д^)「しかし、試合しただけで家族のこと話すほど仲良くなれるもんなのか?」

リパ -゚ノゝ「…………無論です。刃を交えれば相手のことはほぼ分かります、」


 古風っつーか、どっかのデュエリストみたいなことを言う奴だ。
 デュエルした後は皆友達なのと同じノリなのだろうか。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:21:18.92 ID:/AAyJTgF0

 へえ、と適当に相槌を打って、俺は訊いた。


( ^Д^)「ちなみにどっちが勝ったんだ?」

リパ -゚ノゝ「…………剣道でなら、私は全ての試合で一応勝てています、」

( ^Д^)「強いんだな」


 冰刃は逆上がりができるようになるより前に竹刀を振り始めてたような奴なのに。


リパ -゚ノゝ「…………死合ではもしかすると私が負けるかもしれません、」


 続けて言われた一言は聞かなかったことにした。

 さっきの「しあい」と今の「しあい」、イントネーションは同じなのに籠もっている意味合いがまるで違う気がした。
 後者はなんか命賭かってる感じだ。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:24:29.17 ID:/AAyJTgF0

 ……まあ。
 それは冰刃が刀を手の延長の如く扱うのに対し、絣が刀ありきの人間という違いなのかもしれない。

 アイツはたまに名の通り、氷刃のような雰囲気を出すことがあるが――目の前の少女は何処となく“鞘”のようだ。
 刀があって初めて意味を為すような人間。
 “手の延長のように刀を振るう”どころか“刀が自らの核”のような。


( ^Д^)「(……つっても、誰でも少なからずそうなのかな)」


 自分の中心に自分以外の要素が入っているのはよくあることだ。
 それは人によって絆だったり過去だったりする。あるいは矜持や美学か……そんなようなもの。

 俺の“それ”は分からないが、少なくともモラ先輩やトソさんの核は『恋心』なんだろうな―――と、思うが早いか。


リパ -゚ノゝ「…………本題ですが、モララーさんとトソンさんのことで話があります、」


 絣はそう、切り出してきた。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:27:14.62 ID:/AAyJTgF0


【―― 2 ――】


 とりあえず腰を落ち着けようと、誘われるままに歩いて近くの喫茶店に入る。

 でも“あれ(手にある刀)”はヤベェだろと思っていたら、案の定「何名様ですか?」と訊ねてきた店員の笑みは明らかに引き攣っていた。
 が、絣がレジの向こうにいた茶髪の女店員に手を振るとそれだけで問題は解決したらしく、そこからは問題なく席に案内された。

 彼女の馴染みの店なのかもしれない。


リパ -゚ノゝ「…………淳先輩に許嫁がいらっしゃるのはご存知でしょうか、」

( ^Д^)「“淳先輩”っつーと、」

リパ -゚ノゝ「失礼しました、クール先輩の方です、」


 カフェオレを二つ頼み、それを待ちながらの会話。
 入り口からちょうど陰になるようなこの席はもしかすると指定席なのかも、などと思案する。
 非常口も近いしありえそうな話だ。

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:30:22.06 ID:/AAyJTgF0

 そんなことを考える俺を知ってか知らずか、絣は何もまともに捉えていないかのような瞳で俺を見、更に言う。


リパ -゚ノゝ「…………彼は事情で海外に行っていたのですが、先日帰国しました、」

( ^Д^)「ああ、なんかクー先輩が言ってたよ。デートの誘いかなんかの話」

リパ -゚ノゝ「…………はい。それで今日明日にでもあなたの前に現れると思います、」

( ^Д^)「俺の前に?」


 意味が分からないが、おそらくその意味を分からせる為に絣はこうして俺に話しかけてきたのだろう。
 どんな人なんだ?と興味本意で訊くと、少しの沈黙を挟んでこう答えられた。


リパ -゚ノゝ「…………良い人ですよ。モララーさんやはにゃさんと同じくらいに際物で、切れ者です、」


 一瞬で会いたくなくなったのは言うまでもない。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:33:33.70 ID:/AAyJTgF0

(;^Д^)「あー……んで、その人は何の用で俺に会いに来るんだ?」

リパ -゚ノゝ「――言えません」


 当然の問いを、強い口調で制される。

 今までにはない大きな声。
 とは言ってもすぐにそれは元のボリュームに戻り、「申し訳ありません」と彼女は頭を下げた。


リパ -゚ノゝ「…………それは私から言うべきことではありません、ご容赦を、」

(;^Д^)「じゃあお前、何しに来たんだ?」


 先ほどより更に当然な疑問に、少女は簡潔に明瞭に答えた。


リパ -゚ノゝ「…………あなたを脅しに来ました、」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:36:47.29 ID:/AAyJTgF0

(;^Д^)「え? “脅し”って――」

リパ -゚ノゝ「――あなたはあの人に何かを聞かされるでしょう。不都合かもしれない、何かの事実を、」


 俺の言葉を遮り、そのまま絣は続けていく。


リパ -゚ノゝ「…………それを聞き、あなたが何を思おうと、それはあなたの自由だと思います、」

( ^Д^)「…………」

リパ -゚ノゝ「…………その後の行動も、本来あなたの自由だと思います、」


 ここまでで、俺はもう既になんとなく分かっていた。
 近いうちに聞かされるであろう内容のことを。
 勘付かせたのは彼女の口調かクー先輩の雰囲気か、それとも神の思し召しか――それは分からない。

 分からない、けれど。
 聞かされる内容のことは、分かった。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:39:25.37 ID:/AAyJTgF0

 そう、それはきっと。
 いつだったかモラ先輩が語った、トソさんが見せた。


 “誰にでも一つはある已むに已まれぬ事情”――――の話なのだろう。



リパ -゚ノゝ「…………私は“人斬り”の“人殺し”です、当たり前のように人を殺す人間です、」


 いい加減俺も思い出していた。
 思い出してしまっていた。

 数年前のとある抗争で相手側の組織の構成員数百人を皆殺しにした、一人の少女の名を。


リパ -゚ノゝ「…………私は『人斬り』の家系の一人娘です、」


 それが「絣 雪」。
 今、俺の目の前にいる少女。

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:42:19.25 ID:/AAyJTgF0

リハ -ノゝ「…………私は感情で人を殺すのは良くないと教わりました。それは『人間』としてできていない者がやる行為だと教えられました、」


 その気になればこの喫茶店にいる数十人などものの数秒で肉塊に変えられる少女は続ける。
 けれど決してその気にはならない少女は「ですが」と続ける。

 少女は、膝の上に置いたままだった日本刀を持ち上げ、鍔を押し僅かだけ刀身を見せた。
 誰かの命を吸ったのかもしれない刃が俺を写す。
 不思議と恐怖はなかった。それは“現実味が無さ過ぎて”とかそういう甘い理由ではなかった。

 だって、俺と出会う前からこの少女はそんな刀よりよほど鬼気と死臭を――それこそ当たり前のように纏わりつかせていたのだから。


( ^Д^)「(“見るからに”どころか、コイツはそもそも“感じる限り”で既に『異常』だった)」


 モラ先輩が“周囲を焼き尽くすような地獄の如く紅い殺意”とすれば、彼女の殺意は“本能的に逃走など無駄だと理解させる泥沼のような殺意”。

 泥沼――もしくは迷宮だろうか。
 『殺気』を殺気だと気がつけないほど当然に、彼女はそれを纏っていた。

 だからこそ俺は大人しくついて来た、背中を向ければ斬り殺されることは目に見えずとも感じられたから。

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/01(金) 00:45:23.03 ID:/AAyJTgF0

 一目見た瞬間から俺を射程内に捉えていた人斬りは。
 暴力的どころか、ありえないほど自然に自らの危険性を理解させてくる人殺しは、この場面でも変わらぬ調子だった。
 超然であり朴訥な口調と雰囲気で。


 唯一それまでと違ったのはその言葉を言い放った時の彼女の口調の中に、初めて人間らしい感情が含まれていたことだ。

 「私の大事なものを傷つけたら許さない」と。
 そんな風な意図が絡まった、親近感さえ覚える激情が。

 そして、彼女は言った。



リパ -゚ノゝ「恥ずかしい話ですが、私は全く“なっていない”――――聖人君子など程遠い愚か者だということを、ここで断っておきます」



 それは彼女一流の、紛れもない脅し文句だった。



Call back‐13 PART-A END




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